By ARK Invest
本レポートは、2024年6月24日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #420」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. ビッグデータの集約が精密腫瘍学への道を開く
By Nemo Marjanovic, PhD | @ARKInvest
Research Analyst
先週、がん研究者たちが全ゲノム配列解析(WGS)研究の結果を発表しました[1]。10万ゲノムプロジェクト(100kGP)[2]では、35種類のがんにわたる10,470人の患者を集め、74の新しい遺伝子を含む330のがんドライバー遺伝子を特定しました。既存の検査方法では、通常は腫瘍の22%に潜在的に治療可能な変異が発見されますが、この研究では、腫瘍の55%にその変異が発見されました。
新しい標的療法を開発するためのこの一見強固なアプローチは、精密腫瘍学治療におけるビッグデータの重要性を浮き彫りにしています。プロテオミクスやトランスクリプトミクスを含むマルチオミクスデータ、デジタル病理学や放射線学を含むマルチモーダルデータ、および縦断的な患者の転帰データなどのビッグデータを集積することは、がん生物学の理解を深める包括的なデータ解析にとって極めて重要であると思われます。
AIのコストが劇的に低下し、創薬サイクルが加速している今、研究者たちはさらに多くの新しいドライバー遺伝子を発見し、標的とすることで、新たながん治療法を見出すことができるはずです。
2. エアドロップは、より良いトークン配布方法に変更されるべき
By Lorenzo Valente | @ARKInvest
Research Associate
先週、2つの新しい暗号資産プロジェクトであるZkSync(ジーケーシンク)と LayerZero(レイヤーゼロ)がトークンをローンチし、「エアドロップ」(製品のブートストラップ段階に参加して価値を提供した一連のアドレス/ユーザーに、プロトコルが無償でトークンを配布する仕組み)に対する懐疑的な見方が再浮上しています。2017年後半[3]にイニシャル・コイン・オファリング(ICO)が違法な証券売買として取り締まられたことを受けて、エアドロップはトークンを配布するための一般的な方法となり、初期の流動性を生み出すだけでなく、トークンの所有権を分散させながらユーザーベースを調整して、報酬を与えることができるようになりました。
そして、Uniswap(ユニスワップ)は、そのスマートコントラクトと少なくとも一度でもやり取りをしたユーザーに対して、UNI供給の一部を遡及的にエアドロップし、2020年[4]にこの方法を大幅に普及させた最初のプロジェクトでした。それ以来、エアドロップは実験段階を経て、ほとんどの利害関係者に問題を引き起こし始めている最終設計に至りました。何千米ドルもの資金を賭けて、プロの 「シビルファーマー」が現在エアドロップを悪用しており、専用のソフトウェアを使用して何千ものウォレットを作成し、無料トークンを得ようとしています。
LayerZeroはシビルファーマーと戦いながら、エアドロップを実施しようとしています [5]。もし彼らが自己申告すれば、シビルファーマーたちは最初のエアドロップの15%を受け取ることができます。しかし、もし彼らが自己申告せず、LayerZeroチームがそれを発見した場合は、シビルファーマーは何も受け取れません。LayerZeroはまた、エアドロップの割り当ての一部と引き換えに、誰でもシビルファーマーを通報することができる「報奨金」プログラムも実装しました。
エアドロップは以前は効果的な獲得戦略でしたが、悪用により、その正当性が損なわれています。創業者、投資家、コミュニティーのメンバーは、ユーザーのインセンティブとプロジェクトの長期的な成功を一致させるような、新しい配賦戦略を構築する必要があるでしょう。
3. Claude 3.5 Sonnetでさらなる飛躍を遂げたAnthropic
By Jozef Soja | @JozefARK
Research Associate
先週、Anthropic(アンソロピック)社は、新しい大規模言語モデル(LLM)ファミリーの最初の製品であるClaude 3.5 Sonnet(クロード3.5ソネット)[6]をリリースしました。Claude 3.5 Sonnetは、次の図で示すように、MMLU(大規模マルチタスク言語理解)のような一般知識ベンチマークとHumanEval(ヒューマンイーヴァル)のようなコーディングベンチマークの両方で、フロンティア基礎モデルの新記録を樹立しました。多くのベンチマークにおいて、OpenAI社のGPT-4oの性能に匹敵するか、それを上回っています。Anthropic社はまた、モデルの視覚機能を拡張し、図表や画像をはるかに高い精度で処理できるようにしました。
出所: ARK Investment Management LLC、2024年 このARKの分析は、様々な外部データソースに基づいており、リクエストに応じて提供することが可能です。本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券または暗号資産の購入、売却、保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。
出所: ARK Investment Management LLC、2024年 このARKの分析は、様々な外部データソースに基づいており、リクエストに応じて提供することが可能です。本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券または暗号資産の購入、売却、保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。
大規模な言語モデルをサポートするツールもますます重要になっています。今週、Anthropic社はユーザーがClaude 3.5 Sonnet上で共同作業を行ない、コードやテキストを作成・反復できる共有環境であるArtifactsを発表しました。私たちの見解では、Artifactsのような機能により、LLMのアプリケーションが単純なチャットボットを超えて拡張され、オペレーティングシステムではないにしても、LLMファーストのアプリケーションが生み出される可能性があります。
Claude 3.5 Sonnetの推論処理のコストは、競合他社よりも低いようです。当社のリサーチによると、生成される出力トークンごとにおよそ3つの入力トークンが推論される場合、Sonnetの推論コストは100万トークンあたり平均6米ドルとなり、GPT-4oの100万トークンあたり7.50米ドル、Claude 3 Opusの100万トークンあたり30米ドルよりもそれぞれ20%、80%と低くなります[7] 。重要なのは、Sonnetが今年後半に予定されているClaude 3.5ファミリーの中型モデルになることです。より大型の「Opus」バージョンと小型の「Haiku」バージョンの機能を分析することを楽しみにしています。
[1] Kinnersley, B. et al. 2024. “Analysis of 10,478 cancer genomes identifies candidate driver genes and opportunities for precision oncology.” Nature Genetics.
[2] これは、がんの全ゲノム研究としては史上最大規模のもの。
[3] Kornfeld, T.R. et al. 2017. “SEC Cracks Down on Fraudulent ICOs in Latest Enforcement Action.” Troutman Pepper.
[4] Haig, S. 2020. “Uniswap moves closer to a new five million UNI airdrop.” CoinTelegraph.
[5] LayerZero Labs. 2024. “We believe it is in the protocol’s best interest…” X.
[6] Anthropic. 2024. “Claude 3.5 Sonnet.”
[7] 当社の分析は、およびOpenAIによる2024年の「Pricing」から得られたデータに基づく。
ARK’s statements are not an endorsement of any company or a recommendation to buy, sell or hold any security. For a list of all purchases and sales made by ARK for client accounts during the past year that could be considered by the SEC as recommendations, click here. It should not be assumed that recommendations made in the future will be profitable or will equal the performance of the securities in this list. For full disclosures, click here.