By ARK Invest

本レポートは、2024528ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #416」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. BoeingStarlinerがさらなるトラブルに見舞われるなか、Starlinkの加入者数が300万人を突破

By Sam Korus & Daniel Maguire, ACA | @ARKInvest
Autonomous Tech & Robotics Team

 

先週、SpaceX社は、Starlink(スターリンク)の加入者数が、約300万人を突破した(下図の左側を参照)と発表し[1]、ソーシャルメディア・プラットフォームのX上で、T-Mobile社との初の衛星スマートフォン間の直接ビデオ通話を披露しました。同社は、今年後半にテキストベースのサービス、2025年に音声、データ、IoT(モノのインターネット)[2]のサービスを展開する予定です。

ARKのリサーチによると、SpaceX社とT-Mobile社の提携により、今後45年の間に、携帯電話加入者に占める衛星通信加入者の割合が、現在の約0.04%から約1.25%に増加する可能性があることが示されています(次頁の図の右側を参照)。AST Space Mobile社がAT&Tと今夏に5基の衛星を打ち上げ、2030年まで「Direct to Cell」を提供することで合意したことも、このトレンドを後押ししています[3]。長期的には、「Direct to Cell」サービスは年間480億米ドルの収益を生み出す可能性があると示唆されています[4]

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出所: ARK Investment Management LLC2024年。これらのARKの分析は、2024524日時点の外部情報源からの様々な基礎データに基づいており、リクエストに応じて提供可能です。予測は本質的に限定的であり、依拠することはできません。本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券または暗号通貨の購入、売却、保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。

 

SpaceX社が投資家たちにこの朗報を伝える一方で、Boeing社はヘリウム漏れにより、Starliner(スターライナー)[5]の打ち上げが202461日まで延期されたと発表しました。現在、このプロジェクトは予算を15億米ドルも超過しており[6]、「サンクコストの誤謬」に陥ってしまっているように見えます。特に、SpaceX社による、より費用対効果の高いロケットが業界を席巻している現状ではなおさらです。とはいえ、ARKはこれから数週間以内に予定されているStarlinerの打ち上げとSpaceX社のStarship4回目の飛行を大きな期待とともに、心待ちにしています[7] 

 

2. 超党派によるFIT21の可決とSECによるイーサリアムETFの承認により、今週は大きな転換点となる

By Lorenzo Valente | @ARKInvest
Research Associate

 

先週、米国下院はFIT2121世紀の金融イノベーションとテクノロジー)法案を可決しました。この法案は、米国におけるデジタル資産産業の合法化と成長に必要な透明性、消費者保護、法的明確性を提供することを目的としています。SECや現政権からの抵抗が目立つ形で報道されていたにもかかわらず[8]FIT21法案は超党派の支持を得て可決されました。そして、賛成は279票、反対は136票でした。この驚くべき勝利は、暗号資産/デジタル資産業界の包括的な規制枠組みに向けた第一歩となるかもしれません。

下院がFIT21の票を集計している最中、SECは突如イーサリアムETF発行者と交渉を開始し、今週中に一部またはすべてのETFが承認される可能性を示唆しました。先週の月曜日、大手予測市場のPolymarketは、SECがイーサリアムETFの申請を承認する確率を11%としていましたが、その状況は火曜日に急変し、SECはイーサリアムETF発行者の19b-4提出書類に着手し始めました[9]。そして、木曜日の午後5時(東部標準時)までに、SEC8つのイーサリアムETFを承認したのです[10]

もし今後数週間のうちに上院でFIT21が可決され、イーサリアムETFの取引が開始されれば、デジタル資産業界はこれまでで最大の法制上の躍進を遂げる準備が整ったことになります。大統領選挙戦の真っ只中において、デジタル資産に対する超党派の支持は目を見張るものがあります。

 

3. 創薬は自動化から自律化へと進化する

By Nemo Marjanovic, PhD | @ARKInvest
Research Analyst

 

ロボティクス、小型化、ハイスループット技術を駆使して創薬プロセスのさまざまな側面を合理化し、規模を拡大する自動創薬により、手作業が削減され、生物学的実験とデータ生成が前例のない速度で拡張されています。しかしながら現在、多くの製薬会社が自動化技術を利用しているものの、依然として人間の監視に大きく依存しています。

当社のリサーチは、自動創薬が自律的な創薬の推進力となることを示唆しています。では、どのようにしてでしょうか。生物学的実験の規模とスループットは膨大であるため、企業は仮説の選択において戦略的になる必要があります。そこで私たちは、生成型AIエージェント、すなわち自律的な創薬が、調査プロセスを新たな高みに引き上げるとみているのです。
自律的な創薬には、生物学的現象の仮説立案から、実験の計画と実行、データ解析の反復に至るまで、人間の介入を最小限に抑えながらプロセス全体を管理するAIエージェントが統合されています。この移行により、仮説検証あたりのコストが劇的に削減され、サイクルタイムが短縮され、成功確率が高くなるなど、大きなメリットが得られます。また、生産性の飛躍的な向上も促して個別化医療に革命をもたらし、個々の患者に合わせた幅広い医薬品の設計と開発が可能になるはずです。

現在の最先端技術は半自律型ですが、RecursionRXRX)のような企業は、Recursion OSLOWEエージェント・プラットフォームを使用して完全自律型への移行を先導してます。これらのツールは、高度なAIを使って、ウェットラボとドライラボの両方の環境を活用する複雑な創薬ワークフローを調整します。LOWEにより、科学者は自然言語インターフェースを使用して仮説を立て、実験を行なうことが可能になるため、プロセスが簡素化され、すべての研究者が高度なAIツールを利用できるようになります。こうした技術が進化すれば、完全に自律的な創薬への道が開かれて、治療環境が一変する可能性があります。また、ARKのリサーチが示唆するように、今後5年から10年の間に、生産性が1,000倍以上向上するかもしれません。

 

 

 

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[1] Starlink. 2024. “Starling is connecting more than 3M people…” X.
[2] インターネットやその他の通信ネットワークを介して他の機器やシステムと接続し、データを交換するセンサー、処理能力、ソフトウェア、その他の技術を備えた機器。 ウィキペディア“Internet of Things.”参照。
[3] Moon, M. 2024. “AT&T deal will make every phone a satellite phone.” Engadget.
[4] ARK Investment Management LLC. 2024. “Big Ideas 2024: Disrupting the Norm, Defining the Future.”
[5] Starliner(スターライナー)とは、Boeing社が開発した宇宙カプセルで、国際宇宙ステーションやその他の地球低軌道の目的地へ乗組員や貨物を輸送するために設計されている。Starlink(スターリンク)は、Space X社が開発した衛星インターネット・コンステレーションで、世界各地のサービスが行き届いていない遠隔地に高速インターネット・アクセスを提供する。
[6] Roulette, J. 2024. “Boeing Targets June 1 For Starliner’s Debut Crew Launch Amid Helium Leak.” Reuters.
[7] Musk, E. 2024. “Flight 4 in about 10 days.” X.
[8] Wright, T. 2024. “White House and SEC chair oppose FIT21 bill ahead of House vote.” Coin Telegraph.
[9] Hayes, A. 2022. “SEC Form 19b-4: What It Is, How It Works, Examples.” Investopedia.
[10] 19b-4は承認されたが、S-1登録が承認されるまではETFの取引はできない。SECはまだその期間を発表していない。

 

 

 

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