By ARK Invest
本レポートは、2024年10月28日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #437」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. Tesla、2025年に数兆米ドル規模のロボタクシー事業を開始
By Autonomous Technology & Robotics Team | @ARKInvest
Tasha Keeney, CFA, Sam Korus, & Daniel Maguire, ACA
先週、Tesla社は第3四半期決算発表で投資家を喜ばせました。同社は、記録的な車両コストの低下、利益率の高い完全自動運転(FSD)ソフトウェアによる収益の増加、エネルギー貯蔵とサービスによる収益の驚くほどの大幅な成長により、予想を上回る利益を計上しました。同社はまた、来年前半に低価格車を発売する計画を再確認し、車両販売台数の成長率目標20~30%増を達成する意向を明らかにしました。ARKにとって最も重要なことは、イーロン・マスク氏が、Teslaが来年、テキサス州とカリフォルニア州で自動運転配車(ライドヘイル)サービスを開始することに言及したことです。これは、私たちの見解では、数兆米ドル規模のロボタクシーの機会を切り開くことになります。また、同社の従業員がカリフォルニア州でかなり前からこのサービスをテストしていることもわかりました[1]。
Tesla社は決算発表で、多くの人が10月10日のサイバーキャブ・イベントでの発表を期待していた自動運転配車サービスに関する洞察も披露しました。マスク氏は明らかに、投資家にとって重要な詳細の一部を決算発表まで延期するという戦略的決定を下したのです。投資家向けの決算発表で経営陣は、Teslaが特定の時間と走行距離のしきい値に達するまで、一部の州では安全ドライバーの配置が義務付けられると述べました[2]。しかし同社の車両台数の規模を考えれば、これらのしきい値は難なくクリアできるはずです。ARKは、仮に規制当局が安全ドライバーの排除を遅らせたとしても、人間が運転する配車サービスを最初に開始することの経営戦略上およびマーケティングにおける優位性について概説しています[3]。
私たちの見解では、Tesla社は次の図で示すように、現在の配車サービスの価格が高いことから、ロボタクシーの発売時に、包括的な価格を享受できると同時に、路上を走る平均的な車両よりも1マイルあたりのコストが低いというメリットを享受できるはずです。なぜでしょうか?電気自動車にかかる運転コストは、ガソリン自動車のおよそ3分の1です[4]。安全ドライバーを配置せず、大規模に展開した場合、Teslaのロボタクシーの乗車料金は、消費者にとって1マイルあたりわずか0.30~0.40米ドルになることが示唆されています[5]。これは、ARKの試算である1マイルあたり約0.25米ドルよりはわずかに高いものの、現在の配車サービスのコストである1マイルあたり約2米ドルや、マイカーの所有コストである1マイルあたり約0.70米ドルを大きく下回るものです[6]。価格帯を下げれば、次の図のように、UberとLyftが現在ターゲットにしている市場規模の約80倍に相当する、約11兆米ドルの収益ポテンシャルを掘り起こすことができます。
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*11兆米ドルは対応可能な市場であり、2030年に期待される売上高ではありません(自動運転が対応可能なマイルすべてに浸透するとは予想していないため)。出所:ARK Investment Management LLC、2024年。このARKの分析は、外部ソースからの様々な基礎データに基づいています。予測は本質的に限定的であり、依拠することはできません。また、本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。
2. 新生児のゲノムスクリーニングは、医療を消極的なものから積極的なものへとシフトさせるか?
By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst
もし、すべての赤ちゃんが出生時に全ゲノム配列解析(WGS)によって評価され、何百もの潜在的な遺伝性疾患を含む健康上の問題が特定されるとしたらどうなるでしょうか?英国のNHS Generation[7]や米国のGUARDIAN[8]のような新しい研究は、WGSがいかに医療を、病人に対する事後対応型の消極的なケアから、事前対応型の積極的で精密ベースの解決策へとシフトさせるかを垣間見せてくれます。私たちはそのような未来の実現にどれくらい近づいているのでしょうか、そしてそれは何を意味するのでしょうか?
現在、米国のほとんどの病院では、新生児を約30種類の疾患について検査していますが、こうした検査では、治療可能な遺伝性疾患が見逃されることが多く、子供が回復不可能な損傷を受けた後に初めて表面化することが多々あります。GenerationとGUARDIANの研究では、新生児を200以上の遺伝的疾患について検査し、早期診断と、早期介入、標的治療、そしてより良い結果を生み出すのための貴重な時間を提供しています。
例えば、WGSは出生時に重症複合免疫不全症であることを示して警告し、免疫合併症の予防に最も効果的な幹細胞移植や遺伝子治療などの治療をすぐに開始することが出来ます。GUARDIANの最初の参加者4,000人のデータに基づくと、標準的な新生児スクリーニングでは見逃される可能性のある疾患、すなわち実用的な診断が新生児の3.7%に認められ、そのうちの92%については、すでに早期治療が行なわれています。
経済面ではどうでしょうか?新生児集中治療室(NICU)では、超高速ゲノムシーケンス(URGS)によって、小児1人当たりの医療費が14,265米ドル削減され、37%[9]の症例で患者の管理方法が変更されました。増大するコストと非効率に悩まされているシステムにおいて、このモデルは画期的な変化をもたらす可能性があります。
ヒトゲノム全体の配列決定にかかるコストが急落し、10年前には10万米ドル以上かかっていたのが、現在では500米ドル以下、そして遠くない将来には100〜200米ドルにまでなる可能性があります。また、AIがデータ解析を変革するにつれて、出生時にWGSを実施しないことは非倫理的になるはずです。
注目すべきは、GUARDIANが接触した家族の72%がWGSに同意したことです。さらに、90%が追加の神経発達検査を選択しました。
低価格のシーケンンシング、AIを活用した迅速な診断、そして急成長する遺伝子データベースの融合により、以下に示すように、「P4医療」(予測、予防、参加型、個別化医療)が説得力のある提案になっているのです。
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注:このグラフは、P4医療(予測、予防、参加、個別化医療)を中心としたプロアクティブ・ヘルスケアモデルへのシフトを推進する3つの重要なトレンドの収束を示しています。このチャートの著者(Kingsmore、他。2024)によると、左側のY軸の数字は、GS(ゲノム配列)あたりの試薬コストを示していおり(単位は米ドル)、右側のY軸の数字は、FDAが承認した遺伝子治療と原因不明の遺伝病の数を示しています。括弧内の数字は、URGSに基づく遺伝病診断までの最短時間を記録した発表論文の引用を示しています。ここで括弧内の数字が何を意味するのかを明示するために、それぞれのケースで示された時間数を示しています。したがって[7] = 48時間、[9] = 26時間、[12] = 22:19時間、[14] = 13.5時間、[41] = 7時間。出所:Kingsmore、他。2024年。10予測は本質的に限定的なものであり、依拠することはできません。また、情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。
先駆的な研究により、積極的な遺伝子スクリーニングが医療の進化の次のステップであることが実証されています。新生児の両親が、出生時に遺伝子設計図を受け取るような世界では、病気の治療とは対照的に、真の医療は、赤ちゃんの最初の呼吸から始まり、何世代にもわたって医療の未来を変えることになります。
3. Anthropicは、AIエージェントがコンピュータ上で動作するための新しい方法を解明
By Jozef Soja | @JozefARK
Research Associate
先週、Anthropic(アンソロピック)社は、主力の大規模言語モデル(LLM)であるClaude 3.5 Sonnet のアップデート版を発表しました[11]。新しいバージョンでは、コーディングと推論能力が大幅に向上しており、難易度の高いエージェントコーディングのベンチマークであるSWE-bench Verifiedで上位にランクインしています。現在、スコアは49%で、Sonnet の以前のバージョンよりも約16パーセントポイント高くなっています[12]。
ベンチマークの改善は進歩を測る便利な方法ですが、生産性の向上は、AI企業がモデルがユーザーや周囲の世界と対話するための新しい方法を解き放ったときに加速する可能性が高いといえます。Anthropic社は、Claude(クロード)にユーザーのコンピュータと直接対話することを教えることでこれを実現し、そのモデルは、許可を与えられた場合、コンピュータのマウスとキーボードを直接制御して、ウェブブラウザ、スプレッドシート、フォーム、および開発者環境を使用できるようになりました。そして、この飛躍的な進歩により、Claudeが自動化できるタスクの数は大幅に拡大しました。Claudeはすでに、新しいコンピュータービジョン機能を使って、複数のデータソースにアクセスし、ベンダーのリクエスト・フォームに入力したり[13] 、VSCodeを使用して個人のウェブサイトを作成して公開したり[14] 、サンフランシスコへの観光旅行のロジスティクスを計画[15]したりしています。
LLMがコンピュータやソフトウェアアプリケーションのユーザーインターフェイスを自律的に操作する能力を向上させるにつれて、その使用事例はチャットボットや検索エンジンから、ユーザーに代わって実際の作業を実行できるエージェントへと拡大するはずです。ARKは、AIがますます複雑化するタスクを確実かつ安価に自動化するようになれば、ほとんどのナレッジワーカーにとって重要な生産性向上が実現すると予測しています。
[1] Motley Fool Transcribing. 2024. “Tesla (TSLA) Q3 2024 Earnings Call Transcript.” The Motley Fool.
[2] 同上
[3] Keeney, T. 2020. “Tesla Should Launch a Human Driven Ride-Hail Service to Accelerate Its Autonomous Strategy.” ARK Investment Management LLC./ Keeney, T. 2020. “Could a Tesla Ride-Hailing Network Run Over Uber and Lyft?” ARK Investment Management LLC.参照
[4] このARKの分析は、外部ソースからの様々な基礎データに基づいており、リクエストに応じて提供可能。
[5] Tesla. 2024. “We, Robot | Tesla Cybercab Unveil.” YouTube.
[6] 例えば、Uberが提供する市場である。このARKの分析は、 Moye 2024 and Grauer 2023を含む外部ソースからの様々な基礎データに基づいており、リクエストに応じて提供可能。Moye, B. 2024. “AAA Your Driving Costs: The Price of New Car Ownership Continues to Climb.” AAA Newsroom. Grauer, J. 2023. “How much does Uber cost per mile?” Daily Dot参照
[7] NHS England. 2024. “First newborn babies tested for over 200 genetic conditions as world-leading study begins in NHS hospitals.”
[8] Ziegler, A. et al. 2024. “Expanded Newborn Screening Using Genome Sequencing for Early Actionable Conditions.” JAMA.
[9] Kingsmore, S.F. et al. 2024. “Rapid genomic sequencing for genetic disease diagnosis and therapy in intensive care units: a review.” NPJ Genomic Medicine.
[10] 同上
[11] Anthropic. 2024. “Introducing computer use, a new Claude 3.5 Sonnet, and Claude 3.5 Haiku.”
[12] SWE-Bench. 2024. “Can Language Models Resolve Real-World GitHub Issues?”
[13] Anthropic. 2024. “Claude | Computer use for automating operations.” YouTube.
[14] Anthropic. 2024. “Claude | Computer use for coding.” YouTube.
[15] Anthropic. 2024. “Claude | Computer use for orchestrating tasks.” YouTube.
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