By ARK Invest
本レポートは、2024年5月13日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #414」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. AIの推論スキルはこれまで想定されていた以上に高性能なのか?
By Brett Winton | @wintonARK
Chief Futurist
何年もの間、懐疑論者たちはAIモデルを、真の理解や推論能力を持たずにトレーニングデータを再生産したり補間するものに過ぎない「確率的なオウム」[1]と見なしてきました。しかし、クリスチャン・ルイス氏による画期的な研究[2]が、Anthropic(アンソロピック)社のクロード・モデルは「チューリング完全」であり、現存するあらゆるコンピュータ・プログラムを組み合わせて実行する原始的な論理関数を処理できることを実証して、この見方を打ち砕きました。言い換えれば、十分な時間とメモリがあれば、チューリング・マシンは明確なタスクをなんであれ完遂することができるということです。
最近は、AIモデルが「チューリング完全」であるかどうかを中心に議論がされています。例えばChatGPTは、複雑な論理的クエリに応答する際に外部コーディングと計算に依存していますが、ルイス氏の研究は、クロード・オーパスLLM(大規模言語モデル)が適切に指示されれば自ずとチューリング完全となることを示しており、AIモデルには本質的に限界があるという考えに真っ向から挑戦しています。
コンピューター科学者のヤン・ルカン氏は、トランスフォーマーベースの言語モデルの自己回帰的な性質が、学習データの境界内での補間に制限される決定的な弱点であると主張しています。ルイス氏のリサーチが示すように、AIモデルが論理関数を処理できるのであれば、学習データの境界を越えて性能を拡張するために、エラーを十分に修正することもできるはずです。
重要なのは、ルイス氏の研究がAIモデルにおけるいわゆる「エラー」についても特徴づけていることです。彼の見解では、クロードの見かけ上の論理エラーの多くは、本物の論理的エラーではありません。むしろ、これらは以前の出力を誤ってコピーしたことによって引き起こされる実装エラーであり、学習プロトコルをわずかに調整することで、LLMが複雑な論理連鎖に従う能力を向上させることができることを示唆しています。
その意味するところは大きいです。AIモデルは、ソフトウェアのように機能するプロンプトによって導かれる新しいクラスの適応型コンピューターになる可能性があります。クロード・オーパスやGPT-4モデルの可能性の探求は、まだ始まったばかりです。しかし、仮にAIのトレーニングの進歩が今日止まってしまったとしても、こうしたモデルは複雑な論理の連鎖を示すように設計され、私たちに代わって強力なエージェントとして機能することができるでしょう。
ルイス氏の研究によれば、人工知能は性能の上限に近づいているどころか、爆発的な能力を発揮する初期段階にあるそうです。
2. Teslaがスーパーチャージャー戦略を進化させるなか、Waymoがマイルストーンを達成
By Tasha Keeney, CFA & Daniel Maguire, ACA | @ARKInvest
Autonomous Technology & Robotics Team
先週、イーロン・マスク氏は、Tesla社が最近のレイオフや成長鈍化計画にもかかわらず、今年スーパーチャージャー・ネットワークに約5億米ドルを投資すると発表しました [3]。一見矛盾しているように見えますが、こうした動きは、同社がロボタクシーに最適化された充電インフラに自社資本を投入する一方で、BP PLCのような企業に自家用車用のスーパーチャージャーの設置を移管しつつあることを示唆しています [4]。
FordやGeneral Motorsなどの自動車メーカーはこれについて支持を表明していますが[5]、ARKのリサーチによると、Tesla社のスーパーチャージャー・ネットワークが今後5年間、同社の収益と収益成長に影響を与えることはほとんどないでしょう。仮に、スーパーチャージャー・ネットワークが最近のペースで成長し、その利用率が平均約11%からガソリンスタンドでの一般的な約34%に上昇した場合も[6] 、Tesla社への財務的影響は、同社のロボタクシー事業の規模拡大に比べれば微々たるものになるでしょう。当社の試算によると、2027年には自動運転タクシーネットワークがTesla社の企業価値の3分の2を占めるようになります [7]。
興味深いことに、今週Waymo社は、同社のネットワークにおける1週間あたりの有料旅客輸送回数が、12月時点の約2万件から約5万件へと、過去4ヵ月でおよそ150%増加したと発表しました [8]。当社の推計によると、下図で示すようにTesla社はWaymo社の110倍の割合で実際の自動運転データを収集しています。
出所: 2024年5月10日時点のTesla、Baidu、Waymoのデータに基づく。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。
私たちは、ロボタクシーがTesla社のビジネスモデルを変革し、単発的な車両販売から継続的な経常収益源へと変革し、すべての車両を AI を活用したキャッシュフロー生成マシンに変えることになると考えています。さらなる分析については、ARKのテスラ評価モデルの更新版リリースにご期待ください。
3. ビットコインの供給量の伸びが年率1%未満に低下
By David Puell | @dpuellARK
Research Associate
4月19日、ビットコインコミュニティは半減期を迎えました[9]。 4月の初め、ネットワークは1日あたり平均900ビットコインを生産し、年率1.8%で供給量を増加させました。半減期以降、ネットワークは1日あたり平均約450ビットコインしか生産せず、年率約0.9%で供給が増加しています。下図で示すように、4月末までに、マイナーは今後生産されるビットコイン全体の93.7%をミント(鋳造)しました。
出典: ARK Investment Management LLC、2024年。Glassnodeのチャートデータ。2024年5月3日時点の情報。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券や暗号通貨の購入、売却、保有を推奨するものではありません。予測には本質的に限界があり、依拠することはできません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。
ビットコインはその創設以来、4回半減しており、そのたびに価格上昇のモメンタムの前兆となってきました。歴史的には、下図の黒い四角で示されているように、半減後の最初の数ヵ月におけるビットコインの価格パフォーマンスは、マイナスから鈍化していましたが、紫色の四角で示されているように、半減から1年後にはビットコインの価格は、3倍から70倍以上に上昇しています[10] 。
出典: ARK Investment Management LLC、2024年。Glassnodeのチャートデータ。2024年5月3日時点の情報。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券や暗号通貨の購入、売却、保有を推奨するものではありません。予測には本質的に限界があり、依拠することはできません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。
この半減の1年後にビットコインの価格が3倍に上昇するというのは楽観的かもしれませんが、上の図は、ビットコインの供給量の増加が限られているため、時間の経過とともにその希少価値が高まるはずであることを裏付けるものです。4月中のビットコインの動きの詳細については、ARKの次回のビットコイン・マンスリーをご覧ください。
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