本レポートは、2024年2月13日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #402」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. Solanaブロックチェーン上のトークン拡張が開発者にチャンスをもたらす
By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet
Solana（ソラナ）ブロックチェーンへの最近のトークン拡張[i] アップグレードにより、開発者はSolanaベースのデジタル資産にカスタム機能を追加できるようになりました。このアップグレードにより、KYC/AML（顧客情報/マネーロンダリング防止）のコンプライアンス強化、新たな送金手数料モデル、およびゼロ知識証明を使用して送金される資産の価値を隠す秘密取引などをより深く把握できるようになります。これらはすべて、企業のユースケースが金融規制に準拠するために重要です。
Solanaのトークン拡張は、イーサリアム上のUniswapのv4プロトコルにある「フック」のようなもので、同じく拡張性を提供しますが、1つ重要な違いがあります[ii]。Uniswapのフックは、Uniswapプロトコル上での資産の取引方法のみをカスタマイズできますが、Solanaのトークン拡張機能は、どのSolanaベースのトークンでも活用でき、ブロックチェーン上の１つのプロトコルだけでなく、すべてのプロトコルに適用されます。Uniswapのケースのようにアプリケーション・プロトコル・レベルではなく、トークン・レベルで拡張機能を導入することにより、開発者はより少ない労力で、より幅広いユースケースをサポートできるはずです。
大規模機関の意見を取り入れて設計されたこのアップグレードは、企業がSolanaエコシステム内でオンチェーンに移行するのに役立つはずです。すでにPaxos（パクソス）のような企業が拡張機能を活用し、Solana上でステーブルコインを発行しています。
2. 大学構内の歩道ロボットは世界に対抗する準備ができているか？
By Daniel Maguire & Tasha Keeney | @ARKInvest
Autonomous Technology & Robotics Team
先週、Starship Technologies社（スターシップ・テクノロジーズ：SpaceX社のStarshipと混同しないでください）は、歩道ロボットの世界展開の資金として9千万米ドルを確保しました。現在までに、同社のロボットは主に50の大学キャンパスで600万件以上の配達を行なっています[iii] 。
これまでもStarship社は、ロボットが自動配達を行なう周辺の環境をマッピングしてきました[iv] 。そして、大学キャンパスにおけるこの「実行可能な最低限の製品」によって、Starship社とAlibaba社の両社は、以下に示すように自律型配送ソリューションの規模を拡大することができるようになったのです[V] 。
*数字は入手可能なデータに基づく推定値。ロボット配送会社は、ロボット1台あたりの荷物容量が異なるため、1回の配送でより多くの荷物を配送できる会社もある。出所：ARK Investment Management LLC、2024年。このARKの分析は、2024年2月9日時点の外部情報源からの様々な基礎データに基づいています。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。過去の実績は将来の結果を示すものではありません。
とはいえ、このようなソリューションが大学キャンパスの歩道を越えて拡大する可能性は低いかもしれません。私たちの以前のリサーチでは、歩道ではなく道路の交通にロボットを組み込んだ方が、ロボット配送の規模を拡大する上でより現実的である可能性が示唆されています。
ARK Investの最新のリサーチ「Big Ideas 2024：常識を打ち破り、未来を定義する」で概説されているように、どの自律型ロジスティクス企業が商業的成功を収めるかは、独自のデータによって決まる可能性があります。したがって、私たちは、大学キャンパスで収集されたデータが、キャンパス外でのロボットによる配送のスケーリングに役立つかどうか、疑問に思っているのです。
3. アメリカ上院が大手製薬会社にアメリカの薬価がなぜこれほど高いのか理由を問う
Ali Urman | @aurmanARK
Analyst
先週、Bristol Myers Squibb（ブリストル・マイヤーズ スクイブ：BMY）、Merck（メルク：MRK）、Johnson and Johnson（ジョンソン・エンド・ジョンソン：JNJ）のCEOが、米国上院の厚生労働委員会で証言[vi]しました。議論の焦点は、Bristol Myers Squibb社のEliquis（エリキュース）、Merck社のKeytruda（キイトルーダ）、Johnson and Johnson社のStelara（ステララ）など多くの医薬品について、米国がなぜ世界で最も高い価格を支払っているのかという点に置かれました。
Eliquis（エリキュース）は血液をサラサラにする薬で、その定価は米国では7,100米ドル、カナダでは900米ドル、欧州では770〜650米ドル、日本では940米ドルと7倍以上です[vii]。2012年から2022年の間、米国におけるEliquis（エリキュース）の売上高は、346億米ドルで、世界のその他の地域での225億米ドルを54％上回りました[viii]。ブルームバーグのアナリスト、ロバート・ラングレス氏によれば、米国の医薬品の価格が高いのは、規制がなく、迅速かつ容易に入手できるからです[ix] 。また、米国の医療制度では、他の国の政府管理下の医療制度と比較して、多くの中間搾取業者が利益を得ていることも付け加えておきたいところです。
上院公聴会で証言したCEOのうち、他国の低価格に合わせることに同意した者はいませんでしたが、Merck社のロバート・デイビスCEOとBristol Myers Squibb社のクリス・ボアナーCEOは、自社のベストセラー医薬品が独占権を失い、ジェネリック医薬品の競争にさらされることになれば、より安価な選択肢を期待し、歓迎する[x]と述べました。
[i] Solana. 2024. “Permissioned tokens on a permissionless network.”
[ii] Adams, H.2023. “Our Vision for Uniswap v4.”
[iii] Kunde, I. 2024. “Starship Technologies raises $90M as its sidewalk robots pass 6M deliveries.” Tech Crunch. and Starship Technologies. 2024. “Starship Technologies offering autonomous robot delivery on 50 US college campuses as students go back to school.”
[iv] Lääne, J. 2020. “How Starship Delivery Robots know where they are going.” Medium.
[v] Starship Technologies. ND. “Introducing the world’s leading robot delivery service for University college campuses.”
[vi] U.S. Senate Committee On Health, Education, Labor, and Pensions. 2024. “Why Does the United States Pay, by Far, the Highest Prices in the World for Prescription Drugs?”
[vii] Luhby, T. 2024. CNN. “Medicare now negotiating price of drug that costs $7,100 in US vs. $900 in Canada.”
[viii] U.S. Senate Committee On Health, Education, Labor, and Pensions. 2024. “Why Does the United States Pay, by Far, the Highest Prices in the World for Prescription Drugs?”
[ix] Langreth, R. 2023. “Why Prescription Drug Prices in the US Are So High.” The Washington Post.
[x] Constantino, A.K. 2024. “J&J, Merck and Bristol Myers CEOs defend high drug prices in Senate hearing, as Biden tries to cut costs.” CNBC.
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