Newsletter #421：GoogleのWaymoロボタクシー・サービスが進化中、他。

本レポートは、2024年7月1日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #421」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

1. GoogleのWaymoロボタクシー・サービスが進化中

By Tasha Keeney, CFA & Daniel Maguire, ACA | @ARKInvest
Autonomous Technology & Robotics Team

先週、Google社は同社の子会社のWaymo（ウェイモ）が限定公開からわずか2年足らずでサンフランシスコで自動運転による配車サービスを商用化し、自動運転の乗客のみによる走行距離が2,000万マイル^[2]を超えたと発表しました^[1]。素晴らしいことではありますが、当社のリサーチによると、Teslaは以下に示すように、その66倍の走行データを生成しています。

出所： ARK Investment Management LLC、2024年 このリサーチは、2024年6月時点の様々な外部データに基づいており、ご要望に応じて提供することが可能です。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。

現在、米国ではWaymo社がロボットタクシーサービスの主流で、Cruise（クルーズ）社は規制上の障害^[3]に直面しており、Tesla社はまだサービスを開始していません。しかし、Waymo社の自動運転車両はわずか600～700台しかなく、規模を拡大するには中国のZeekr（ジーカー）社のようなパートナーに頼っています。Waymo社はまた、精密運転のためにライダーも利用していますが、最近フェニックスで電柱に衝突しました。対照的^[4]に、Tesla社は垂直統合されており、約600万台の車両が路上で生成したデータを活用できるはずです。

ARKのリサーチでは、今後10年でロボタクシー・プラットフォーム事業者の企業価値が28兆米ドルに近づくと予測しており、ロボタクシー業界におけるチャンスを競いあっているロボタクシー事業者たちの動向に今後も注目していきます^[5] 。

2. トランスフォーマー・アーキテクチャに賭けているEtched.ai

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Associate

先週、AIハードウェアのスタートアップ企業Etched.ai社が1億2,000万米ドルを調達しました^[6] 。GPT-4oやLlama 3 ^[7]のような大規模言語モデルを支えるニューラルネットワークアーキテクチャであるトランスフォーマーベースのモデルを推論するチップを製造するためです。Etched社は、トランスフォーマー・アーキテクチャが今後も支配的であることに賭けており、トランスフォーマー・モデルを推論するためのハードウェアを設計することで、Nvidia社の汎用グラフィック・プロセッシング・ユニット（GPU）ハードウェアに比べて性能が大幅に向上すると考えています。興味深いことに、同社は、Llama 3 70Bを推論する場合、同社のハードウェアはNvidiaのH100GPUの速度を20倍上回ると予想しています^[8] 。

とは言え、 Etched社のチップは重要なトレードオフに直面しています。アーキテクチャに特化したハードウェアははるかに効率的であるはずですが、モデルアーキテクチャがトランスフォーマーテクノロジーから移行すれば、同社のチップは時代遅れになってしまいます。そして、新しいアーキテクチャ ^[9]は進化しており、性能を大幅に向上させる可能性があるのです。

AIが私たちの日常生活に深く組み込まれるようになれば、特定のアーキテクチャやモデル用にカスタマイズされたハードウェアによってコストが削減されるはずです。しかし、この革命の初期段階では、どのアーキテクチャやモデルが主流になるかは誰にもわかりません。

3. 新しいブリッジRNAベースのゲノム編集技術がCRISPRを改良する可能性

By Rong Guo, PhD | @RongGuoARK
Research Associate

先週、Arc（アーク）研究所の研究者たちが、新しいブリッジRNAベースのゲノム編集システムに関する研究を発表しました^[10]。これは、ゲノムに新しいDNA配列を直接挿入することができるコンパクトでプログラム可能な分子システムです。潜在的に、ブリッジRNAを用いた編集は、CRISPR遺伝子編集を大幅に改善する可能性があります。CRISPRに基づく遺伝子編集は、ターゲットとなるDNAの塩基対を1つだけ変更するか、自然の「細胞修復メカニズム」に依存して編集を完了します。

この新しいブリッジRNAシステムは、自身をシームレスに切り貼りできる「ジャンピング遺伝子」のひとつであるIS110ファミリーエレメントから派生したもので、バクテリアのような微生物ゲノムにおいて、より正確な編集を可能にします。IS110エレメントは、組み換え酵素をコードする遺伝子と、その非コード隣接DNAセグメントで構成されています。研究者たちは、これらのセグメントが「ブリッジRNA」を生成し、IS110エレメント自体と、エレメントが挿入される標的DNAに結合する2つのループに折り畳まれることを発見しました。これらのループはそれぞれ独立して変化させることができるため、研究者らは、一方のループを任意のゲノム部位を標的とするようにプログラムする一方で、もう一方のループを、病気の原因となる遺伝子全体の機能的コピーを含む任意の配列を標的部位に挿入するようにプログラムすることができました。

研究者たちは、この新しい遺伝子編集システムが、大腸菌において60％以上の挿入効率を達成し、正しいゲノム部位において94％以上の特異性を持つことを実証しました。さらに、このコンパクトなシステムは、その汎用性に加えて、挿入、削除、反転という3つの基本的なDNA再配列をすべて行なうことができます。

この新しい編集システムがバクテリアで機能することを実証した研究者たちは、これを哺乳類細胞で機能するよう適応させることを目指しています。この技術が成功すれば、非常に複雑なゲノムレベルの操作を必要とする病気の治療法を開発できる可能性があります。