By ARK Invest

本レポートは、202523ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #449」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 動画中心のソーシャルメディアが衝動買いを促進

By Varshika Prasanna | @varshikaARK
Research Associate

 

TikTokInstagramYouTubeは、今やスクリーンタイムの大部分を占める短編動画やライブストリーミングを配信しており、ショッピングとエンターテインメントの両方の小売チャネルとして機能しています。エンターテインメントとeコマースが融合するにつれ、コンテンツクリエイターはリアルタイムで商品を紹介し、質問に答え、購入を可能にしています。ある試算によると、下図で示されているように、消費者が従来のテレビから動画中心のソーシャルネットワークに移行する[2]につれて、米国のライブコマースプラットフォームは500億米ドル[1]の収益を生み出す可能性があります。

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注:2025年のデータは推定値。出所: ARK Investment Management LLC, 202520246月時点のeMarketerのデータに基づく。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。予測には本質的に限界があり、依拠することはできません。

 

景品、限定割引、ライブQ&Aセッションを利用したインフルエンサー主導の製品デモは、ショッピングをエンターテイメント体験に変えうるような信頼とエンゲージメントの構築を目指しています。ライブストリームコマースのおかげで、ブランドや小売業者は、より即時的で、魅力的、かつ本物の方法で消費者にリーチすることができるようになりました。ブランドは、ターゲット消費者と共感を呼ぶインフルエンサーや専門家とコラボレーションし、視聴者を積極的な参加者に変えています。エンターテイメントとショッピングの融合により、衝動買いにぴったりの信憑性と双方向性が生まれています。

 

2. 今年、Teslaはロボタクシーを商業化し、ヒューマノイドロボットの生産を開始する

By Autonomous Technology & Robotics Team | @ARKInvest
Tasha Keeney, CFA, Sam Korus, & Daniel Maguire, ACA

 

Tesla社は、先週の第4四半期決算でコンセンサス予想を下回ったものの、多くのアナリストの予想に反してその株価は上昇しました。おそらく投資家たちは、自動運転車とヒューマノイド(人型)ロボットが、今後5年から10年で最も重要なAIの投資機会のうちの2つになる可能性があることを理解し始めているのでしょう。

同社は6月に、オースティンで自社の車両による完全自律運転のライドヘイル(配車)サービスを商業化する計画です[3]。また、年末までには、規制当局の承認を待って、米国の多くの都市で「監視なし」の完全自動運転(FSD)を開始し、欧州と中国では「監視付き(または、ドライバーの監視付き)」のFSDを開始する予定です。イーロン・マスク氏は、2026年にはTeslaのオーナーたちが米国でのライドヘイルサービスに車両を登録できるようになり、ほとんどの国で監視なしのFSDが利用できるようになると予想しています[]

マスク氏はまた、Teslaのヒューマノイドロボットである「Optimus(オプティマス)」が、年末までに数千台規模に拡大し、その多くが同社の工場内で稼働する見込みであることも明らかにしました。自動車の約1,000倍という複雑さにもかかわらず、イーロン氏はOptimus 2026年後半には商業化され、今後数年間は毎年1桁ずつという前例のないスピードで拡大すると見込んでいます

Tesla社にとって、2025年は極めて重要な年になるに違いありません。ロボタクシーとヒューマノイドロボットにおける数兆米ドル規模のビジネスチャンスの可能性について概説しているARKの「Big Ideas 2025」が近々発行されます。楽しみにお待ちください。

 

3. 過去数年のAIの進歩の軌跡を推定したかのようなDeepSeekのR1

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Analyst

 

DeepSeek(ディープシーク)社のR1は、オープンウエイトモデルがいかに急速に進化しているかを如実に示しています。しかし、R1の性能の向上は印象的ではあるものの、ここ数年のAIの進歩の軌跡を推定して導き出されたもののように思われます。 ARKでは、ハードウェアプラットフォームの進歩とアルゴリズム改良により、大規模言語モデルのトレーニングコストが年間約75%ずつ低下していると推定しています[]

ディラン・パテル氏の分析[]によると、下図で示されているように、ハードウェアとソフトウェアの両方における進歩のおかげで、DeepSeekのコスト低下が最近の推論コストの低下の「継続」であることを裏付けています。パテル氏はまた、R1を訓練するための設備投資だけでも、おそらく約13億米ドルかかると主張しており、これは広く流布されている600万米ドルという数字よりも一桁以上高いものです。

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注:「LLM」:大規模言語モデル。「MMLU」:Massive Multitask Language Understanding(大規模マルチタスク言語理解)。  出所:Patel/Semi Analysis 2025 []。本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。

 

当社の見解では、DeepSeek社のR1は、高度なAIモデルのコストが急激に低下し、それをサポートするプラットフォームやインフラの需要が高まっていることを証明する数多くのプロジェクトのうちの1つです。OpenAIAnthropicxAIなどの他のAIラボも、絶え間なく革新を続けています。最近、OpenAI社はo3-mini[]をリリースしました。これは、同社のo1モデルだけでなく、DeepSeek社のR1よりも優れた性能を発揮しました。また、ChatGPTの全ユーザーにo3-miniの無料での使用を提供しました。AI企業は性能と価格の限界を押し広げることで、AIを活用した幅広いアプリケーションの可能性を引き出し、変革的で大規模な導入への道を開いています。

 

4. 生物学は生命の基盤モデルと超知能の設計図となりうる

By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst

 

生物学は、人工超知能(ASI)の形成に役立つ可能性のある究極のビッグデータ科学プロジェクトです。高品質なデータの重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。膨大な生物学的データセットでAIモデルをトレーニングすることで、AIシステムが人間のようなレベルで推論し理解し、生物学的進化を設計できるようにする、生命の基盤モデルへの鍵が見つかるかもしれません。

You氏らによる最近の研究は、タンパク質の配列と構造情報を解読したAlphaFoldのような画期的な成果に基づいています[]。生物学的情報は、配列、構造、システムという3つの基本的な層にわたってコード化されています。生物学を正確にモデル化するには、この3つの層すべてと複数のフィードバックループが必要です。この論文では、システムレベルの生物学的情報のモデリングに焦点を当て、AI主導のバーチャル細胞のコンセプトを、複数細胞の相互作用や組織レベルのシステムモデリングへと発展させ、最終的には仮想組織モデルに向けて取り組むことを目指しています。個々の細胞のAIモデルを超えて、AI主導型の組織モデリング、すなわち「AI仮想組織」に向かうことは、人体全体のAIモデル開発への道のりにおける大きなマイルストーンです。

この研究では、2,300万個の細胞でトレーニングされた1億パラメータのモデルを使用して、幾何学的グラフニューラルネットワーク(GeoGNN)を適用し、細胞相互作用に関する潜在的な空間情報を抽出しました。とはいえ、細胞の微小環境や腫瘍生物学に関する重要な洞察を提供することは、潜在空間のマッピングと可視化には役立ちますが、AIが生物工学の原理を使って推論することを可能にするわけではないので、ほんの始まりに過ぎません。生物学における真のAI主導型推論には、はるかに多くのデータが必要となりますが、10x GenomicsIllumina(イルミナ)のFluentのような企業は、シングルセル(単一細胞)ゲノミクスや空間ゲノミクスのプラットフォームを通じて、そのデータを提供するのに適した立場にあります。

バイオテクノロジーとヘルスケアの分野では、10x GenomicsIlluminaGuardant Healthなど、大規模な生物学的データの収集を可能にする企業が、この革命を実現する鍵となります。生物学的推論によってAI主導の生物工学が可能になり始めると、彼らのツールとテクノロジーは、生命の究極のAI基盤モデルの構築に役立つでしょう。

 

 

 

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[1] Statista. 2025. “Livestreaming commerce Sales in the United States between 2022 and 2026.”

[2] Yuen, M. 2024. “Social Media Users Will Surpass Linear TV Viewers Next Year.” EMarketer.

[3] Keeney, T. 2024. “Countdown To Cybercab, Tesla’s Multi-Trillion Dollar Robotaxi opportunity.” ARK Investment Management LLC.

[4] Motley Fool Transcribing. 2025. “Tesla (TSLA) Q4 2024 Earnings Call Transcript.”

[5] ARK Investment Management LLC. 2024. “Big Ideas 2024: Disrupting the Norm, Defining the Future.” P. 27.

[6] Patel, D. et al. 2025. “DeepSeek Debates: Chinese Leadership On Cost, True Training Cost, Closed Model Margin Impacts.” SemiAnalysis. Dylan Patel is the founder and chief analyst at SemiAnalysis, a boutique semiconductor research firm.

[7] 同上

[8] OpenAI. 2025. “OpenAI 03-Mini.”

[9] You, Y. et al. 2025. “Building Foundation Models to Characterize Cellular Interactions via Geometric Self-Supervised Learning on Spatial Genomics.” bioRxiv.

 

 

 

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