By ARK Invest
本レポートは、2026年3月30日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #504」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. イーロン・マスク氏、「Terafab」を発表―SpaceX、xAI、Teslaに影響
By Daniel Maguire, ACA & Tasha Keeney, CFA | @ARKInvest
Autonomous Tech & Robotics Team
先週、イーロン・マスク氏は、「Terafab(テラファブ)」と呼ばれる新たな構想を発表しました。これは完成時に年間1テラワット(TW)のAIチップを生産可能な施設であり、単一拠点としては現在世界で新たに利用可能な演算能力の約50倍に相当する規模となります。この施設は約1億平方フィート(約930万㎡)まで拡張可能とされており[1]、これはニューヨークのセントラルパークの約3倍の広さに相当します[2]。また、フル稼働時には約10ギガワット(GW)の電力を必要とし、これは大型原子炉約10基分に匹敵します[3]。マスク氏によれば、Terafabの生産量の約80%はTeslaが設計したチップで構成され、軌道上データセンター向けに使用される予定です。残りの約20%は、ロボタクシーネットワークやOptimusなどの地上用途に割り当てられます[4]。完成時期についての具体的な言及はありませんでしたが、非公式な報道では、SpaceXが今後数ヵ月のうちにIPO(新規株式公開)で750億米ドル超を調達する可能性が示唆されています[5]。
今回の動きは、Tesla、SpaceX、xAIの間で進行している技術融合を浮き彫りにしています。その中核的な制約はチップ供給にあります。マスク氏は既存の半導体メーカーに対し、生産能力の拡大を加速するよう強い圧力をかけていると考えられます。一方でTeslaは、チップ設計からパッケージングまでを一貫して内製化し、各工程を高速に反復する、前例のない規模の垂直統合型ファブの構築を構想しています。
ARKの調査によれば、地上におけるデータセンター拡張を制約してきた規制上の摩擦を回避する手段として、Starshipが軌道上データセンター実現の鍵を握ると考えられます。完全再使用がスケール段階で実現すれば、打ち上げコストは現在の約1,000米ドル/kgから約100米ドル/kgへと1桁低下する可能性があり、その結果、宇宙ベースの演算コストは地上の代替手段と比べて約25%低くなると試算されています(次の図を参照)。

注記:本内容は当該分野に関するARKの内部分析に基づくものです。
出所:ARK Investment Management LLC, 2026。SpaceX 2025a、SpaceX 2025b、Maguireほか(2025)[6] に基づく。加えて、一部情報はARK独自の分析によるものであり、複数の追加情報源を参照しています。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買または保有を推奨するものではありせん。過去の実績は将来の成果を示唆するものではありません。予測には限界があり、依拠すべきではありません。
Starshipの次回試験飛行(バージョン3の初飛行)は、今後数週間以内に予定されています[7]。SpaceXがロケットの完全再使用を目指す中で、その進展を引き続き注視していきます。これはコスト削減の実現と、軌道上データセンターのスケール化において極めて重要な要素となるためです。
2. Beamの遺伝子編集データとFDAの柔軟姿勢ー遺伝性疾患治療の実現確率が高まる
By Shea Wihlborg | @Shea_ARK
Research Analyst, Multiomics
先週、Beam Therapeutics(ビーム・セラピューティクス)は、α-1アンチトリプシン欠乏症(AATD)に対する単回投与の静脈内遺伝子編集療法に関する第1/2相試験の最新臨床データを発表しました。この疾患は遺伝子変異により、肝臓で異常に折りたたまれたタンパク質が生成・蓄積され、炎症や肝不全を引き起こす一方、肺も進行性の損傷を受けやすくなるものです[8]。単回投与によって体内で治療を行なうin vivo(生体内)遺伝子編集は、患者の細胞を体外に取り出して加工し再投与するex vivo(体外)編集と比べて利便性に優れています。後者では治療プロセス全体に1年を要する場合もあります。
Beamの治療では、単回投与後、機能的に正常なタンパク質が産生され(循環AATの94%)、有害な変異型タンパク質は84%減少しました。最大12ヵ月の追跡期間においてもこの効果は維持されています[9]。また、対象用量群の全患者で、肺損傷リスクの低減と関連する保護閾値を上回るAAT濃度が維持されました[10]。これらの結果は、単回投与で遺伝性疾患の根本原因に対処できる可能性を示す、説得力のある臨床エビデンスをさらに裏付けるものと考えられます。
臨床データに加え、規制面での進展も注目されます。U.S. Food and Drug Administration(FDA)からのフィードバックに基づき、BeamはAATのバイオマーカーを評価指標とする12ヵ月のデータに基づいた迅速承認経路を目指しており、2026年後半には約50名の追加患者を対象としたピボタル試験コホートの開始を予定しています[11]。
現在の標準治療と比較すると、単回の遺伝子編集療法の優位性がより明確になります。補充療法(血漿由来AATタンパク質を週1回生涯にわたり静脈投与する治療)は、年間10万米ドル超のコストがかかる一方で、AATDに関連する肝疾患には直接的に対処できません[12]。また、肺損傷の進行を遅らせる可能性はあるものの、肺機能の低下、増悪、生活の質の改善については明確な効果が示されていません[13]。これに対しBeamは、基礎となる遺伝子変異そのものを修正する治療を設計しており、肝臓における有害タンパク質の蓄積を減少させるとともに、肺を保護する機能的タンパク質の産生を回復させています[14]。
Beamの単回投与療法に対するFDAのバイオマーカーに基づく迅速承認への前向きな姿勢は、FDA長官であるMarty Makary氏の広範な方針とも整合しています。最近では、遺伝子治療における「もっともらしい作用機序(plausible mechanism)」に基づく承認経路が提案されるなど[15]、疾患の根本原因に働きかける治療に対して規制の柔軟性が高まっていることが示されています。
当社では、こうした科学的進展と規制面でのブレークスルーの収束は今後も続くと考えています。特にIntellia Therapeutics(インテリア・セラピューティクス)は、遺伝性血管性浮腫に対する単回投与のin vivo遺伝子編集療法について、今年中に第3相試験の主要データを公表する見込みであり、来年にも初のin vivo遺伝子編集療法としてFDA承認を取得する可能性があります[16]。in vivo遺伝子編集の臨床パイプラインが成熟するにつれて、疾患の遺伝的基盤を修正する治療を評価するための規制枠組みも進化していくと見られます。長年にわたり症状管理以上の治療を待ち続けてきた患者にとって、この規制の方向性は、ブレークスルーから臨床応用までの道のりを大きく短縮する可能性があります。
2. OpenAIの広告事業が初期段階で年率1億米ドル規模に到達
By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, AI and Cloud
OpenAIの広告パイロットは、開始から2ヵ月未満で年率1億米ドルの経常収益(ARR)を突破しました[17]。現在、600社以上の広告主と連携しており、ユーザー信頼指標に悪影響は確認されていないことから、広告とAIアシスタントはユーザー体験を損なうことなく共存できる可能性が示唆されています。
導入は意図的に慎重に進められています。広告はChatGPTの回答の下部に表示され、明確に広告であることが示されています。また、政治や健康といったセンシティブなテーマは対象外とされており、18歳未満のユーザーには広告は表示されません。さらに、対象となる無料ユーザーおよびChatGPT Goユーザーのうち、任意の日に広告が表示されるのは約20%にとどまっています。したがって、現在の収益規模は、プラットフォーム全体の潜在的な広告在庫のごく一部に基づくものです。現在、OpenAIはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドへの広告展開拡大を検討しています[18]。
広告は、週次アクティブユーザー9億人を抱えるChatGPTの収益化において重要な役割を果たすと考えられます。これらのユーザーの大半はサブスクリプションに課金していません。現時点では初期段階にあるものの、広告表示量、ターゲティング精度、地域展開の拡大に伴い、この収益源は急速に拡大する可能性があります。ARKの調査によれば、広告は最終的に消費者向けAIの収益化における最大の収益源となり、サブスクリプション収益を上回ると見込まれています。広告、サブスクリプション、コマースを含む消費者向けAIの収益化市場は、2030年までに総額9,000億米ドルに達すると予想されます[19]。
[1] Musk, E. 2026. “Yeah, 100M sq ft is the right order of magnitude…” X.
[2] Merritt, S. 2026. “Elon says 100 million sqft is the right order of magnitude…” X.
[3] Musk, E. 2026. “No, that’s just the little advanced technology fab…” X.
[4] Musk, E. 2026. “Formal announcement of the TERAFAB project…” X.
[5] Roof, K. and V. Pau. 2026. “SpaceX Aims to File for IPO as Soon as This Week.” The Information.
[6] SpaceX. 2025a. “Starship.” SpaceX. 2025b. “TO THE MOON AND BEYOND.” Maguire, D. et al. 2025. “ARK’s Expected Value For SpaceX In 2030: ~$2.5. Trillion Enterprise Value.” ARK Investment Management LLC.
[7] Musk, E. 2026. “Starship V3 first flight in about 4 weeks.” X.
[8] Beam Therapeutics. 2026. “Beam Therapeutics Announces Compelling Updated Clinical Data from the Ongoing Phase 1/2 Trial of BEAM-302 in Alpha-1 Antitrypsin Deficiency (AATD) to Support Advancement to Pivotal Development.”
[9] 同上
[10] 同上
[11] 同上。 Beam Therapeutics. 2026. “Beam Therapeutics Reports Fourth Quarter and Year-End 2025 Financial Results and Announces New Liver-Targeted Genetic Disease Program in Phenylketonuria (PKU).”も参照。
[12] Alpha-1 Foundation. 2024. “Statement of A1F to the FDA on the Need for New Therapies for Alpha-1.” See also: Sieluk, J. et al. 2019. “Costs of Medical Care Among Augmentation Therapy Users and Non-Users with Alpha-1 Antitrypsin Deficiency in the United States.” Chronic Obstr Pulm Dis.
[13] Rare Disease Advisor. 2025. “Alpha-1 Antitrypsin Deficiency Treatment.”
[14] Miravitlles, M. et al. 2023. “Nine controversial questions about augmentation therapy for alpha-1 antitrypsin deficiency: a viewpoint.” Eur Respir Rev.
[15] Prasad, V. et al. 2025. “A Plausible-Mechanism Pathway for Genetic Therapies.” N Engl J Med.
[16] Intellia Therapeutics. 2026. “Intellia Therapeutics Announces Fourth Quarter and Full-Year 2025 Financial Results and Business Updates.”
[17] Capoot, A. 2026. “OpenAI ads pilot tops $100 million in annualized revenue in under 2 months.” CNBC
[18] 同上
[19] ARK Investment Management LLC. 2026. “Big Ideas 2026.”
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