By ARK Invest

本レポートは、2024318ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #407」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. Dencunのアップグレードはイーサリアムのネットワーク拡張に向けた重要なステップ

By Lorenzo Valente | @ARKInvest
Research Associate

 

先週、イーサリアムのネットワーク[i] で、Dencun(デンクン)またはEIP 4844と呼ばれる重要な技術的アップグレードが実施されました。これにより、レイヤー2ソリューションの取引手数料が削減されるはずです [ii] 実施から3日以内に、Optimism(オプティミズム)やZkSync(ジーケーシンク)を含むすべてのレイヤー2ソリューションが恩恵を受けました。以下に示すように、イーサリアムユーザーが選択したレイヤー2ブロックチェーンソリューションでの取引に支払う手数料は、アップグレード前に比べて5分の1から10分の1へと低くなっています。

ARK-Invest_031824_SNL_Graph-1出所:Dune Analytics 本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券や暗号資産の購入、売却、保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。

 

2人の先駆的な研究者にちなんでプロト・ダンクシャーディングと呼ばれることもあるEIP-4844は、イーサリアム財団の複数年にわたる4段階の野心的なロードマップの最初のマイルストーンに到達しました。EIP-4844の目標は、スループットを100トランザクション/秒から100,000500,000トランザクション/秒(TPS)へと1,000倍以上に増加させることによって、技術の普及に向けたスケーリングを行なうことです。EIP-4844は、プロポーザとビルダーの分離やデータ可用性サンプリングといった後続のアップグレードへの道を切り開き、最終的には最終フェーズであるダンクシャーディングで最高潮に達します。

イーサリアム・ネットワークは、世界中の開発者やユーザーにとって最高のスマート・コントラクト・プラットフォームであり続けてきましたが、現在ではインプットが2000TPSを超えるSolana(ソラナ)のような他のスマート・コントラクト・プラットフォームとの競争激化に直面しています。年内にイーサリアムETFがローンチされる可能性もあり、イーサリアムへの注目はさらに高まることが予想され、イーサリアムのプラットフォームにより多くの個人ユーザーが集まる可能性があります。そして、このような注目の高まりは、Solanaのような他の高スループット・プラットフォームとの比較の度合いも高める可能性があります。「Dencun」のアップグレードは、イーサリアムのスケールを拡大し、より多くのユーザーを引き付け、市場シェアを維持するための重要なステップだと言えます。

 

2. Starshipは火星に一歩近づいたか?

By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics

 

超高層ビルほどの大きさの物体が宇宙に打ち上げられることはめったにありませんが、SpaceX社が先週Starship(スターシップ)の3回目のテスト飛行を完了させたことで、それが起こりました。その宇宙船とブースターは穏やかに着水することには失敗したものの、テスト飛行は同社のマイルストーンの多くを達成し、Starshipが完全に機能するのは「もしかしたら」の話から「いつ」の話へと移行しました。重要なことは、達成された軌道速度に基づいて、このテスト飛行が、SpaceX社が使用済みのStarshipを利用して、より大型のStarlink(スターリンク)衛星を配備できる可能性があることを示唆したことです。

打ち上げの翌日、イーロン・マスク氏は、Starshipの使い捨てモードでの最大積載量は約200トンであるとツイートしました[iii] 積載量アナリストのジャック・クーア氏によると、Starshipの建造コストは約1億米ドル[iv]です。どちらの統計も正しいとすれば、宇宙に到達するためのコストは1kgあたり500米ドルで、つまりSpaceX社の再利用可能なFalcon(ファルコン)9のおよそ半分ということになります[v]。これまでのところ、Falcon 9の複製に近づいている企業は他にありません。Starshipは、SpaceX社を競合他社からさらに突き放すはずです。

 

3. Cognition LabsDevin AIエージェント、複雑な現実世界のエンジニアリングタスクでLLMを凌駕

Jozef Soja | @JozefARK
Research Associate

 

先週、Cognition Labs(コグニション・ラボ)社は、独自のコードエディタ、ブラウザ、プランニングツールを使って自律的にソフトウェアを作成できるAIエージェント、「Devin(デヴィン)」をリリースしました。ほとんどの大規模言語モデル(LLM)や生成AIコーディング・アシスタントは、簡単なアプリケーションや短いコードの断片を作成することはできますが、実稼働のユースケースに実装するための複雑なソフトウェア製品をコーディングしてデバッグまでできることはほとんどありません。その点、Devinはユニークな能力を持っているように見えます。

基礎モデルに対するDevinの改善度を定量化するために、SWE-bench(「Real World Software Engineering」ベンチマーク)における相対的なパフォーマンスを比較することができます。SWE-benchでは、AIエージェントに公開されている12Pythonリポジトリで現実世界のバグやタスクを解決するよう求めます。その結果、Devinのスコアは13.86%を記録したのに対し、Claude 2のスコアは4.8%GPT-4のスコアは1.74%でした。また、Devinとは異なり、他のLLMは、どのリポジトリファイルにエラーが含まれているかを特定するために人間の介入が必要でした。 

生成AIの自律的なコーディング能力が向上するにつれ、私たちの日常生活を向上させるために利用できるソフトウェアの量は急速に拡大していくでしょう。

ARK-Invest_031824_SNL_Graph-2出所:Cognition Labs 2024[vi] 本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券や暗号資産の購入、売却、保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。

 

4. CAR-T細胞療法市場は自己免疫疾患への拡大の準備が整っている模様

Ali Urman | @aurmanARK
Analyst

 

2021年、急性リンパ芽球性白血病が再発した患者のCD19を標的としてCAR-T細胞療法を使用した場合、62%から95%の完全寛解率が得られたことを科学者たちが証明し、この治療法は高い評価を得ました[vii]。昨年、ARKは、免疫系に影響を及ぼすがんの一種であるT細胞性急性リンパ芽球性白血病と診断された英国の13歳の少女アリッサの話を取り上げましたCAR-T細胞療法により、アリッサのがんは一掃されました。1ヵ月後には寛解し、6ヵ月後には癌が消滅したのです。

今、新たな研究により、CAR-T細胞療法ががん以外にも拡大する可能性が強調されています。2月、フリードリッヒ・アレクサンダー大学エアランゲン・ニュルンベルク校の科学者たちが、自己免疫疾患におけるCAR-T細胞療法の可能性に関する研究を発表しました。これらの疾患は現在5,000万人のアメリカ人を苦しめており、また、そのうちの75%は女性であり、まだ満たされていない大きなニーズがあることが示されています。 

しかしながら、CAR-T細胞療法にはリスクがないわけではありません。2017年以降、FDA6つの 自己[viii]-T細胞療法を承認し、2万人以上を治療しました[ix]。そして12月、FDAは自己CAR-T細胞免疫療法を受けた患者の二次悪性腫瘍に関する調査を発表しました。しかし、すぐに、がん治療におけるベネフィットはリスクを上回ると判断されました。とはいえ、自己免疫疾患のリスクとベネフィットの分析は異なる可能性があります。 

私たちのリサーチは、自己免疫疾患におけるCAR-T細胞療法の臨床試験が急増することを示唆しています。そうなれば、二次的な悪性腫瘍を引き起こすと考えられているレンチウイルスベクターに関連する潜在的なリスクを軽減する新しい送達形態が見られるかもしれません。

 

 

  

[i]  イーサリアムは、イーサリアムプロトコルと呼ばれる一連のルールに従う世界中のコンピュータのネットワークです。イーサリアムのネットワークは、コミュニティ、アプリケーション、組織、デジタル資産の基盤として機能し、誰でも構築して使用することができます。

[ii]  イーサリアムのレイヤー2は、イーサリアム・ネットワークのトランザクション処理能力を強化し、トランザクション手数料を削減し、スループットを向上させるために開発されたフレームワークとプロトコルであり、すべてネットワークのコアセキュリティ原則を維持します。

[iii] Musk, E. 2024. “Max payload of Starship V1 in expendable mode…” X.

[iv] Kuhr, J. 2024. “Payload Research: Detailing Artemis Vehicle R&D Costs.” Payload.

[v] Based on ARK’s estimate of the cost of a reusable Falcon 9.

[vi] Wu, S. 2024. “Introducing Devine, the first AI software engineer.” Cognition.

[vii] Frey, N. V. 2021. “Relapsed ALL: CAR T vs transplant vs novel therapies.” Hematology Am Soc Hematol Educ Program.

[viii] Moffitt Cancer Center. 2022. “Autologous vs. Allogeneic CAR T.

[ix] Boettner, B. 2023. “CAR-T cell cancer immunotherapy gets personal.” Wyss Institute.

 

 

 

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