By ARK Invest
本レポートは、2025年5月5 日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #461」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. Meta、LlamaCon(ラマコン)でエキサイティングな新ツールを発表
By Next Generation Internet Team | @ARKInvest
Varshika Prasanna & Jozef Soja
先週開催された初の開発者会議「LlamaCon(ラマコン)」において、Meta社はスタンドアロンのMeta AIアプリをリリースしました[1]。このアプリには、 AIの活用を容易にする新たな「Discover(発見)」タブが搭載されており、急速な変化のペースに対応するのに苦労している一般ユーザーにとって便利なものとなるでしょう。同社はモデルと他のユーザーが相互にやり取りするフィードを厳選して表示する機能を通じて、ソーシャルメディアとプロンプトエンジニアリングを融合させた戦略を採用しています。この戦略は、集団学習を促進するだけでなく、現実世界の例を通じてAIの仕組みを解明する役割も果たします。
Meta社はまた、新しいLlama APIを発表しました。これは、オープンウェイトモデルを活用した推論とエンドツーエンドの微調整を可能にするターンキープラットフォームであり、カスタマイズにも対応しています。開発者が独自のチューニングを施したLlamaモデルをダウンロードし、オンプレミスまたは代替クラウドインフラストラクチャに展開できるようにすることで、同社は「囲い込み型」のアプローチから脱却し、オープンソースイノベーションの理念にさらに注力しています。 この新たな柔軟性により、データ主権や最小遅延保証、あるいは特殊なハードウェア構成を必要とする企業においても導入が加速し、大規模言語モデルサービスの市場規模が拡大する可能性があります。
LlamaAPIに高速推論を提供するために、Meta社はGroq(グロック)社およびCerebras(セレブラス)社とも提携を結んでいます。両社ともこれまでは主に小規模なパートナーと取引したり、自社でサービスの提供を行なってきましたが、今回初めてハイパースケーラーと提携することになります。Meta社は、両社のカスタムシリコンアーキテクチャを新しいAPIに統合することで、ユーザー向けに超低遅延推論を実現するだけでなく、最先端の外部機能を統合するという意欲を示しています。投資家にとって、このパートナーシップの枠組みは、将来のAIワークロードの多様な性能ニーズを満たすために、専門的なハードウェアとソフトウェアの基盤を構築するという、Meta社の柔軟でオープンなアプローチが持つ戦略的価値を強調するものです。
2. TempusのLoop、AI駆動のデータとオルガノイドでR&D-as-a-Serviceサービスを変革
By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst
Tempus(テンパス) AIは、膨大なゲノムデータと高度なAI、および生物学的モデリングを組み合わせることで創薬プロセスを変革し、製薬企業やバイオテクノロジー企業にサービスを提供する独自のビジネスモデルを構築しています。同社はゲノミクス事業を通じて患者データを収集・精製し、保険支払者と協力して豊富なデータリポジトリを構築しています。そして、そのリアルワールドデータ(RWD)は製薬会社にライセンス供与され、医薬品開発に役立つ貴重な知見を提供しています。
同じデータに基づいて、Tempus社は、他の製薬会社が自社の社内データを用いてカスタマイズできる基礎AIモデルを構築しています。Tempus社の「Loop(ループ)」プラットフォーム[2]により、製薬会社は患者に適合したオルガノイド(従来の動物モデルよりもヒトのがん生物学的特性をより正確に再現する、実験室で培養された腫瘍モデル)を用いて、自社の知見を検証することができます。この新しいプロセスは、拡張性とコスト効率に優れ、実際の患者データと整合しています。製薬会社は、基礎モデルから得られた知見をオルガノイドにマッピングすることで、前臨床試験に向けた創薬ターゲットを迅速に特定し、検証することができます。
Loopプラットフォームを通じて、 Tempus社は製薬企業が知見をカスタマイズし、検証できるようにするだけでなく、ヒット化合物の特定からリード化合物の最適化、前臨床試験での検証に至るまで、創薬プロセスの高度化を支援しています。Tempusは、基盤モデルへのアクセス、カスタマイズ機能、ターゲット検証サービスに対して課金することで、これらのプロセスを収益化し、継続的な収益源を確保しながら、自社のプラットフォームを改良し、データ機能を拡張しています。
AI、生物学的モデル、そしてデータを統合したこの新しいアプローチは、シームレスでエンドツーエンドのソリューションを提供し、製薬企業やバイオテクノロジー企業が研究サービスを委託している従来のCRO(医薬品開発業務受託機関)の在り方を変革する可能性があります。製薬企業はこのプラットフォームと直接連携することで、より関連性の高いデータに基づく知見へのアクセスを獲得し、創薬を加速させ、従来のCROサービスへの依存度を減らし、Tempus社を創薬の再構築における主要なプレーヤーとして位置づけています。
3. ARK InvestによるオープンソースのSpaceX評価モデルが完成間近
By Autonomous Technology & Robotics Team | @ARKInvest
Daniel Maguire, ACA & Sam Korus
ARKの自動運転テクノロジー/ロボティクス分野チームは、Mach33社と協働し[3]、オープンソースのSpaceX評価モデルを完成させて、数週間以内に公開する予定です。それまでの間、モデルのロジックを図式化したものを以下のグラフでご確認ください。
出所:ARK Investment Management LLC、2025年。このARKの分析は、2025年5月2日時点の様々な外部データに基づいており、リクエストに応じて提供することが可能です。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、予測は本質的に限定的であり、依拠することはできません。
出所:ARK Investment Management LLC、2025年。このARKの分析は、2025年5月2日時点の様々な外部データに基づいており、リクエストに応じて提供することが可能です。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、予測は本質的に限定的であり、依拠することはできません。
分析的には、このモデルはフライホイールのように機能します。SpaceX社は現金から始まり、ロケットと衛星を製造し、軌道帯域幅を確保し、Starlink(スターリンク)の顧客を獲得し、その結果得られた現金を再投資します。このサイクルが続くにつれ、資金は徐々に火星開発へと流れ込み、最終的にスターリンク衛星群が完成します。その時点で、SpaceXは火星に「オールイン」すると考えられます。火星行きの各ロケットには、Optimus(オプティマス)型ヒューマノイドロボットと資材が組み合わされています。Optimusのコストが低下し、生産性が時間とともに向上するにつれて、SpaceXは火星の「帳簿価格」を積み上げていきます。
ARKは、ライトの法則[4]を適用して、このプロセス全体におけるさまざまなコスト低下をモデル化しています。興味深いことに、衛星の性能(Gbps/kg)は最も感度の高い入力値であり、収益創出と設備投資の両方に直接影響を与え、帯域幅展開の効率とコストを左右します。
Starlink V1からStarlink V2 Mini Optimizedまで、衛星の性能はライトの法則の学習曲線をたどってきました。それにもかかわらず、その軌跡は、おそらくSpaceX社自身からの情報のため、多くのオンライン討論の対象となっています。SpaceX社は、例えば、質量が約2,000kgの次世代衛星と、別の資料で1Tbpsの帯域幅を持つ将来の衛星について、連邦通信委員会(FCC)への提出書類を公表しています。これら2つの仕様が同じ衛星に適用された場合、性能の飛躍的な向上は、下のグラフの赤と黄色の点で示されているように、非常に大きなものとなります。しかし、当社のリサーチによると、この2つの資料はおそらく異なる衛星を指していることが示唆されています。もしそうであれば、1Tbpsの衛星は、下のグラフの緑の点で示されているように、ライトの法則に従うことになります。
出所:ARK Investment Management LLC、2025年。Starlink 2024年および米国連邦通信委員会2023年のデータに基づく[5]。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、予測には本質的に限界があり、依拠することはできません。
4. Adaptive BiotechnologiesのMRD検査が、 臨床試験と精密医療の改善への道を開く
By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst
先週、Adaptive Biotechnologies(アダプティブ・バイオテクノロジーズ)社[6]は、特に液状がんを対象とした微小残存病変(MRD)検査分野での同社のリーダーシップを強化する記録的な数の検査を含む、好調な四半期決算を発表しました。最近、米国食品医薬品局(FDA) [7]から承認されたAdaptive社のclonoSEQ検査は、多発性骨髄腫の臨床試験における主要評価項目となっています。
ClonoSEQは、臨床試験において患者が特定の治療法に反応する、あるいは反応しない理由を研究者がより明確に把握できるようにする重要な品質管理(QC)ツールです。少数のマーカーに依存する従来のエンドポイントとは異なり、clonoSEQはより包括的な見解を提供し、臨床試験の正確性と予測力を高めます。
MRD検査が臨床に統合されるにつれ、clonoSEQは臨床医が治療に対する患者の反応をリアルタイムでモニタリングすることを可能にします。臨床試験と同じ技術を臨床現場で使用することにより、医師は様々な治療にどのように反応するかを比較し、治療効果をより正確に理解し、治療を調整することができます。
臨床試験の成功率向上、リアルタイムの患者モニタリング、そして個別化治療が強化され、Adaptive社のような企業にとって強固なデータによる参入障壁が形成されつつあります。リキッドバイオプシー技術が液状がんから始まり、やがては固形がんまで普及するにつれて、生成されるデータは治療戦略の精度向上に寄与し、疾患の進行に関する前例のない洞察をもたらすことが期待されます。Adaptive社は、研究と患者ケアの両分野でリーダーとしての確固たる地位を築いていると言えるでしょう。
[1] Meta. 2025. “Introducing the Meta AI App: A New Way to Access Your AI Assistant.”
[2] Tempus AI. 2025. “Tempus Introduces Loop, an AI-Powered Target Discovery and Validation Platform.”[3] Mach33は宇宙産業に特化したオルタナティブ・アセット・マネージャー。
[4] ライトの法則とは、生産台数が累積で2倍になるごとに、コストは一定の割合で低下するというものである。 Winton, B. 2019. “Moore’s Law Isn’t Dead: It’s Wrong—Long Live Wright’s Law.” ARK Investment Management LLC.参照。
[5] Starlink. 2024. “Internet from Space for Humans on Earth. 2024 Progress Report.” U.S. Federal Communications Commission. 2023. “SPACE EXPLORATION HOLDINGS, LLC For Modification of Authorization for the SpaceX Gen2 NGSO Satellite System to Add a Supplemental Coverage from Space System.”
[6] Adaptive. 2025. “Adaptive Biotechnologies Reports First Quarter 2025 Financial Results.”
[7] U.S. Food and Drug Administration. 2024. “Oncologic Drugs Advisory Committee (ODAC) Meeting April 12, 2024, Drug Topic: Use of Minimal Residual Disease (MRD) as an Endpoint in Multiple Myeloma Clinical Trials.”
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