本レポートは、2024年5月20日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #415」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. GoogleのAlphaFold3が医薬品設計に革命をもたらす可能性
By Nemo Marjanovic, PhD | @ARKInvest
Research Analyst
先週、Google傘下のDeepMind（ディープマインド）社は、タンパク質とDNA、RNAなど、他の分子間の相互作用を予測できるAIモデルである「AlphaFold（アルファフォールド）3」を発表しました。同社のテクノロジーは、科学者たちが生体分子の構造を決定することを可能にし、医薬品設計や疾患の標的化能力に革命をもたらすことが出来るはずです。
AlphaFold3の最新の拡散ベースのアーキテクチャは、タンパク質、核酸、低分子、イオン、修飾残基を含む構造だけでなく、タンパク質とリガンド、タンパク質と核酸、抗体と抗原の相互作用も予測できます。こうした能力は、ディープラーニング（深層学習）が生体分子空間全体にわたって高精度のモデルを作成することを示唆しているのです。
2. TeslaのFSD（完全自動運転）バージョン4により、ロボタクシーの性能が5～10倍向上する可能性
By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Associate
先週、イーロン・マスク氏は、TeslaがAI対応のエンド・ツー・エンドの完全自動運転（FSD）ソフトウェアをv12.3からv12.4にアップグレードし、限定的な外部ベータリリースを行なうと発表しました。このアップデートは今週予定されており、能力と安全性の重要な指標である介入ごとの走行距離が5～10倍向上する見込みです。さらにマスク氏は、次回6月にリリースされるv12.5では、TeslaのワンスタックAI機能が一般道から高速道路まで拡張されることを想定しています[1] 。同社はもはやAIのトレーニングコンピューティングに制約されることなく、これまでの累計約12億マイルに及ぶFSDを活用することで、主要ソフトウェアのアップデートを迅速化しています[2] 。
私たちのリサーチによると、下図で示すように、FSDモードで一般道を走行するTeslaは、マニュアルモードのTeslaよりも約5倍安全であり、全国平均よりも約16倍安全です。
出所： ARK Investment Management LLC、2024年。このARKの分析は、CDC 2024、Kusano 2023、NHTSA 2023、Tesla 2023、2024、およびZhang 2023などの外部ソースから得た様々な基礎データに基づいています[3] 。リクエストに応じてデータを提供することが可能です。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券または暗号通貨の購入、売却、保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。
ソフトウェアのアップデートが加速するにつれて、Tesla社は統計的に有意な安全指標を実証し、ロボタクシー・ネットワークに対する規制当局の承認を得ることができるはずです。私たちは、完全自動化に向けたFSDの進捗状況を見守ることを楽しみにしています。詳細については、ARKのリサーチセンターがオープンソースのTeslaモデルを更新して公開する予定ですので、ご期待ください。
3. OpenAIのGPT-4oがインタラクティブ・コンピューティングの水準を引き上げる
By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet
OpenAI社はSpring Updateの中で、テキスト、音声、オーディオ、ビデオにまたがるネイティブのマルチモーダルモデルであるGPT-4oを発表し、ほとんどのベンチマークで性能が向上していることを示しました。新しいモデルは、様々な状況にトーンを適応させ、リアルタイム翻訳のようなユースケースを容易にすることができる、強化されたChatGPT音声エクスペリエンスを提供します。よりリアルなChatGPT音声アシスタントにより、ユーザーはモデルに割り込んで動的に指示することができ、双方向性についての新たな基準を打ち立てます。ライブデモはこちらから[4]ご覧ください。またOpenAI社は、Mac用のデスクトップアプリも発表しました。これにより、ユーザーが画面を共有できるようになり、モデルが表示されているコンテンツに反応し、そのマルチモーダルな機能を活用して状況に応じたサポートを提供できるようになりました。
このイベントでは、ChatGPTの無料ユーザーが、新しいGPT-4oモデルだけでなく、これまでプレミアム加入者のみが利用可能だった高度なデータ分析、ブラウジング、GPTストアにもアクセスできるようになったことが強調されました。またOpenAIは、アプリケーション・プログラミング・インターフェース（API）の価格を大幅に引き下げ、GPT-4oをGPT-4 Turboより2倍高速化して、50％安くし、下図で示すように、コストを100万トークンあたり75米ドルから7.5米ドルに90％削減しました。
出所: ARK Investment Management LLC、2024年。2024年5月18日時点のOpenAIのデータに基づく。情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券や暗号通貨の購入、売却、保有を推奨するものではありません。過去の実績は将来の結果を示すものではありません。
GPT-4oの無料ユーザーへの幅広い展開とAPI価格の引き下げは、OpenAI社がGPT-4oの推論に向けた最適化において大きな進歩を遂げたこと、またMicrosoft社が追加ユーザーをサポートするためにGPUコンピューティングの処理能力を増強したことを示唆しています。もしそうであれば、ChatGPTの月間アクティブユーザー（MAU）は、過去1年間に生み出された1～2億人をはるかに超える規模になる可能性があります。
4. Googleはエージェント型AIに軸足を移す
By Nicholas Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager
先週の「I/O」イベントで、Google社CEOのサンダー・ピチャイ氏は、エージェント型AIによる同社の最近の成功事例を強調しました。Gemini 1.5やProject Astraなどの製品のおかげで、Google社は洗練されたプロアクティブなAIパートナーをGoogle検索やChrome（クローム）に統合しつつあります。ここで重要なのは、新しいAIツールがユーザーのニーズを支援し、予測し、それに適応することです。
顕著な一例[5]を挙げると、Gemini 1.5は、ユーザーが靴の写真を撮ってGeminiに返品を依頼すると、簡単に返品手続きを開始し、完了させることができます。Gemini 1.5は、ユーザーのGmailを自律的に検索して元の注文書を見つけ、返品フォームに記入し、集荷のスケジュールを設定したのです。
[1] Musk, E. 2024. “Yeah, seeing it everywhere.” X.
[2] Tesla. 2024. “Q1 2024 Update.”
[3] See CDC. 2024. “Road Traffic Injuries and Deaths—A Global Problem.” Kusano, K. D. 2023. “Comparison of Waymo Rider-Only Crash Data to Human Benchmarks at 7.1 Million Miles.” arXiv. NHTSA. 2023. “NHTSA Estimates for 2022 Show Roadway Fatalities Remain Flat After Two Years of Dramatic Increases.” United State Department of Transportation. Tesla. 2023. “Tesla Investor Day: Master Plan 3.” Keynote. Tesla. 2024. “Tesla Vehicle Safety Report.” Zhang, L. 2023. “Cruise’s Safety Record Over 1 Million Driverless Miles.” Cruise.
[4] OpenAI. 2024. “Introducing Chat GPT-4o.”
[5] TechCrunch. 2024. “Gemini Helping with Shopping Returns.”
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