By ARK Invest

本レポートは、2024826ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #428」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 規模を拡大し続けているロボタクシー

By Autonomous Technology & Robotics Team | @ARKInvest
Tasha Kenney, CFA and Daniel Maguire, ACA

 

Baidu(バイドゥ)社とWaymo(ウェイモ)社がロボタクシー事業を拡大しているのは非常に喜ばしいことです。 

先週、Waymo社は、 Geely(吉利汽車)のZeekr(ジーカー)が開発した第6世代のロボタクシーが、Waymo社のJaguar(ジャガー)I-PACEのハードウェアと比較して、車載カメラの数を29台から13台に、ライダーセンサーの数を5台から4台に削減していることを確認しました[1]Waymo社は詳細を明らかにしていませんが、新型車両の価格は、現行モデルで噂されている約10万米ドル超よりもはるかに低くなる可能性が高く[2]、これは事業拡大に向けた重要なステップとなります。

また同社は最近、週当たりの自動運転車の乗車台数が10万台以上に増加したと発表しました[3]。最近、ARKのターシャ・キーニーはロサンゼルスでWaymo社のサービスをテストし、そのスムーズな乗り心地に感銘を受けたばかりです[4]

一方、Baidu社は最近の決算説明会で、同社の自動運転配車サービスプラットフォームであるApollo Goの第2四半期における乗車数が週平均75,000件に達したことを強調しました[5]。注目すべきは、Baidu社が現在、武漢で約400台の小規模な車両群で100%自動運転で運行しているのに対し[6]、他の都市では、人間が運転する車両と自動運転車両の両方を運行している点です[7]Baidu社の進歩にもかかわらず、経営陣は、全国展開して、自動運転配車市場で大きなシェアを獲得するには何年もかかる可能性があるとコメントしています。

次の最初のグラフに示されているように、Waymo社とBaidu社はロボタクシー事業において市場で先行してますが、当社のリサーチでは、Tesla社が2番目のグラフに示されているように、約70倍のデータを使って自動運転システムをトレーニングしていることが分かっています。ほとんどのAI(人工知能)プロジェクトがそうであるように、Tesla社のデータ規模の優位性は、この「勝者が大部分を奪う」ビジネスチャンスにおいて、商業的優位性につながる可能性が高いといえるでしょう。

私たちは、10月に開催されるTeslaのロボタクシーのイベントに強い関心と特別な注意を払いながら、この分野を注視していくことを楽しみにしています。

SNL 08.26.24. Graph 1

出所: ARK Investment Management LLC2024823日現在、様々な外部情報源のデータに基づく。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。

SNL 08.26.24. Graph 2

出所: ARK Investment Management LLC2024823日現在、様々な外部情報源のデータに基づく。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。

 

2. 新たな研究でハイスループット・プロテオミクスの 診断力が明らかに

By Nemo Marjanovic, PhD | @ARKInvest
Research Analyst

 

一滴の血液から何千ものタンパク質を測定するハイスループット・プロテオミクス[8]の進歩により、血液中を循環するタンパク質が、がん、糖尿病、アルツハイマー病などの複雑な疾患の検出、治療、さらには予防に役立つことが明らかになりました。UKバイオバンクなどの研究から得られた大規模なデータセットを用いて、研究者たちは、タンパク質と健康状態を結びつけるパターンを特定しました。重要なことは、タンパク質レベルの変化が特定の疾患の前兆となることです。

最近、3つの研究により、タンパク質を分析するハイスループット技術によって、病気の早期診断や個別化治療が可能になることが、実証されました。

エジンバラ大学の研究者らは、従来の遺伝的リスクマーカーを上回る性能を持つプロテインスコアを作成し、血液中のタンパク質が、糖尿病、心臓病、アルツハイマー病などの加齢性疾患の発症を、しばしば症状が現れる前に予測できることを実証しました[9]

また、オックスフォード大学の研究者らは、プロテオミクス老化時計を研究し、血漿タンパク質が死亡率と一般的な加齢関連疾患のリスクの両方を予測できることを実証しました。この研究の重要な発見である「ProtAgeGap」は、生物学的年齢と実年齢の差を測定するもので、ProtAgeGapが高いほど心臓病、糖尿病、アルツハイマー病などの疾患のリスクが高く、差が小さいほど老化が遅く、リスクが低いことを示しています。この差によって、疾患の早期発見、タイムリーな介入、個別化医療が可能になります[10]

アイスランド心臓協会の研究者らは、アルツハイマー病/認知症に関連する主要なタンパク質マーカーを特定しました。具体的には、遺伝的危険因子として既に知られているAPOE-ε4遺伝子の影響を受けたタンパク質は、APOE-ε4遺伝子を持たない人であっても、診断や治療に関連します[11]

これらの研究は、病気の早期発見を可能にし、医療を一変させる可能性があります。定期的な血液検査によって、何年も前に健康リスクを特定し、早期介入を可能にし、病気の進行を遅らせたり、予防したりすることができるようになるかもしれません。

個別化医療も劇的に改善されるはずです。個々のタンパク質のプロファイルを理解することで、医師はより効果的に治療法を調整することができるようになり、症状が現れるずっと前に病気を予測し、治療法を知らせる日常的な診断に応じて、より積極的な医療行為を進化させることができるでしょう。

 

3. 労働分配率の低下は必ずしも賃金の低下を意味するわけではない

By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics

 

自動化に関する議論では、雇用の喪失や従業員への経済的な悪影響に焦点が当てられることが多いですが、当社のリサーチでは、自動化に伴う生産性の向上が賃金の上昇につながる可能性があることが示唆されています。自動化を進めると、企業は労働力よりも設備投資に多くの収益を配分するようになり、「労働分配率」(労働力に分配される収益の割合)が減少する可能性があります。したの左のグラフに示すように、自動化する余力があると思われる大企業の労働分配率は、中小企業よりも低くなる傾向がありますが右のグラフに示すように、自動化に伴う生産性の向上は、従業員1人当たりの平均賃金の上昇につながるようです。

SNL 08.26.24. Graph 3

出所(左):ARK Investment Management LLC2024年、IZA Institute of Economics 2019 [12]のデータに基づく。2024823日現在。出所(右):ARK Investment Management LLC2024年、United State Census Bureau 2023 [13]のデータに基づく。2024823日現在。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。

 

 

 

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[1] Elias, J. 2024. “Waymo generation 6 robotaxi Geely Zeekr.” CNBC.

[2] TechStockFundamentals. 2024. “Contact worked at $GOOGL Waymo in charge…” X.

[3] Mawakana, T.N. 2024. “We’re building a safer future one ride…” X.

[4] Keeney, T. 2024. “This past week, I had the opportunity…” X.

[5] Baidu. 2024. “Baidu Announces Second Quarter 2024 Results.”

[6] Motley Fool Transcribing. 2024. “Baidu (BIDU) Q2 2024 Earnings Call Transcript.” See also Baidu. 2024. “Baidu Announces Second Quarter 2024 Results.”

[7] GDToday. 2024. “’Apollo Go’ Robotaxi opens passenger tests in 11 cities: are driver jobs at risk?”

[8] Cui, M., Cheng, C., and Zhang, L. 2022. “High-throughput proteomics: a methodological mini-review.”  Laboratory Investigation.

[9] Gadd, D.A. et al. 2024. “Blood protein assessment of leading incident diseases and mortality in the UK Biobank. “ Nature Aging.

[10] Argentieri, M.A. et al. 2024. “Proteomic aging clock predicts mortality and risk of common age-related diseases in diverse populations.” Nature Medicine.

[11] Frick, E.A. et al. 2024. “Serum proteomics reveal APOE-ε4-dependent and APOE-ε4-independent protein signatures in Alzheimer’s disease.” Nature Aging.

[12] IZA Institute of Labor Economics. 2019. “Labor Income Share at the Firm Level: Global Trends.”

[13] United States Census Bureau. 2023. “2021 SUSB Annual Data Tables by Establishment Industry.”

 

 

 

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