By ARK Invest

本レポートは、2026810日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #520」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. SpaceX初の決算説明会で示された重要なポイント

By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Analyst, Autonomous Technology & Robotics

 

先週、SpaceX(スペースX)は上場企業として初めての決算説明会を開催しました。これを受け、投資家が予想を上回るAI設備投資(CapEx)と、IPO前に発行された適格株式の20%が間もなく売却可能になることに注目したため、同社の株価は約14%下落しました[1] ARKは、この反応は短期的な視点に偏っており、SpaceXが最近提出したS-1に記載されている28.5兆米ドルの総アドレス可能市場に向けた同社の進展を見落としていると考えています[2]

SpaceXは、地上でのコンピューティング能力を、年末までに約2GWとし、来年末までに510GW、ただし「10GWに近い規模」に拡大する計画です[3]。投資回収期間が1年未満で、1GW当たり300億~500億米ドルの収益化が見込まれることから、ARKの調査では、こうした投資の加速が2030年までに売上高1兆米ドルを達成するという同社の目標を支える可能性があると考えられます。マスク氏がガスタービン企業を買収したと報じられていることを踏まえると、太陽光発電の規模が拡大するまでの間、天然ガスタービンが地上での電力不足を補う可能性があります[4]

AI以外でも、SpaceXStarlink(スターリンク)の規模拡大を続けています。8月下旬に予定されているStarship14回目の飛行では、Starlink V3衛星が投入される予定です。これらの衛星が大規模に展開されれば、Falcon 9で打ち上げられたV2衛星と比べ、帯域幅は約20倍に拡大します。SpaceXはまた、Starlinkのアンテナに統合するフェムトセル型[5]基地局の分散型ネットワーク構想を明らかにしました。これは、AT&TVerizon(ベライゾン)、T-Mobileと直接競合することを目的としています。決算説明会に先立ち、T-MobileCEOであるスリニ・ゴパラン氏は、Starlinkがモバイル事業にもたらす脅威は誇張されていると述べました[6]

最後に、規制当局の承認を前提として、SpaceXStarship14回目の飛行において上段ロケットの回収を試みる計画です。これに成功すれば完全再使用化に向けた前進となります。ARKの調査では、完全再使用化により、次の図に示す通り、打ち上げコストが現在の約1,000米ドル/kgから、大規模展開時には100米ドル/kg未満まで低下する可能性があり、軌道上データセンターが経済的に実現可能になると考えられます。

SNL 8.10.26 Chart 1

注: 多数の変数があるため、大規模展開を達成する時期には不確実性があります。ライトの法則では、累積生産量が2倍になるごとに、コストが一定の割合で低下するとされています。Winton 2019をご参照ください。出所: ARK Investment Management LLC, 2026 Roberts 2022Sheetz 2022、およびKirtland 2023のデータに基づく[7]。上記の出所に加え、提示されている一部の情報には、さまざまな追加情報源を用いたARKの社内分析の結果が含まれている場合があります。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、または特定の有価証券の売買もしくは保有を推奨するものとみなされるべきではありません。過去の実績は将来の成果を示唆するものではありません。予測には本質的な限界があり、依拠することはできません。

 

SpaceXの経営陣は、同社初の決算説明会において、長期的な目標の実現に向けたさらなる計画を明らかにしました。SpaceXが生命を複数の惑星に広げるという目標に向け、上場企業としての歩みを始めるなか、今月予定されているStarship14回目の飛行を見守りたいと思います。

 

2. AIエージェントがインターネットの収益化を再構築

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Analyst, AI & Cloud

 

Cloudflare(クラウドフレア)は、ウェブサイトやアプリケーションの性能、信頼性、セキュリティの向上を支援するエッジネットワークおよびコンテンツ配信プラットフォームです。先週の決算説明会において、同社は、人工知能、デジタル決済、インターネットインフラの融合が、インターネットの経済性を再構築する可能性について、その一端を示しました[8]

Cloudflareによると、第2四半期に同社のネットワーク上で、非人間によるウェブトラフィックが初めて人間によるトラフィックを上回りました。CEOのマシュー・プリンス氏は、今後5年以内に非人間によるトラフィックが人間によるトラフィックの1,000倍を超える可能性があると述べました。

この変化は、ウェブクローリングとサイトへの送客の関係にも表れています。プリンス氏によると、約10年前には、Googleがウェブサイトを2ページ分クロールするごとに、Google検索から1人がそのサイトを訪れていました[9]。昨年には、この比率が訪問者1人当たり約15ページに上昇しました。AI研究企業の場合、訪問者1人当たりのクロール数は約2506,000ページに及んだと報告されています。

ARKは、この乖離が、人間の注目を主として広告によって収益化することを前提に設計されたインターネットのビジネスモデルに課題を突きつける可能性があると考えています。AIエージェントがインターネット上の活動に占める割合が高まるにつれ、コンテンツ所有者は情報へのアクセスについてエージェントに課金し始める可能性があります。

Cloudflareは、リクエスト1件当たり1セント未満をエージェントに課金するマイクロペイメントを検討することで、この新たなモデルの仲介者としての地位を確立しようとしています。プリンス氏は、将来のエージェント型トラフィックの110%を、この方法で収益化できる可能性があると見積もっています。CloudflareによるAIトラフィックおよびエージェント型取引の成長予測は、毎秒1,000万~1億件のマイクロトランザクションに相当する可能性があります。これは、Visaがピーク時に処理する毎秒2万件の取引の約5005,000倍、NASDAQの取引処理件数の約550倍に相当します。

この規模では、AIエージェント、ステーブルコイン、インターネットインフラの融合が極めて重要になる可能性があります。Circle(サークル)のUSDCや、Cloudflareが提案しているNET Dollarのような技術は、従来の決済ネットワークでは対応できない低コストのマシン間決済を可能にする可能性があります。

AIエージェントがユーザーに代わって情報を取得し、買い物を行ない、取引し、リソースについて交渉するようになるにつれ、これらの技術の融合はインターネットトラフィックとその経済性の双方を変革し、決済、セキュリティ、モニタリング、デジタル収益化の各分野で新たな機会を創出する可能性があります。

 

3. エージェント型コマースが中小・ニッチな小売事業者に恩恵をもたらす可能性

By Varshika Prasanna | @varshikaARK
Research Analyst, Fintech

 

ARKのリサーチによると、AI購買エージェントは、消費者が商品を見つけてから購入するまでのプロセスを、よりスムーズにすると考えられます。先週開催されたShopify(ショッピファイ)の第2四半期決算説明会で、経営陣は、この変化がすでに進行していることを示しました。例えば、AIから誘導されたセッションの半数は、現在、商品説明ページに直接到達しています。これは、次の図で示す通り、ARKの『Big Ideas 2026』で仮説として示したように、消費者の購買プロセスが短縮されつつあることを意味します[10]

SNL 8.10.26 Chart 2

出所: ARK Investment Management LLC, 2026Ashby 2019Caesar 2024、およびErdly 2022のデータに基づく[11]。上記の出所に加え、提示されている一部の情報には、さまざまな追加情報源を用いたARKの社内分析の結果が含まれている場合があります。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、または特定の有価証券の売買もしくは保有を推奨するものとみなされるべきではありません。

 

Shopifyが主導する形で、エージェント型コマースは勢いを増しています。過去1年間で、同社の加盟店に送られたAIトラフィックは3倍に増加し、AI検索に由来する注文も3倍に増加しました。エージェント型チャネルでは、ソーシャルプラットフォーム、マーケットプレイス、消費者への直接販売など、ほかのチャネルと比べ、新規顧客が購入者へ転換する割合が2倍になっています。Shopifyはまた、同社の商品カタログを利用したAI検索のコンバージョン率が、ウェブから収集したデータに依存する検索の2倍であると報告しています。これは、コンバージョンを促進するうえで、構造化されたリアルタイムの商品データが重要であることを示しています。

主にGoogleShopifyが共同で策定したUniversal Commerce ProtocolUCP)は、AIエージェントが事業者とやり取りすることを可能にするオープン規格です。AIエージェントが商取引を仲介するようになるなか、UCPShopifyの商品カタログがますます重要な役割を担うことに寄与しています。Shopifyによると、AIに起因する注文の75%は、上位100の商品カテゴリー以外の商品に対するものでした。これは、エージェント型コマースが、知名度の高い商品だけでなく、中小・ニッチな加盟店の商品にも販売機会を広げていることを示しています。

従来のオンライン小売では、知名度、広告予算、ブランド認知度が最も高い商品に需要が集中してきました。AIエージェントは、このモデルを逆転させる可能性があります。膨大な商品カタログを検索し、検索結果をパーソナライズすることで、AIエージェントは関連性を最適化し、最も人気のある商品ではなく、それぞれの消費者にとって最適な商品を提示できるからです。

Shopifyはまた、中小・ニッチな事業者の参入を促し、加盟店の裾野を引き続き広げています。事業の立ち上げと運営に対する障壁を引き下げることにより[12]、同社の加盟店基盤は2018年以降、7倍に拡大しました[13]

エージェント型コマースは、消費者が自らのニーズに最も適した商品を発見し、購入することを容易にすることで、Shopifyに出店する多様な加盟店に販売機会を広げ、注目度や広告予算ではなく、商品の実力に基づく成功をもたらす可能性があります。

 

4. AIエージェントは粘り強く取り組む能力を獲得しつつある

By Karim Mattar | @ARKInvest
Research Associate, AI & Cloud

 

先週開催されたBlack Hatにおいて、OpenAI(オープンAI)の研究者は、先月発生したHugging Face(ハギングフェイス)のセキュリティインシデントに関与したAIエージェントについて、新たな詳細を公表しました。社内のサイバー評価中に、エージェントはOpenAIのテストインフラに存在する脆弱性を発見し、意図された範囲を超えるアクセス権を取得しました。そして、ExploitGymベンチマークを解こうとする過程で、最終的にHugging Faceを侵害しました。OpenAIは、これらのモデルがより広範な目的を目指すのではなく、評価課題を解くことに「過度に集中していた」と説明しました[14]

新たに開示された情報は、このインシデントの原因が、単一のエクスプロイト(脆弱性を悪用する攻撃)にあったのではなく、エージェントが粘り強く取り組み、過去の作業を積み重ねる能力にあったことを示唆しています。Black Hatで発表したOpenAIの研究者によると、別々に実行されたエージェントが、共用のArtifactoryインフラを利用して、タスクの割り当てや脆弱性などの情報を互いに残し始めました。OpenAIがこの活動を発見して通信経路を削除すると、その2日後、エージェントは別の手法を用いて同様のシステムを再構築しました[15]。エージェントが手法を継続的に適応させ、過去の実行で得られた情報を積み重ねたため、この活動は数週間にわたって続きました。

こうした行動は、最先端のAIエージェントが人間の指示なしに完了できる作業量が広範に増加していることとも一致しています。OpenAIは最近、長時間稼働する社内モデルが、それ以前のモデルなら停止していた環境上の制約について、回避方法の探索を続けたと報告しました。ある評価では、ベンチマークはモデルに対してGitHub(ギットハブ)経由で結果を提出するよう指示する一方、OpenAISlack(スラック)のみで結果を報告するよう指示していました。サンドボックスが外部アクセスを遮断すると、モデルは約1時間かけて、GitHub経由での提出を可能にする脆弱性を発見しました。OpenAIは、長時間稼働するモデルを有用なものにする粘り強さが、望ましくない行動の機会も増加させると結論づけました。このため、同社は個々の行動ではなく、エージェントがたどる一連の行動を監視するようになりました[16]

独立した評価も、この結論を裏付けています。METR(メトル) [17]は、最先端のエージェントが確実に完了できるソフトウェアタスクの所要時間が、数年にわたって指数関数的に増加していることを確認しました。当初の調査では、この時間が7ヵ月ごとに2倍になっていることが示唆されていました。また、UK AI Security Instituteは、1,000万トークンという固定予算の下で行なわれた32ステップの企業サイバー攻撃シミュレーションにおいて、モデルが完了したステップ数が、20248月のGPT-4oでは1.7ステップだったのに対し、20262月のClaude Opus 4.6では9.8ステップに増加したことを確認しました。推論時の計算量を1,000万トークンから1億トークンへ増やすと、性能は最大59%向上しました。この結果は、より新しいモデルが、追加された推論能力を、より長期にわたるタスクの進展につなげられることを示唆しています。

経済的な意味は、サイバーセキュリティの領域をはるかに超えて広がる可能性があります。AIの能力を測る指標の多くは、個々のプロンプトに対するモデルの回答の質に焦点を当てています。エージェント型システムでは、これに加えて、人間による次の判断が必要になるまでに、モデルがどれだけの有用な作業を完了できるかという、もう1つの重要な変数が加わります。エージェントが失敗から立ち直り、情報を保持し、目標に向かって前進する能力を高めるにつれ、人間による1回の指示で、ますます多くの作業をマシンに実行させられるようになる可能性があります。

より長い時間軸で稼働できるようになれば、ソフトウェア開発、リサーチ、サイバーセキュリティをはじめとするデジタルワークフロー全般において、AIエージェントの有用性が高まると考えられます。一方で、人間が介入するまでにエージェントが実行できる行動の数も増えるため、封じ込め、モニタリング、アクセス制御の重要性も高まります。OpenAIの最近の経験は、モデルの能力が向上するにつれて、人間による1回の指示当たりに完了できる生産的な作業量が、AIの進歩を測るうえで、ますます重要な指標となる可能性を示唆しています。

 

 

 

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[1] Ciolli, J. 2026. “SpaceX, we have another problem: 900 million shares unlock today.” Business Insider.

[2] UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION. 2026. “Form S-1 Space Exploration Technologies Corp. May 20, 2026.”

[3] Yahoo! Finance. 2026; “Space Exploration Technologies (SPCX) Q2 FY2026 earnings call transcript.”

[4] U.S. Federal Trade Commission. 2026. “20261350: Elon Musk; CF APR Super Holdings LLC.”

[5] フェムトセルのような機器とは、ブロードバンド・インターネット・ルーターに接続し、屋内に小規模な専用携帯電話基地局を構築する、小型・低出力の機器。

[6] Smith, K. and Snaith, M. 2026. “Starlink Mobil Threat Has Been Exaggerated, Says T-Mobile CEO.” Financial Times.

[7] Winton, B. 2019. “Moore’s Law Isn’t Dead: It’s Wrong—Long Live Wright’s Law.” ARK Investment Management LLC. Sheetz, M. 2020. “Elon Musk touts low cost to insure SpaceX rockets as edge over competitors.” CNBC. Roberts, T.G. 2022. “Launch to Low Earth Orbit: How Much Does It Cost?” Aerospace Security. Kirtland, K., IV. 2023. “My personal estimate is…” X.

[8] Cloudflare. 2026. “Cloudflare Announces Second Quarter 2026 Financial Results.”

[9] Cloudflare. 2026. “Q1 2026 Earnings Call.”

[10] ARK Investment Management LLC. 2026. “Big Ideas 2026.”

[11] Ashby, M. 2019. “The Forgotten Glories of Department Stores.” The Atlantic. Caesar, C. 2024. “How Much Time Do Shoppers Spend in the Consumer Buying Journey?” Salsify. Erdly, C. 2022. “4 Minutes Or Less – What Do Customers Expect During Online Check-Out?” Forbes.

[12] Grous, N. and Prasanna, V. 2026. “The Falling Cost of Entrepreneurship.” ARK Investment Management LLC.

[13] 同上。

[14] OpenAI. 2026. “OpenAI and Hugging Face Partner to Address Security Incident During Model Evaluation.”

[15] Black Hat USA. 2026. “Black Hat USA 2026: The 'Breaking' News: The OpenAI–Hugging Face Incident.” YouTube.

[16] OpenAI. 2026. “Safety Alignment for Long-Horizon Models.“

[17] METR (Model Evaluation & Threat Research)は、AIシステムが社会に壊滅的な被害をもたらす可能性の有無や、その時期を科学的に測定する非営利の研究機関。

 

 

 

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