By ARK Invest

本レポートは、2025127ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #448」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. DeepSeekがオープンソースコミュニティに高度な推論機能を導入

By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet

 

その最先端モデルV3で知られる中国のAIラボDeepSeek(ディープシーク)は先週、初の推論モデルR-1を発表しました。OpenAI社のoシリーズと同様に、R-1は思考の連鎖推論を活用して複雑な論理と数学の課題に取り組み、従来の大規模言語モデルよりも正確で一貫性のある答えを生成します。ベンチマークでは、オープンソースのR-1モデルが、OpenAI社のクローズドソースのo1モデルに匹敵するだけでなく、市場の他の競合モデルを凌駕していることが示されています。

DeepSeek詳細な論文[1]の中で、「R-1 Zero」と名付けられたR-1のバージョンが、「純粋な強化学習」のトレーニングメニューからどのように進化したかを明らかにしました。DeepSeek V3をベースとして、エンジニアたちは高度な論理と数学の問題を解くようモデルに挑戦し、人間がラベル付けした大量の思考連鎖データなしで「創発的」推論を開発しました。このアプローチは、自己主導型学習を備えたAlphaGo Zeroに敬意を表するものであり、言語モデルにこのトレーニング方法を適用した初めての成功例が、詳細な論文で発表されました。R-1のオープンソース版は、R-1 Zeroの純粋な強化学習アプローチに加えて追加のトレーニング手順が含まれており、思考パターンの解釈可能性を向上させ、ユーザーの好みや安全ガイドラインとの整合性を確保します。

DeepSeekはまた、Llamaなどのより小規模なモデルのパフォーマンスを「蒸留」によって向上させることができる「トレーナーモデル」としてのR-1の汎用性も紹介しました。R-1は、知識や洗練された推論をより少ないパラメータを持つモデルに伝達することで、高度なAIがより幅広いモデルで推論を強化できる可能性を強調しています。

OpenAIo1のフルバージョンをリリースしてから2ヵ月後、R1はおそらく中国政府の支援によって推進されたDeepSeekの反復能力を実証しています。R1のタイムラインの加速は、バイデン政権による土壇場でのAI輸出の取り締まり [2]と、トランプ政権によるStargate(スターゲート)[3] OpenAIのサム・アルトマン氏、Oracleのラリー・エリソン氏、Softbankの孫正義氏が主導する5,000億米ドル規模の米国のAIインフラ構想)を発表した後の世界的なAI競争の激しさも浮き彫りにしています。

 

2. 遺伝子編集により、プリオン病の1回限りの治療法が進歩

By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst

 

プリオン病は、PRNP遺伝子によってコード化されたプリオンタンパク質(PrP)のミスフォールディングによって引き起こされる致命的な神経変性疾患です。よく知られている例としては、狂牛病があります。かつては治療不可能であったプリオン病ですが、ブロード研究所の研究者たちは、画期的な遺伝子編集技術であるin-vivo(生体内)塩基編集によって治療可能であることを実証しつつあります。この技術により、ヒト化マウスモデルでのプリオン病患者の寿命が延びました[4]。この画期的な進歩は、1回限りの治療介入法の開発に向けた重要な一歩となります。

科学者たちは、アデノ随伴ウイルス(AAV)送達を用いて、塩基編集によりPRNP遺伝子に保護変異R37Xを導入し、プリオンタンパク質レベルを50-63%減少させ、マウスの寿命を約50%延ばしました。驚くべきことに、これらの編集は、オフターゲット効果を最小限に抑えながら、プリオン病からヒトを守ってきた自然発生的な変異を模倣しています。

科学は、遺伝子編集がプリオン病やその他の深刻な神経変性疾患の治療を一変させ、高度に標的を絞った1回限りの治療法へとパラダイムシフトさせることができることを実証しつつあります。

 

3. OpenAIがブラウザベースのエージェント「Operator」をリリース

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Analyst

 

先週、OpenAIは、ブラウジングとタスクの自律的実行を再定義するであろうAIエージェントのOperator(オペレーター)[5]を発表しました。Operatorは、モニター、キーボード、マウスといったヒューマンインターフェースを活用し、プライベートクラウドでホストされたブラウザを操作して、OpenTableでレストランの予約をしたり、Instacartで食料品を注文したり、Stubhubでスポーツイベントのチケット購入したりするなど、日常的なタスクを実行します。Operatorは、ほとんどのウェブサイトを操作できる柔軟性を備えており、生産性、利便性、リーチを向上させるこのテクノロジーの破壊的な潜在能力を際立たせています。

競合他社もこの分野に参入していますが、Operatorが最もアクセスしやすく、強力な製品であるようです。Anthropic社がComputer UseSonnet 3.5[6]をテストし、その後Google社がProject Mariner[7]のベータ版を公開しましたが、可用性とパフォーマンスが限られていることから、評価は分かれました。これとは対照的に、OperatorはすでにChatGPT Pro加入者向けに提供されており、近い将来にはアプリケーションプログラミングインターフェース(API)オプションとChatGPT PlusおよびEnterpriseへのより広範な展開が計画されています。先行者としての優位性を考えると、OpenAIはエージェントとブラウザのインタラクションに関する有用なデータを取得し、自動化されたAI駆動型サービスの成長を促進する可能性があります。これは、最先端のテクノロジーが日常生活と経済に指数関数的な影響を与えるという私たちの信念を裏付けるものです。

 

4. 3Dプリンティングが自動車アフターマーケットのサプライチェーンを再構築

By Tasha Keeney, CFA | @TashaARK
Director of Investment Analysis & Institutional Strategies

 

先週、3D SystemsDaimler Busと提携し、スペアパーツの分散3Dプリントを可能にしました。地域のサービス局に送信されたIP保護ファイルにより、オンデマンドで部品を3Dプリントすることができるため、より集中的な製造アプローチと比較して、部品ができるまでの時間を75%短縮できる可能性があります[8]

この発表は、3Dプリンティングの大きな市場機会を浮き彫りにしています。米国だけでも、自動車アフターマーケット部品業界は年間約2,000億米ドルの収益を生み出しており、これは約200億米ドルである世界の3Dプリンティング市場の10倍の規模です[9]。オンデマンドで部品をプリントする利点には、少量生産時の在庫と製造コストの削減などがあります。場合によっては、デジタル設計ファイルで物理的な金型を置き換えることができ、部品1個あたりの出荷コストを削減できます。

ARKは、3Dプリンティングが2030年までに1,800億米ドル規模の産業に成長する可能性があると予測しており、自動車産業はその最大のビジネスチャンスの1つになると予測しています。今後発表される「Big Ideas」レポートで、さらに詳しい情報をお伝えしますので、どうぞご期待ください。

 

 

 

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[1] DeepSeek-AI. 2025. “DeepSeek-R1: Incentivizing Reasoning Capability in LLMs via Reinforcement Learning.” arXiv.

[2] U.S. Bureau of Industry and Security. 2025. “Biden-Harris Administration Announces Regulatory Framework for the Responsible Diffusion of Advanced Artificial Intelligence Technology.”

[3] OpenAI. 2025. “Announcing the Stargate Project.”

[4] An, M. et al. 2024. “In vivo base editing extends lifespan of a humanized mouse model of prion disease.” Nature Medicine. DiCorato, A. 2025. “Gene editing extends lifespan in mouse model of prion disease.” The Broad Institute.

[5] OpenAI. 2025. “Introducing Operator.”

[6] Anthropic. 2024. “Introducing computer use, a new Claude 3.5 Sonnet, and Claude 3.5 Haiku.”

[7] Google DeepMind. 2024. “Project Mariner.”

[8] 3D Systems. 2025. “3D Systems & Daimler Truck | Daimler Buses Innovations Maximize Vehicle Uptime by Decentralizing Spare Part Production.”

[9] Apex Blog. 2024. “Automotive Aftermarket Industry Analysis 2023.”  3D Printing Industry. 2024. "3D Printing Industry hits new high at $20 billion according to Wohlers Report 2024, deeper insight from Terry Wohlers.

 

 

 

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