By ARK Invest

本レポートは、202563ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #465」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. イーロン・マスクが火星計画を発表する中、ARKはオープンソースのSpaceXモデルを最終調整中

By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Analyst

 

先週、SpaceX社は「Starship Flight Test 9」において再利用ブースターの打ち上げに成功し、大きな節目を迎えました。ブースターは最終的に RUD(急速かつ予期せぬ分解)という結果に終わり、Starshipもミッションを完全には達成できませんでしたが、この試験によって得られた重要なデータは、Starshipの迅速な再利用を実現するうえで大きな助けとなるはずです[1]。その直後、イーロン・マスク氏は SpaceX の「Game Plan(行動計画)」を発表し、StarshipOptimus(オプティマス)が火星の植民を可能にする鍵となる存在であることを強調しました。下の図はその構想を示しています[2]

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出所: Musk 2025 [3] 本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。

 

当社のリサーチによれば、マスク氏の野心的なビジョンはデータに基づいていると考えられます。Mach33(マッハ33:主に宇宙関連のスタートアップ企業や技術開発を支援する育成プログラム)と連携しながら、ARKの自律型テクノロジーおよびロボティクスチームは、マスク氏が思い描く未来を予測するオープンソースの SpaceXモデルの最終調整を進めています。このモデルでは、SpaceX社がいかにして宇宙旅行を変革し、火星の植民を実現し、地球外に広がる膨大な経済的可能性を切り開くかについて、詳細に示す予定です。ぜひ今後の発表にご注目ください。

 

2. データに裏打ちされたアルゴリズム診断が医療を進化させる

By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst

 

先週、Guardant Health(ガーダント・ヘルス)社は、同社の Guardant 360® Liquid検査において大幅な機能拡張を発表しました。これにより、バイオマーカーの特定やがんのサブタイプ分類における能力が飛躍的に向上しています。既存のゲノムデータと高度なAIを活用することで、こうしたアルゴリズム診断は、がん専門医が患者に最適な治療計画を立てる支援となるはずです[4]。同様に、最近 Science誌でも紹介されたIllumina(イルミナ)社の Promoter(プロモーター)AIは、AIを用いて、これまで検出が困難だった希少疾患の遺伝的変異を特定し、診断精度と治療成績の向上を目指しています[5]IlluminaTempus(テンパス)、Veracyte(ヴェラサイト)などの企業は、高度なアルゴリズムとマルチオミクスデータを活用し、医療診断の革新を進めています。

アルゴリズム診断は、先進的な人工知能、ゲノム解析、そしてマルチオミクスデータを駆使して、疾患の特定と管理を行ないます。従来のより受動的で汎用品化された診断手法とは異なり、アルゴリズム診断はデータを継続的に分析し、早期介入や個別化医療を実現します。

このモデルにおいては、データの価値が中核をなします。ゲノムやマルチオミクスのデータは、網羅的かつ多次元的で、継続的に更新されるため、そこから得られる実用的なインサイト(洞察)の価値は極めて大きいと考えられます。

技術によるイノベーションは、医療システムを高コストかつ対症療法的なものから、効率的・予測的・予防的なものへと転換する後押しとなるはずです。こうした重要な転換点を活かし、英国の国民保健サービス(NHS)は、Guardant Health社のリキッドバイオプシーによるがん検査を、対象となるすべての患者に提供する世界初の医療システムとなる予定です。

1960年代の宇宙開発競争時代に、大胆なリーダーシップが政策立案者、規制当局、産業界を結集させたように、医療の変革にも同様の協働が求められます。医療分野のステークホルダーは、アルゴリズム診断の発展を加速させるために足並みをそろえ、患者と社会全体に利益をもたらす、先制的かつ価値主導型の医療システムを築いていく必要があります。

 

3. ビットコインを取り入れた企業の財務戦略が引き続き効果を発揮

By David Puell | @dpuellARK
Research Trading Analyst/Associate Portfolio Manager, Digital Assets

 

2020年、MicroStrategyMSTR:マイクロストラテジー)社は 21,454BTC を取得し、ビットコインを企業の財務資産として活用する「ビットコイン財務戦略モデル」を初めて導入しました。それ以来、MSTRの株価は約2,800%上昇しています。同社は現在、ビットコインの総供給量の約2.7%にあたる58BTC超を保有しており、保有資産の純資産価値(NAV)に対して約1.6倍のプレミアムで取引されています。

「模倣は最大の賛辞」と言われるように、同様の戦略を取る企業が続いています。Cantor Fitzgerald(キャントール・フィッツジェラルド)、Tether(テザー)、Bitfinex(ビットフィネックス)、SoftBankの支援を受け、ジャック・マラーズ 氏は最近、バランスシート上に42,000BTCを有するXXI Capital(トゥエンティーワン・キャピタル)[6]を設立しました。これにより、XXI Capitalは上場企業としてビットコイン保有量で世界トップ3に入る規模となっています。また、Kindly MD との合併を経た医療と暗号資産の統合事業体であるNakamoto Holdings[7]は、同様の戦略を推進するために71,000万米ドルを調達しました。GameStop(ゲームストップ)社やTrump Media(トランプ・メディア)社も類似の計画を発表しています。 

このアイデアは、ビットコイン以外にも広がりを見せています。スポーツベッティング関連企業のSharpLink(シャープリンク)社は、Ethereum(イーサリアム)を企業財務資産として組み入れるため、42,500万米ドルの資金調達に成功し[8]ConsenSys(コンセンシス)創業者のジョセフ・ルービン氏を取締役に迎えました。また、カナダの SOL Strategies(ソル・ストラテジーズ)は、Solana(ソラナ)保有を拡大するために、約10億米ドル規模の転換社債の発行を申請しています[9]

BitcoinTreasuries.net によると、現在、上場企業によるビットコイン財務戦略の事例は116件に上り[10]、年初の74件から50%以上増加しています。530日時点で、これらの企業が保有するビットコインの総価値は、およそ808,000BTC、金額ベースで約550億米ドルから860億米ドルへと、56%上昇しています。

ただし、レバレッジ(借入)にはリスクも伴います。現在は「Strategy」に社名変更したMicroStrategy社は、ビットコインの購入資金として、すでに60億米ドル以上の転換社債を発行[11]しており、今後さらに180億米ドル分の発行も予定しています。ビットコイン価格(BTC)が、1株あたり672米ドル[12]から2,043米ドル[13]に設定された各種転換価格を下回ると、利払い負担が増加し、株式の希薄化が進む可能性があります。一方で、保有資産のNAVを大きく上回る株価で取引されている企業は、新たな株式発行によって資金調達し、ビットコインを買い増すことが可能です。しかし、価格が急落すれば、保有BTCの売却を余儀なくされ、相場の下押し圧力を強めることになります。

現時点では、市場はビットコインを積極的に取り入れている企業財務戦略に好意的です。ただし、この戦略の長期的な成功は、ビットコインの価格変動性、流動性、市場サイクル、そして長期的な価格推移に大きく依存しています。

 

 

 

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[1] SpaceX. 2025. “Starship’s Ninth Test Flight.”

[2] SpaceX. 2025. “The Road to Making Life Multiplanetary.” X.

[3] 画像出典: Musk, E. 2025. “Starship to Mars.” X.

[4] Guardant. 2025. “Guardant Health Introduces Nearly a Dozen Groundbreaking Smart Liquid Biopsy Applications for Guardant360 Liquid Test.”

[5] JAGANATHAN, K. et al. 2025. “Predicting expression-altering promoter mutations with deep learning.” Science.

[6] Cantor. 2025. Tether, SoftBank Group, and Jack Mallers Launch Twenty One, a Bitcoin-native Company, Through a Business Combination With Cantor Equity Partners.”

[7] Zmudzinski, A. 2025. “Nakamoto Holdings merges with KindlyMD to build Bitcoin treasury.” Cointelegraph.

[8] Siddiq, S. 2025. “SharpLink Secures $425M Investment, Will Hold ETH as Primary Treasury Asset.” Yahoo Finance.

[9] Malwa, S. 2025. “Solana Scores Twin Institutional Wins With $1B Raise and First Public Liquid Staking Strategy.” Coin Desk.

[10] Bitcoin Treasuries.net. 2025. “BTC in Treasuries. Entities Holding BTC.”

[11] Carreras, T. et al. 2024. “How MicroStrategy and Others Are Taking on Billions in Debt to Buy More Bitcoin.”

[12] Strategy. 2024. “MicroStrategy Completes $3 Billion Offering of Convertible Senior Notes Due 2029 at 0% Coupon and 55% Conversion Premium.”

[13] BusinessWire. 2024. “MicroStrategy Completes $800 Million Offering of 2.25% Convertible Senior Notes Due 2032.”

 

 

 

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