By ARK Invest

本レポートは、2025512 ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #462」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. Apple社のApp Storeポリシーに一石を投じる米国連邦地方裁判所の判決

By Nick Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager

 

2025430日、米国連邦地方裁判所のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャース判事は、Apple社が2021年の差止命令に故意に違反し、開発者がユーザーを代替的な決済手段へ誘導することを制限したうえで、同社のアプリ・エコシステム外で行なわれた購入に対して27%の手数料を課していたとの判決を下しました。

本判決により、Apple社は以下の行為を禁じられました[1]  

  • アプリ外で行なわれた購入に対して、いかなる手数料やコミッションを課すこと。
  • 開発者による外部購入用リンクのスタイル、書式設定、または配置を制限すること。
  • ボタンやその他の行動喚起(コール・トゥ・アクション)の使用を妨げる、または制限すること。
  • ユーザーがアプリを離れて外部サイトに移動する選択をすることに干渉すること(ただし、第三者サイトへ誘導される旨を中立的に通知するメッセージは許容される)。

これを受けてSpotifyは、米国のユーザーが価格情報を閲覧し、Appleの手数料を回避して外部決済リンクへアクセスできるようにするiOSアプリのアップデートを速やかに申請しました[2]。そして、Apple社はApp Storeポリシーにおける重要な方針転換として、このアップデートを承認しました。

Apple社は差止命令に従いつつも、裁判所が命じた変更の停止を求める緊急申し立てを行ないました。同社は、この判決が自社のビジネスモデルに「重大かつ回復不能な損害」をもたらすおそれがあると主張しています。また、Apple社はApp Store運営に対する自社の管理権限を維持するため、判決を不服として控訴しています。

同時に、Epic Games社の最高経営責任者(CEO)であるティム・スウィーニー氏は、Fortniteを米国のiOS App Storeに再び投入する計画を発表し、本判決がデジタル商取引および開発者の権利に及ぼす広範な影響を強調しました。

ロジャース判事の判決は、App Storeのエコシステムに対して競争と透明性の向上を強いるものであり、開発者と消費者の双方にとって、デジタル市場の構造を再編する可能性を秘めています。

 

2. Waymoが自動運転車工場を公開

By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Analyst

 

先週、Waymo社は米アリゾナ州フェニックス都市圏に自動運転車の新工場を開設したことを発表し、同社の車両数が昨年6月以降、約700台から約1,500台へと倍増したことを明らかにしました[3]。この新施設では、今年中にZeekr RT車両への搭載を皮切りに、第6世代の自動運転技術「Waymo Driver」の導入が進められる予定であり、2026年までに完全自動運転仕様のJaguar I-PACEを約2,000台生産する計画です。さらに、工場の自動化およびその他の生産効率の向上により、同社は最大稼働時には年間で数万台規模の完全自動運転車を製造できると見込んでいます[4]

参考までに、Tesla社の現在の生産能力は、Cybercab(量産開始は来年を予定)を除いて、週あたり約45,000台に達しています[5]。当社のリサーチによると、大規模生産体制においては、LiDARやその他の不要なハードウェアを用いないことで、Tesla1マイルあたりのコストはWaymoと比較して3040%低く抑えられる可能性があります。これは、Teslaが垂直統合型の製造体制を採用していることによるものです(下図参照)。

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注:「初期展開」の想定では、1人のリモートオペレーターに対して10台の車両を割り当て、稼働率は現在のオンデマンド配車サービスと同程度としています。「本格展開」では、1人のリモートオペレーターあたり100台の車両を管理し、自動運転における稼働率の向上を前提としています。出所:ARK Investment Management LLC2025年)。本分析は、20241231日時点でのさまざまな外部データソースに基づいており、ご要望に応じて情報の提供が可能です。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買や保有に関する投資助言や推奨を構成するものではありません。また、過去の実績は将来の成果を保証するものではなく、予測には本質的な限界があり、その正確性を保証することはできません。

 

Tesla社は、膨大なデータとコスト面での優位性を背景に、他の競合企業よりも迅速かつ効率的にスケール展開できると見込まれます。今後も、Waymo社の進捗状況および来月予定されているTeslaのロボタクシーのローンチに注目してまいります。2025年は、まさにロボタクシー元年となることが明らかになりつつあります。

 

3. OpenAI、「バイブコーディング」の潮流を見据えWindsurf社を買収

By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet

 

報道によれば、OpenAIAIネイティブな開発プラットフォームであるWindsurf(ウィンドサーフ)社を30億米ドルで買収することで合意したとされています[6]。事実であれば、これは同社にとって初の大規模な買収となり、「agentic coding(エージェンティック・コーディング)」分野への進出を加速させるものと見られます。

20229月にMicrosoftGitHub Copilotを用いて、従来のコーディングの半分の時間でタスクを完了できることを実証して以来[7]、ソフトウェア開発は生成AIの最も注目すべき活用事例の一つとなっています。それ以降、コーディングアシスタントはより「知的」に、より高機能かつ自律的になり、エンドツーエンドのコーディング作業を完遂したり、単一のプロンプトで完全なアプリケーションを構築することさえ可能になっています。

OpenAIによるWindsurf社の買収は、自然言語プロンプトを用いた迅速なコーディング、いわゆる「バイブコーディング」が急速に広がるタイミングと重なっています。特に、初めて新しいアプリケーションを作成する経験の浅い知識労働者の間でこの動きが顕著です。Windsurf社はAIネイティブコーディング分野の主要なプレーヤーの一つであり、その競合にはCursor(カーサー)社とReplit(リプリット)社が挙げられます。両社は最近、それぞれ90億米ドル[8]30億米ドル[9]の評価額で資金調達ラウンドを実施しました。

明らかに、OpenAIは新たなデータ源やユーザーフィードバックを活用してコアモデルの改良を図り、アプリケーション層における垂直統合を加速させることを目指しています。 AIシステム自体の改良を目的とした自律的なソフトウェア開発は、人工超知能(ASI)への道のりにおける重要な一歩[10]となり得るものであり、人間の進歩の速度を超えてモデルの改善を加速させる可能性があります。

 

4. すべての道はFDAの再構築につながる

By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst

 

米国食品医薬品局(FDA)は、データ駆動型で迅速かつ厳格な新時代へと突入しています。新たに生物製剤評価研究センター(CBER)の所長に就任したヴィナット・プラサド博士は、反骨精神と科学的な厳密さで知られており[11]、同機関はこれまでの受動的な監督から、業界との積極的な連携へと舵を切っています。その目的は、単に量を求めるのではなく、より良質な医療ソリューションを要求することで、患者を最優先に据えた真に意義ある革新をもたらすことにあります。

 一方で、FDAは初の最高AI責任者(Chief AI Officer)を任命することで、組織内部の変革への強い意志を示しています。既に実施された最初の生成AIパイロットテストでは、規制文書の審査期間を3日間からわずか6分に短縮し[12]、劇的に効率化された未来の一端を垣間見せました。FDAの目標は、6月末までに生成AIを全ての部門に統合することです[13]

これらの取り組みにより、FDAは単なる対症療法的医療ではなく、治癒を目指す医療の推進者として再定義されることが期待されています。そうなれば、結果として、承認プロセスの迅速化、標準化の推進、そして患者に影響を与える革新に対するより高い基準の確立という基盤が築かれるでしょう。,

 

 

 

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[1] Siddiqui, A. 2025. “Apple dealt an Epic blow over 'Apple Tax,' paving the way for Fortnite to return on iOS.” Android Authority.

[2] Capoot, A. 2025. “Apple clears Spotify update under new rules allowing purchases within apps.” CNBC.

[3] National Highway Traffic Safety Administration. 2024. “Part 573 Safety Recall Report 24E-049.”

[4] Waymo. 2025. “Scaling our fleet through U.S. manufacturing.”

[5] Tesla. 2025. “Q1 2025 Update.”

[6] Roof, K. and R. Metz. 2025. “OpenAI Reaches Agreement to Buy Startup Windsurf for $3 Billion.”

[7] Gao, Ya G. & GitHub Customer Research. 2024. “The Enterprise Impact of GitHub Copilot.” GitHub.

[8] Banjeree, U. 2025. “Cursor Creator Anysphere Hits $9 Billion Valuation with $900 Million Raise.” AIM Research.

[9] Tan, G. and Gaffhary, S. 2025. “’Vibecoding’ Leader Replit in Talks for $3 Billion Valuation.” Bloomberg.

[10] Kokotajlo, D. et al. 2025. “AI 2027.” AI 2027.

[11] STAT Staff. 2025. “Vinay Prasad, in his own words, outlines the philosophy he’ll bring to the FDA.” STAT.

[12] U.S. Food and Drug Administration. 2025. “FDA Commissioner Makary sits down for a conversation…” X.

[13] U.S. Food and Drug Administration. 2025. “FDA Announces Completion of First AI-Assisted Scientific Review Pilot and Aggressive Agency-Wide AI Rollout Timeline.”

 

 

 

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