By ARK Invest

本レポートは、2026629日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #515」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 予測市場は再び主流化しつつあるのか

By Nick Grous | @GrousARK
Director of Research, Consumer Internet and Fintech

 

予測市場の急成長は構造的なものなのでしょうか。それとも、一時的なカタリストによるものなのでしょうか。米国、カナダ、メキシコで共同開催されている2026 FIFA World Cupは、その最新の試金石となっています。615日に終了したグループステージ第1週に、予測市場の想定取引額[1]は過去最高となる130億米ドル、年率換算では約6,750億米ドルに達しました[2]。年初来では、より広範な市場の想定取引額は年率換算で約3,300億米ドルのペースにあり、2025年の710億米ドルから4倍以上に拡大しています。予測市場の初期段階では、2024年の米国大統領選挙が最初の急増を引き起こしました。そして現在は、World Cupが主なけん引役となっています。重要なのは、各イベントの終了後も取引額が段階的に切り上がっている点です。

このパターンは、プラットフォーム・ダイナミクスに関する当社のリサーチにも示唆を与えています。Kalshi(カルシ)は、2年前には市場シェアがほぼゼロだったにもかかわらず、現在では週次想定取引額の約68%を占めるまでに成長しました[3] その背景には、主に米国における規制遵守があります。一方、Polymarket(ポリマーケット)のシェアは2024年半ばの97%から約25%へと低下しており、既存企業であっても連続するイベントサイクルの中でシェアを失う可能性があること、そして次のイベントサイクルに必要なインフラを構築している企業ほどシェアを獲得しやすいことを示唆しています。

こうした見方を踏まえると、Meta(メタ)が予測市場に参入するタイミングは興味深いものがあります。New York Times(ニューヨーク・タイムズ)およびNational Public Radio(ナショナル・パブリック・ラジオ)によると[4] 、マーク・ザッカーバーグ氏は、金銭ではなくポイントを用いる独立型の予測市場アプリ「Arena」の構築をチームに任せています。2020年、Metaは「Forecast」という類似のサービスを展開しましたが、2年で終了しました。それは、米国大統領選挙サイクルとWorld Cupが、予測市場が単一イベントを超えて主流層の関心を喚起し、維持し得ることを示す前のことでした。Arenaが普及を加速させるのか、あるいはこのカテゴリーの有効性を裏付けることになるのかは、注目に値します。

当社は、予測市場の長期的な機会は非常に大きい可能性があると考えています。当社の最近の分析によれば[5]、中期的には、すなわち今後35年で、想定取引額は10倍超に拡大し、 5兆米ドル規模に達する可能性があります。当社の見解では、上振れ余地はスポーツからではなく、個人投資家が現実世界の結果に直接エクスポージャーを持つことを可能にする、金融、経済、政治関連の契約から生じる可能性が高いと考えています。

World CupArenaは、まさにその未来へとつながる動きです。基盤となるインフラが成熟し、機関投資家の参加が本格化すれば、将来的に金融デリバティブ市場の想定取引額が約900兆米ドルに達する可能性を踏まえると、この市場機会は極めて大きなものになり得るでしょう。

 

2. トランプ政権が新たなAIモデルへのアクセスを制限

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Analyst, AI & Cloud

 

今月、Anthropic(アンソロピック)はFable 5Mythos 5を一般公開しましたが、その公開期間はわずか3日間に限られました。米国政府は国家安全保障上の懸念を理由に輸出規制を発動し、米国内のAnthropicで勤務する者を含め、外国籍者によるアクセスを禁止したため、Anthropicは両モデルの公開を撤回せざるを得ませんでした[6] 例外として、銀行やサイバーセキュリティなどの業界における一部のパートナー向けに、プレビュー版のみが提供されました。

OpenAI(オープンAI)の次世代モデルも、次の対象となる可能性があります。報道によると、米連邦政府当局者はOpenAIに対し、GPT-5.6の公開を段階的に行なうよう求めており[7]、政府が顧客ごとに審査した少数のパートナーに先行アクセスを付与する形が検討されているようです。OpenAICEOであるサム・アルトマン氏は、その後数週間以内に、より広範な公開を実現することを望み、目指しています。

政府の理屈は、これらのモデルの能力が高まっていることに基づいています。フロンティアモデルは、企業、政府、重要インフラ全体に存在するソフトウェアの脆弱性を発見し、悪用できるほどの能力を備えるようになっています。これらのモデルを利用していない組織は、重大なリスクにさらされる可能性があり、それに応じた備えが必要です。

当社の見解では、アクセス制限は解決策ではありません。米国でアクセスを一時停止しても、オープンウェイトモデルの進歩を遅らせることにはなりません。特に、米国のクローズドなフロンティアモデルとの間に依然として大きな性能差があるものの、その差を急速に縮めようとしている中国の研究機関によるモデルの進展を止めることはできません。同時に、こうした制限は、モデル提供者からはユーザーからのフィードバックループの恩恵を奪い、企業からはそのフィードバックループに伴う生産性向上の機会を奪うことになります。

新たなモデルはリスクをもたらす可能性がある一方で、広範な導入は、防御側、すなわちホワイトハットに対し、攻撃者が脆弱性を悪用するよりも早く修正を行なう機会を与えます。AIは双方に力を与えます。防御側に早期アクセスを提供することは重要です。禁止措置は、特に世界の他の地域がほとんど、あるいはまったく規制のない中でモデル開発を進めている場合、進歩を妨げる傾向があります。むしろ規制当局は、新技術への広範なアクセスを可能にすることで、米国の研究機関によるモデルであれ、能力を高めつつあるオープンウェイトモデルであれ、それらを通じて企業や政府が敵対勢力に対抗できるよう備えることを支援できるはずです。

 

3. SpaceX、再突入機「Starfall」を打ち上げ

By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Analyst, Autonomous Technology & Robotics

 

宇宙から地球へ貨物を帰還させる手段は、これまで広く利用可能なものではありませんでした。しかし先週、SpaceXは、科学研究や宇宙空間での製造に向けて、微小重力環境への手頃で日常的なアクセスを可能にする再突入機Starfall(スターフォール)を打ち上げました[8]。円盤型の貨物専用カプセルであるStarfallは約1,000kgを搭載でき、これはSpaceXの有人飛行対応機であるCrew Dragonの約3,000kgと比較されます[9]Starfallは極秘裏に開発されていましたが、5月にFAA(米連邦航空局)の文書に登場し、「重要貨物を宇宙経由で迅速に地点間配送することを可能にする」ことを目標としているとされました[10]

このミッションはFalcon 9で行なわれましたが、上段の映像配信はありませんでした。これは、他の機密飛行でも見られる常套手段です。ARKの見解では、SpaceXは広大な獲得可能市場を有していることを踏まえると、影響力のある顧客なしに、このようなニッチな機体に取り組むことはないと考えられます。その顧客として最も可能性が高いのは、極超音速試験などを目的とする米国Department of Warかもしれません。とはいえ、月と火星で最初の醸造所となることを目指すテキサス州のクラフトビール醸造会社Starbase Brewery(スターベース・ブルワリー)は、醸造用酵母が宇宙環境にどのように適応するかを試験するペイロードをStarfallに搭載したことを明らかにしています[11]

これまで、Starfallのような貨物再突入機の打ち上げに成功していた企業はVarda Space(ヴァルダ・スペース)のみであり、同社はこれまでの6回すべてのミッションでSpaceXFalcon 9を活用してきました[12]ARKの見解では、Starfallは垂直統合の価値を浮き彫りにしています。その理由は、Blue Origin(ブルー・オリジン)の最近の発射台爆発を受けて打ち上げ能力のボトルネック[13]が生じていることだけでなく、SpaceX2028年後半または2029年初め以降のTransporter予約を受け付けていないとの報道もあるためです[14]。当社のリサーチによれば、軌道へのアクセスが逼迫する中で、宇宙への移動手段を保有する企業が、宇宙空間での製造革命を主導することになるでしょう。

 

4. Midjourney MedicalButterfly Networkが全身スキャンを再構想

By Ovid Amadi, PhD | @Ovid_ARK
Research Analyst, Multiomics

 

Midjourney(ミッドジャーニー)は、テキストから画像を生成する技術で評価を確立し、一部の推計では、ベンチャーキャピタルからの投資を受けることなく年間経常収益が5億米ドルに達したとされています[15]。同社は、潤沢なキャッシュフローと独立性を背景に、ごく少数の人しか予想しなかったであろう「少し奇妙で、少しクレイジー」な取り組みを行なう自由を得ました。それは、新設されたMidjourney Medical部門の一環として、Butterfly Network(バタフライ・ネットワーク)と提携し、全身超音波システムを構築することです[16]Midjourney Medicalは、Midjourney Spasの開設を計画しており、顧客を温水浴槽に浸した状態で、60秒間の全身スキャンを行なう予定です。この技術は、従来のX線、CTMRI画像診断システムで用いられる放射線や大型磁石を使わず、Butterflyの超音波技術を活用するものです。

Butterfly Networkは長年にわたり、超音波ハードウェアの小型化に取り組んできました。かつて数万米ドルの費用がかかっていたプローブを、スマートフォンに接続できる携帯型デバイスへと進化させたのです。202511月、同社は半導体ベースの「ultrasound-on-a-chip(チップ上超音波)」について、相手先ブランド製造(OEM)サプライヤーとなり、用途は非開示ながら、Midjourneyを中核パートナーとして発表しました[17]。両社は共同で、低コストかつ高精度な画像診断プラットフォームを構築し、従来の診断方法よりも早期に、大規模に疾患の予測および診断を支援できる可能性があります。

ButterflyGen2デバイスは40個のセンサーを搭載しており、スキャン時間を20分超から約60秒へと短縮し、202711月までに商業化の準備が整う見込みです。Midjourneyは今後6年間で5万台を配備し、月間10億件のスキャンに対応できる体制を構築する計画です。U.S. Food and Drug AdministrationFDA、米食品医薬品局)は、このデバイスについて、診断精度ではなくウェルネス相談向けの身体組成に焦点を当てていることから、510(k)承認の対象外であるとの見解を示しています。Midjourneyは価格を公表していませんが、ButterflyCEOであるジョセフ・M・デヴィーヴォ氏は、この製品が週次利用を想定して設計されていると述べており、1回当たりのスキャン価格が低水準に設定される可能性を示唆しています[18]

Midjourneyがこのウェルネス・プラットフォームの利用を促進できれば、各スキャンから得られる詳細な解剖学的データは、同社のモデルを継続的に訓練・改善し、将来的には病理学的異常を検出できる水準にまで到達する可能性があります。この文脈において、消費者向けウェルネスという位置付けは、市場投入を早めるためだけのものではなく、独自の訓練データセットを構築・拡大し、模倣困難な競争優位性を生み出すための戦略であるとも考えられます。

Midjourneyは、医療保険会社が加入者の需要に対応する中で、償還制度にも影響を及ぼし始めている自費診療市場に注力しています。広範な義務化に先立ち、Curative(キュラティブ) [19]Manulife(マニュライフ) [20]Tricare(トライケア) [21]などの革新的な保険会社は、血液ベースのがんスクリーニングのような予防的検査製品を補償対象にし始めています。さらに今週、Centers for Medicare and Medicaid ServicesCMS、メディケア・メディケイド・サービスセンター)は、減量目的のGLP-1を対象とする試験的プログラムを開始する予定です[22]。もっとも、Midjourneyが十分に低い価格、たとえば200米ドル未満でスキャンを提供できるのであれば、有意義な事業およびデータ生成エンジンを支えるために必要な規模を実現するうえで、保険適用は必ずしも必要ではないかもしれません。

短期的に注目すべき顧客セグメントの一つは、美容外科です。低コストで放射線を使わない精密な身体組成画像は、術前および術後評価に応用できます。美容外科医は資金力があり、結果を重視する臨床医であり、その患者は自費診療モデルに慣れています。

ウェルネス向けの全身画像サービスを提供しているのはMidjourneyだけではありません。Spotify(スポティファイ)の創業者であるダニエル・エクとCEOのヤルマル・ニルソンが共同創業したNeko Health(ネコ・ヘルス)は、300400米ドルでウェルネスベースの全身スキャンを提供しており、30万人を超える患者が登録しています[23]Prenuvo(プレヌーボ)は、より高い価格帯で、診断レベルの品質を備えたMRIベースの評価を患者に提供しています。同社は世界で31拠点を開設しており、未診断のがん、動脈瘤、その他の「サイレントキラー」を特定する能力を示しています。Prenuvoを利用したほぼすべての患者は、34件の新たな所見を得て帰ることになります。

Midjourney初のスパは、2027年末までにSan Francisco(サンフランシスコ)で開設される見込みであり、消費者向け市場においてButterflyの超音波技術を拡大できるかどうかについて、同社の能力を示す最初のデータポイントを提供することになるでしょう[24]

 

 

 

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[1]「想定取引額」は、一定期間においてデリバティブ取引(オプション、先物、スワップなど)が支配する原資産の理論上の総額、または額面価額を表します。

[2] DUNE Analytics. 2026. “Weekly Prediction Market Notional Volume.”

[3] 同上

[4] Allyn, B. 2026. “Meta plans to release AI-powered prediction market app, documents show.” NPR.

[5] Grous, N. et al. 2026. “Prediction Markets: The Potential Multi Trillion Dollar Asset Class Hiding In Plain Sight.” ARK Investment Management LLC.

[6] Anthropic. 2026. “Statement on the US government directive to suspend access to Fable 5 and Mythos 5.”

[7] Schwartz, L. et al. 2026. “Trump Administration Asks OpenAI to Stagger Release of New Model Over Security Concern.” The Information.

[8] SpaceX.2026. “Today’s mission includes a demo…” X.

[9] 注:3,000kgはDragonの帰還時ペイロード質量です。打ち上げ時のペイロード質量は6,000kgです。SpaceX.2026. “Dragon. Sending Humans and Cargo Into Space.”

[10] U.S. Federal Aviation Administration. 2026. “Final Environmental Assessment for SpaceX Starfall Reentry Vehicle Operations in the Pacific Ocean, May 2026.”

[11] Starbase Brewing. 2026. “Excited to announce we flew our second mission…” X.

[12] Varda. 2026. “Built for orbital material production and reentry.”

[13] Maguire, D. 2026. “Blue Origin Explosion Highlights Launch Capacity Constraints In Race To The Moon.” ARK disrupt Newsletter. ARK Investment Management LLC.

[14] Werner, D. and E. Gatti. 2026. “Small satellite operators confront a bottleneck to space access.” SpaceNews.

[15] Contrary Research. 2025. “Report: Midjourney Business Breakdown & Founding Story.”

[16] Midjourney Medical. 2025. “A New Era of Midjourney.”

[17] UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION. 2025. “Form 8-K. Butterfly Network, Inc. November 17, 2025.

[18] Midjourney Medical. 2025. “A New Era of Midjourney.” so Butterfly Network. 2026. “Butterfly Network Provides Commentary on Midjourney Medical’s Full Body Ultrasound Scanner Announcement.”も参照。

[19] GRAIL. 2024. “Curative Insurance Company Adds GRAIL’s Galleri® Test to Member Benefits for Multi-Cancer Early Detection.”

[20] Manulife. 2025. “Manulife Becomes First Canadian Insurer to Offer GRAIL Galleri® Multi-Cancer Early Detection Test.”

[21] TRICARE. 2025. “GRAIL Galleri (An early detection blood test to help flag cancer.)”

[22] U.S. Centers for Medicare and Medicaid Services. 2025. “Medicare GLP-1 Bridge.”

[23] Neko Health. 2026. “Neko Health to open first US location in New York.”

[24] Midjourney Medical. 2025. “A New Era of Midjourney.”

 

 

 

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