By ARK Invest

本レポートは、20251222日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #492」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 予測市場におけるスーパーサイクルに備えつつあるRobinhood

By Varshika Prasanna | @varshikaARK
Research Associate

 

先週、Robinhood(ロビンフッド)は、今年4回目となる主要プロダクトイベント「YES/NO」を開催し、「Cortex AI(コーテックス・エーアイ)」および予測市場機能の大幅なアップグレードを発表しました[1]Robinhoodのエコシステム全体にまたがる完全自律型インターフェースとして構想されたCortex AIは、ポジションを分析し、洞察を提示し、取引を実行することで投資プロセスの摩擦を取り除き、金融市場と関わる消費者向けのオペレーティングシステムになることを目指しています。

例えば、Cortex AIPortfolio Digests(ポートフォリオ・ダイジェスト)を支えています。これは、各顧客のポートフォリオに合わせて市場動向を洞察に落とし込む、パーソナライズされたAI生成サマリーです。また別の例として、Robinhoodの予測市場は、アクティブトレーダー向けのLegend(レジェンド)デスクトップでも利用可能となり、ユーザーは(まずはスポーツから)定型またはカスタムの組み合わせを作成できるほか、スポーツ予測市場のトレンドを追跡するニュースレターScoreboard(スコアボード)を閲覧できるようになりました。

私たちのリサーチでは、予測市場は、機関投資家の世界におけるデリバティブや先物と同様に、現実世界の結果に直接エクスポージャーを持てる強力な個人投資家向け投資ツールになりつつあると考えています。ブラッド・テネフCEOが示唆するように、Robinhoodは予測市場におけるスーパーサイクルの初期段階にあります。従来のデリバティブや先物データよりも消費者にとって使いやすいインターフェースを備えることで、予測市場は本格的な普及の入り口に立っている可能性があります。

予測契約は多様な分野に広がると見られますが、とりわけ金融、経済、政治といった分野において、合意形成に基づく前提に対する確率を価格として示すリアルタイムのシグナルを提供する点で、最も大きな破壊力を持つ可能性があります。現在、Robinhoodで最も成長の速いプロダクトラインである予測市場は、2025年末までに年間経常収益(ARR)約3億米ドルに達する見通しです[2]。さらに、Kalshi(カルシ)との提携により、Robinhoodは過去1年間で主要競合であるPolymarket(ポリマーケット)から意味のあるシェアを獲得してきました(次の図表参照)。

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注:*Robinhoodの月次取引量は、経営陣のコメントおよび経営陣が提供した累積推計に基づく推定値。出所:ARK Investment Management LLC, 202520251130日時点のThe Blockのデータに基づく[3]。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買や保有を推奨するものではありません。また、投資助言として解釈されるべきものではありません。過去の実績は将来の成果を示唆するものではありません。

 

Cortex AIと予測市場がRobinhoodの市場機会の中でどのように位置づけられているのかについては、ARKの最近のブログ記事「Robinhood: The First Financial Institution Built For The Internet」をご参照ください[4]

 

2. Waymoが新たな資金調達を進める中、Teslaは無人運転サービスの試験を開始

By Tasha Keeney, CFA & Daniel Maguire, ACA | @ARKInvest
Autonomous Technology & Robotics Team

 

先週の報道によると、Waymo(ウェイモ)は、約1,100億米ドルの評価額で約150億米ドルの資金調達に向けた協議を進めているとされています[5]。現在Waymoは、完全無人運転サービスを10都市で展開しており、過去1ヵ月で5都市を新たに追加しました[6]。地理的な拡大を加速させている一方で、Waymoの車両保有台数は数千台規模にとどまっており、サービスは自社の配車プラットフォームおよびUber(ウーバー)などのパートナーを通じて提供されています[7]

一方、Tesla(テスラ)は、ドライバーなしの車両の試験を進めており[8]LiDAR(ライダー)などの高コストなセンサーを使わず、カメラのみでAIを中核とするアプローチが完全自動運転への有効な道筋であることを示唆しています。現時点では、無人配車サービスの商業化においてTeslaWaymoに後れを取っていますが、スケール面では大きな優位性を持っています。路上を走行するWaymoの自動運転車が約3,000台であるのに対し[9]Teslaは前四半期だけで約50万台を製造しており、数百万台規模の既存車両が実世界の走行データを継続的に生成しています。

ARKの自動運転技術・ロボティクスリサーチによると、競争力のある価格で配車サービスをスケールさせる最初の自動運転プレイヤーが、市場の大部分を獲得すると考えられます。Waymoはすでに多くの都市で規制当局の承認を切り拓いており、Teslaのような他のプレイヤーが自動運転タクシー市場で競争するための道を整えてきました。私たちは、Waymoの今後の拡大計画について、さらなる情報が明らかになることを期待しています。

 

3. Coinbaseの「Everything Exchange」は、Robinhoodに本格的に挑む動きなのか?

By Lorenzo Valente | @LorenzoARK
Director of Research, Digital Assets

 

先週、Coinbase(コインベース)は、規制下にある暗号資産プラットフォームとしては過去最大級となる野心的なプロダクトアップデートを発表し、「Everything Exchange(エブリシング・エクスチェンジ)」を目指す取り組みを大きく前進させました[10]Coinbaseは一挙に、株式取引、予測市場、簡素化された先物取引、パーペチュアル先物、Solana(ソラナ)のDEX(分散型取引所)へのアクセス、グローバルなBase App(ベース・アプリ)、Coinbase Business(コインベース・ビジネス)、Coinbase Advisor(コインベース・アドバイザー)、そしてフルスタックの決済/ステーブルコイン基盤を、単一の消費者・開発者エコシステム上に統合します。 

米国の個人向けでは、Coinbaseは暗号資産に加えて株式やETF24/5124時間、週5日)で取引できるマルチアセットの証券取引プラットフォームへと進化します。同時に、Coinbaseは予測市場をメインアプリに追加し、当初はKalshi(カルシ)からフローを取り込むことで、ユーザーは選挙、スポーツ、マクロ指標などのイベント契約を、暗号資産、株式、現金と並行して取引できるようになります。先物やパーペチュアルの簡素化されたインターフェースにより、デリバティブ取引はスポット取引に近い感覚となり、さらにSolanaDEXとの統合によって、数百万に及ぶロングテールトークンをメインアプリ内で直接スワップできるようになります。これにより、CEX(中央集権型取引所)とDEXの流動性の境界は一段と曖昧になります。

重要な点として、Coinbaseはオンチェーン資本市場に向けた基盤整備も進めています。株式取引に加え、同社はCoinbase Tokenize(コインベース・トークナイズ)を発表しました。これは、RWAReal-World Assets:実世界資産)をトークン化するためのエンドツーエンドの機関投資家向けプラットフォームです。Tokenizeは、発行、カストディ、取引、コンプライアンスを一体化し、株式を皮切りに、従来資産をCoinbaseおよびBase上で完全にトークン化された形で存在させ、24時間365日取引しつつ、より広範な暗号資産エコシステムで運用できるようにします。

Coinbase Business(コインベース・ビジネス)は、企業やクリエイターを対象に、スタートアップやSMB(中小企業)向けのオンチェーン型の財務・決済スタックを提供します。これには、グローバル決済リンクや請求書、USDC[11]の利回り、そして個人向けと同等の取引体験が含まれます。現在140か国以上で利用可能なBase App(ベース・アプリ)は、トークンの発行や取引に加え、発見と取引を融合させたソーシャル型の「For You」フィードで投稿を表示する、オンチェーンの“エブリシング・アプリ”として機能します。また、メインアプリ内のAIアシスタントであるCoinbase Advisor(コインベース・アドバイザー)は、「分散の効いたポートフォリオを構築してほしい」といった自然言語の目標を、実行可能な投資行動へと変換することで、ユーザーの認知的負担をさらに軽減します。

最後に、Coinbaseは次世代のオンチェーン金融を支えるインフラ層になることを目指しています。同社の開発者向けプラットフォームは、カストディ、取引、決済に加え、組み込み型ステーブルコインウォレット、企業向けのカスタムブランド・ステーブルコイン、そしてx402(あらゆるウェブリクエストにステーブルコイン決済を組み込めるオープンスタンダード)までを網羅しています。これは、AIエージェントがインターネット上で自律的に取引するうえで重要な要素です。

暗号資産取引所としての成功を基盤に、Coinbaseは、あらゆる資産、決済レール、ユーザー(個人、機関、機械)が一ヵ所で交わる、垂直統合型の金融オペレーティングシステムへと進化しています。

 

 

 

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[1] Robinhood. 2025. “Robinhood unveils latest AI innovations and prediction markets features at Robinhood Presents: YES/NO.”
[2] Robinhood. 2025. “Robinhood Reports Third Quarter 2025 Results."
[3] The Block. 2025. “Polymarket and Kalshi Volume (Monthly)."
[4] Grous, N. and V. Prasanna. 2025. “Robinhood: The First Financial Institution Built For The Internet.” ARK Investment Management LLC.
[5] Elias, J. 2025. “Alphabet-owned Waymo in talks to raise $15 billion in funding.” CNBC.
[6] Dolgov, D. 2025. “Exponential scaling ongoing – @Waymo has officially doubled our fully autonomous cities in a matter of weeks…” X.
[7] Cunningham, M. 2025. “Waymo recalls more than 3,000 vehicles over faulty software following school bus violations.” CBS News.
[8] O’Kane, S. 2025. “Tesla starts testing robotaxis in Austin with no safety driver.” TechCrunch.
[9] U.S. Department of Transportation, National Traffic Safety Administration. 2025. “Part 573 Safety Recall Report.”
[10] Coinbase. 2025. “System Update: The future of finance is on Coinbase."
[11] USDCは、Circleが発行する、米ドルに連動(ペッグ)したステーブルコインです。

 

 

 

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