By ARK Invest

本レポートは、2026615日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #514」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. SpaceXAI、ついに上場

By Brett Winton | @wintonARK
Chief Futurist

 

大きな注目を集めていた新規株式公開(IPO)において、SpaceXAI(スペースエックスAI)は750億米ドル相当の新株を発行しました。これは史上最大のIPOとなります[1]。株式時価総額は2兆米ドルを超える水準まで上昇しており、過去の財務実績と比較すると極めて高い評価となっています。しかし投資家は、過去の業績ではなく、同社が将来的に実現し得る驚異的な投下資本利益率へ注目しています。

 

当社のリサーチによれば、打ち上げコストの大幅な低下を背景に、SpaceXAIは今後数年間で数万基規模のStarlink(スターリンク)衛星を軌道へ投入する体制を整えています。v3 Starlink衛星を搭載したStarship(スターシップ)1機当たりの通信帯域幅は、現在Falcon 9(ファルコン9)が打ち上げている衛星群の約20倍に達すると見込まれています。当社の分析では、年間200300回のStarship打ち上げが実現した場合、世界のインターネット接続環境を大きく変革し、2030年までに数千億米ドル規模の売上総利益を生み出す可能性があります。(下図参照)。

注:「COGS」は売上原価(Cost of Goods Sold)を示します。出所:ARK Investment Management LLC2026年)。SpaceXAIIPO目論見書および2026615日時点のARK Investの分析に基づく[2]。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言や特定証券の売買推奨を意図するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。予測には本質的な限界があります。

 

最初の100回程度の打ち上げでは、再利用可能なロケット技術、大型ロケット化、衛星製造効率の向上、顧客獲得効率の改善などによってコストが低下し、収益性は継続的に向上すると考えられます。追加される通信帯域幅の収益化は徐々に難しくなるため、売上成長率には一定の減速圧力がかかるものの、それを上回るペースでコスト効率化が進むとみています。その結果、100回を超えるStarshipによるStarlink衛星打ち上げでは、税引前のキャッシュ・オン・キャッシュ・リターンが10倍を超える可能性があります。

注:「ROIC」は投下資本利益率(Return on Invested Capital)、「Tbps」は毎秒1兆ビットを意味するデータ転送速度単位です。出所:ARK Investment Management LLC2026年)。SpaceXAIIPO目論見書および2026615日時点のARK Investの分析に基づく[3]。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言や特定証券の売買推奨を意図するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。予測には本質的な限界があります。

 

2035年までにStarlink市場だけを飽和させるために必要な全打ち上げを前提とした場合、当社の分析では、SpaceXAIは通信事業だけで年間約5,500億米ドルの売上高と約4,000億米ドルの税引前利益を生み出す可能性があります。また、その期間中の累積フリーキャッシュフローは1兆米ドルを超える可能性があります。しかも、この試算にはSpaceXAIAI事業による収益は一切含まれていません。

注:「R&D」は研究開発費(Research and Development)、「CAC」は顧客獲得コスト(Customer Acquisition Cost)、「SG&A」は販売費および一般管理費(Selling, General and Administrative Expenses)、「EBIT」は支払利息・税引前利益(Earnings Before Interest and Taxes)を示します。出所:ARK Investment Management LLC2026年)。SpaceXAIIPO目論見書および2026615日時点のARK Investの分析に基づく[4]。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言や特定証券の売買推奨を意図するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。予測には本質的な限界があります。

 

最近の発表によると、SpaceXAIAI事業は、当初予想よりもはるかに早い段階で黒字化する可能性があります。その背景には、Anthropic(アンソロピック)やGoogleとの間で締結された「インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス(IaaS)」契約があります。もっとも、これらの契約条件は将来的に変更または終了する可能性があります。平均的なベースで見ると、SpaceXAIColossus I (コロッサス I)およびColossus II (コロッサス II)データセンターのうちAnthropicへ貸し出している部分の建設に、1ギガワット(GW)当たり260億米ドルを投じました。一方でAnthropicは、その設備利用に対して年間換算で1GW当たり340億米ドルを支払っています。またGoogleは、SpaceXAIの演算能力へアクセスするため、1GW当たり540億米ドルを支払うことに同意しています[5]。今後、SpaceXAI1GW当たり投資額は増加する可能性がありますが、それでも極めて高い収益性を示唆しています。

注:売上高計算は契約条件に基づいており、将来的に変更または終了する可能性があります。出所:ARK Investment Management LLC2026年)。SpaceXAIIPO目論見書および2026615日時点のARK Investの分析に基づく[6]。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言や特定証券の売買推奨を意図するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。予測には本質的な限界があります。

 

AIソフトウェア分野でAnthropicOpenAIと競争できるかどうかについては懐疑的な見方もあります。しかし、今回の契約は、SpaceXAIAI開発競争の最前線を目指す過程で、自社インフラを十分に収益化できることを示しています。最終的には、軌道上AIサーバーによる演算能力とその低コスト性が、地上インフラ中心の競合他社との差別化要因になると考えられます。

当社は、SpaceXAIの上場は、宇宙で最も重要かつ魅力的な株式投資機会の一つの幕開けとなったと考えています。

 

2. Volvo、自動運転トラック事業を2027年初頭に開始へ

By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Analyst, Autonomous Technology & Robotics

 

先週開催されたCapital Markets Day(投資家向け説明会)において、Volvo Autonomous Solutions(ボルボ・オートノマス・ソリューションズ)は、自社トラックから安全運転員(セーフティドライバー)を撤廃し、2027年第1四半期から米国の高速道路で完全自動運転による運行を開始する計画を発表しました[7]。このトラックには、Aurora(オーロラ)が開発した自動運転システム「Aurora Driver」が搭載されます[8]Volvoは、2027年末までに300台を超える自動運転トラックを配備し、2028年には事業を本格拡大することを目指しています。また、今後5年以内に、自動運転事業の売上高を約30億米ドル規模へ成長させる計画です。

ARKのリサーチによれば、今後510年間で、大規模運用される自動運転電動トラックは、人間が運転するトラックと比較して、輸送コスト(トンマイル当たり)を約60%削減できる可能性があります。具体的には、現在の約0.07米ドルから約0.03米ドルまで低下し、鉄道輸送と競争可能なコスト水準になるとみています。同様に、自動運転物流全体(長距離トラック輸送、ドローン配送、自律走行ロボット配送)においてもコスト低下が進むと考えられます。その結果、配送頻度はさらに高まり、2030年までに年間約5,000億米ドル規模の新たな収益機会を創出する可能性があります。

出所:ARK Investment Management LLC2026年)。Emarketer2025年)、OECD Data Explorer2024年)、Pitney Bowes2024年)のデータに基づく。加えて、一部情報はARK独自の分析に基づいています。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言や特定証券の売買推奨を意図するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。予測には本質的な限界があります。

 

3. AnthropicFable 5Mythos 5AI能力の飛躍的向上を示すも政府が公開を制限

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Analyst, AI & Cloud

 

先週、AnthropicClaude Fable 5(クロード・フェイブル5)およびClaude Mythos 5(クロード・ミソス5)を発表しました[9]。これら2つのモデルは、同社のこれまでのフラッグシップモデルであるOpusシリーズを上回る性能を示しています。Fable 5Mythos 5は同じ基盤モデルを共有していますが、Anthropicはサイバーセキュリティ、生物学、化学、競合モデルの学習といった分野での悪用を防ぐための安全対策を組み込んだFable 5のみを一般公開しました。一方、制限のないMythos 5は、サイバーセキュリティ企業、政府機関、および一部の信頼されたパートナーに限定して提供されています。両モデルは、現在広く利用可能な大規模言語モデルと比較して、性能面で飛躍的な向上を示しています。

こうした性能向上は、先月未公開のOpenAIモデルでも確認されたように[10]、科学研究や数学研究におけるブレークスルーの可能性を広げるだけでなく、政府による介入がなければ、企業でのAI導入をさらに加速させていた可能性があります。AI評価機関であるModel Evaluation and Threat ResearchMETR)は、AIエージェントが人間の介入なしで完了できるタスクの長さを測定することで、モデル性能の進歩を評価しています。その指標は、人間の専門家が同じ作業を完了するのに必要な時間を基準としています[11]2024年末時点では、最先端モデルが自律的に完了できるタスクは、人間換算で約7分程度でした。しかし2025年末には、その水準は1時間6分へ拡大しました。この進歩が、OpenAIAnthropicにおける急速な利用拡大と年換算売上高(ARR)の成長を支える要因となりました。そしてMythos 5は、その限界をさらに押し広げました。プレビュー版モデルは、人間の専門家であれば3時間6分を要するタスクを自律的に完了できたとされています。もちろん、こうした初期ベンチマークは、政府が規制を緩和し、実際の業務環境で利用できるようになった際に検証される必要があります。しかし、性能向上が今後も指数関数的に続くのであれば、2025年に見られたのと同様に、AIの対象市場はさらに大きく拡大する可能性があります。

FableMythosは印象的な成果を示した一方で、AI導入においてコストはますます重要な判断材料となっています。AmazonMetaのような大手テクノロジー企業は、急増するトークン利用コストに対して利用制限を設け始めています[12]。もっとも、新世代モデルの価格は着実に低下しています。Anthropicは、わずか2ヵ月前に公開した同モデルのプレビュー版と比較して、MythosFableの価格を60%引き下げました[13]。それでもなお、新モデルの価格はOpus 4.8の約2倍であり、OpenAIGPT-5.5と比較してもほぼ2倍の水準です。政府が今後、開発者や企業によるFableおよびMythosの実運用テストを許可した場合、その優れた性能は特定の用途において十分にコストを正当化する可能性があります。一方で、より単純な用途については、従来モデルで十分なケースも多いでしょう。コストが今後も急速に低下し続けるとすれば、最先端モデルはより多くのユーザーが利用可能となり、さらに広く普及していく可能性が高いと考えられます。

 

4. ワクチンは「治療中心の医療」から「予防中心の 医療」への転換を促すのか

By Shea Wihlborg, PhD | @Shea_ARK
Research Analyst, Multiomics

 

先月下旬、Eli Lilly(イーライリリー)は、ワクチン開発企業であるCurevo(キュレボ)、LimmaTech Biologics(リマテック・バイオロジクス)、およびVaccine Company(ワクチン・カンパニー)の3社を、総額最大約38億米ドルで買収する契約を発表しました[14]。対象となるワクチンは、帯状疱疹、複数の薬剤耐性細菌、そしてEpstein-Barr virusEBウイルス:EBV)に関連するものです。Lillyは、急性感染症を予防することが、その後に発症し得る慢性疾患を治療するよりも大きな価値を持つ可能性に賭けているように見えます。

ワクチンは極めて強力な予防手段です。病原体の無害な成分や弱毒化した病原体を免疫系に提示することで、実際の病原体に将来さらされた際、それを認識して無力化できるよう免疫系を訓練します。小児期の定期予防接種は、多くの国で麻疹(はしか)、ポリオ、その他かつて一般的だった感染症をほぼ根絶しました。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、16歳までに接種した女性において、子宮頸がんの発症リスクを約80%低下させることが確認されています[15]

こうした実績があるにもかかわらず、ワクチンに対する社会的な評価は依然として一様ではありません。現代におけるワクチン忌避の一因は、1998年に発表された、麻疹・流行性耳下腺炎(おたふく風邪)・風疹(MMR)ワクチンと自閉症との関連を主張した論文にあります[16]。しかし、この論文はわずか12人の児童を対象としており、対照群も存在せず、患者データの改ざんや利益相反の未開示も含まれていました[17]。最終的に医学誌The Lancet(ランセット)は2010年、この論文を撤回しました[18]。それでもなお、その主張は現在まで広く残り続けています。その後、数百万人規模の児童を対象とした研究が複数行なわれましたが、ワクチンと自閉症との関連は確認されていません[19]

一方で、近年ますます無視できなくなっているのが、ワクチンが本来の感染症予防効果を超えた健康上の恩恵をもたらす可能性を示す研究結果です。例えば、帯状疱疹ワクチン接種者は、接種後67年間にわたり認知症を発症する確率が約1720%低いことが報告されています[20]。また、1,000万人以上の米軍関係者を追跡した別の長期研究では、EBV感染者は多発性硬化症を発症するリスクが32倍高いことが示されました[21]。この結果は、有効なEBVワクチンが多発性硬化症の多くの症例を予防できる可能性を示唆しています。

当社は、こうした研究成果が積み重なることで、ワクチンの価値評価そのものが変化する可能性があると考えています。もし1回の予防接種によって、急性感染症だけでなく、その後に発症する慢性疾患まで予防できるのであれば、予防医療の経済的価値は大きく高まります。一般的な病原体と慢性疾患との関連を示すエビデンスが今後さらに増えるにつれ、ワクチンはますます重要な役割を担うようになるでしょう。すなわち、病気が発症してから治療する「シックケア(Sickcare)」から、病気の発症そのものを防ぐ「ヘルスケア(Healthcare)」への転換を支える重要な手段になると考えています。

 

 

 

 

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[1] UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION. 2026. “From S-1. Space Exploration Technologies Corp. May 20, 2026.EXPLORATION

[2] 同上

[3] SpaceX. 2026. “Filed Pursuant to Rule 433 Registration File No. 333-296070. Free Writing Prospectus.”

[4] UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION. 2026. “From S-1. Space Exploration Technologies Corp. May 20, 2026.

[5] 同上

[6] 同上

[7] Volvo Group. 2026. “Capital Markets Day 2026.”

[8] Aurora. 2026. “Volvo Autonomous solutions Partnership update.” LinkedIn.

[9] Anthropic. 2026. “Claude Fable 5 and Claude Mythos 5.”

[10] OpenAI. 2026. “An OpenAI model has disproved a central conjecture in discrete geometry.”

[11] METR. 2025. “Measuring AI Ability to Complete Long Tasks.”

[12] The Financial Times. 2026. “Amazon scraps AI leaderboard to stop workers chasing usage scores.” Mann, J. 2026. “Tokenminimizing: Meta Moves to Curb Employee AI Usage as AI Costs Reach Billions.” The Information.も参照。

[13] Anthropic. 2026. “Project Glasswing.”

[14] Eli Lilly and Company. 2026. "Lilly announces three acquisitions to build infectious disease portfolio." PRNewswire.

[15] Henschke, N. et al. 2025. "Effects of human papillomavirus (HPV) vaccination programmes on community rates of HPV-related disease and harms from vaccination." Cochrane Database of Systematic Reviews.

[16] The Editors of The Lancet. 2010. “Retraction—Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children.” The Lancet. Godlee, F. et al. 2011. “Wakefield‘s article linking MMR vaccine and autism was fraudulent.” BMJ.も参照。

[17] 同上

[18] 同上

[19] Taylor, L.E. et al. 2014. “Vaccines are not associated with autism: An evidence-based meta-analysis of case-control and cohort studies.” Vaccine. John Hopkins Bloomberg School of Public Health. 2025. “Vaccines Do Not Cause Autism.” Johns Hopkins University. Time. 2018. “The Vaccine-Autism Myth Started 20 Years Ago. Here‘s Why It Endures Today.”も参照。

[20] Eyting, M. et al. 2025. “A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia.” Nature. Taquet, M. et al. 2024. “The recombinant shingles vaccine is associated with lower risk of dementia.” Nature Medicine.も参照。

[21] Bjornevik, K. et al. 2022. "Longitudinal analysis reveals high prevalence of Epstein-Barr virus associated with multiple sclerosis." Science.

 

 

 

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