By ARK Invest

本レポートは、2026831日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #523」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. SpaceXStarbase構想の野心的な計画を明らかに

By Brett Winton | @wintonARK
Chief Futurist

 

先週、SpaceXとジェフ・ランドリー知事は、バーミリオン郡のピーカン・アイランドにある約125,000エーカーの土地に、史上最大級のインフラ・プロジェクトの一つを建設する、1,000億米ドル規模の投資計画「Starbase Louisiana(スターベース・ルイジアナ)」を発表しました[1]。今回のグリーンフィールド投資には5つの複合施設が含まれ、各施設にはStarship用タワーが2基ずつ設置されます。当初は10基の発射台を整備し、最終的には12基を超えるタワーによって1日約30回の飛行を支える計画です。この敷地には発射場だけでなく、推進剤の現地生産設備、発電設備、深水港の海上輸送設備、機体処理施設、従業員用住宅、さらには空港も整備される可能性が高いとみられます。建設は2027年に開始され、最初の打ち上げは早くても2029年となる予定です。

決め手となったのは、地理的な2つの特徴です。メキシコ湾上空を南に向かう打ち上げ経路により、SpaceXは宇宙ベースのコンピューティング・コンステレーションに必要な極軌道へ効率的にアクセスできます。また、ルイジアナ州の天然ガスを、メタン燃料ロケットの動力源として利用できます。グウィン・ショットウェルは、その動機を明確に説明しています。同社が現在保有するインフラ、すなわちテキサス州のStarbaseにある2基の発射台と、フロリダ州で近く稼働予定の3基の発射台だけでは、Starshipの野心的な飛行頻度計画に対応できないためです[2]

このプロジェクトの規模を把握するため、完成済みの現代のプロジェクトのなかで最も近い比較対象を見てみましょう。ブラジルの出力14ギガワット(GW)のイタイプ水力発電所は、現在の米ドル換算で約900億米ドルを要しました。また、大幅に遅延し、いまだ完成していないカリフォルニア州の高速鉄道プロジェクトは、約1,250億米ドルを要すると予測されています。次の図に示す通りです。

出所: ARK Investment Management LLC2026年、FHWAESA/NASACalifornia High-Speed RailLouisiana Economic DevelopmentItaipu BinacionalChina Three Gorges、香港政府、Global Infrastructure Hub、およびマサチューセッツ州。過去の費用は、2026831日時点のBLS CPI-Uデータを用いて、20267月時点の概算米ドルに換算しています。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、または特定の有価証券の売買もしくは保有を推奨するものとみなされるべきではありません。

 

SpaceXによる投資がこれほど巨額である理由

SpaceXがこの能力を必要としているのは、打ち上げを待つペイロードが年間数兆米ドルもの価値を生み出す可能性があるためです。まず、同社のStarlink(スターリンク)通信コンステレーションが数十億米ドル、そしてARKは、Starmind(スターマインド)コンステレーションが数兆米ドルの価値を生み出すと考えています。SpaceXの通信衛星1基当たりの収益化率に関するARKの予測に基づくと、Starlink衛星を満載した再使用型ロケット1基は、その耐用期間を通じて約40億米ドルのネット・キャッシュフローを生み出す可能性があります。一方、打ち上げ、衛星製造、地上局の設置、顧客獲得にかかる費用の合計は10億米ドルです。重要な点として、ピーカン・アイランドのタワーは、帰還するStarshipをキャッチできると考えられます。実際、ARKの予想通り、Starship2027年に10回目となる完全再使用型ロケットの商業打ち上げに成功すれば、税引後IRR(内部収益率)は年率換算で100%近くに達するとみられます。次の図に示す通りです。

出所: ARK Investment Management LLC2026年。2026831日時点におけるSpaceXの会社提出資料および発表資料のデータ、ならびにARKのモデルに基づいています。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、または特定の有価証券の売買もしくは保有を推奨するものとみなされるべきではありません。

 

このようなリターンが得られるのであれば、SpaceXにとっての制約は資本ではなく、資本を投入するための物理的な能力となります。同社は、Starlinkを搭載したStarshipの飛行を数百回規模まで拡大していくなかでも、緩やかに低下するとはいえ、同様に健全なリターンを維持できると考えられます。

Starlinkの機会はいずれ飽和するものの、SpaceXにとってAIの機会には、銀河そのもの以外に限界はありません。AI衛星の打ち上げが100回目に達する頃には、衛星の製造と打ち上げにかかるオールイン・コストは、地上データセンター開発事業者の約半分にまで低下しているとARKのリサーチは示唆しています。その時点でもSpaceXは研究開発(R&D)に多額の資金を投じているとARKのリサーチは予想しています。また、同社は、Anthropic(アンソロピック)とOpenAIが現在位置する性能フロンティアへの追い上げを図る一方で、主としてInfrastructure-as-a-ServiceIaaS)プロバイダーとして容量を貸し出すことにより、軌道上コンステレーションを収益化するとみられます。こうした制約があっても、Starmindの初期の打ち上げは、20%台後半のIRRを生み出す可能性があります。次の図に示す通りです。

出所: ARK Investment Management LLC2026年。2026831日時点におけるSpaceXの会社提出資料および発表資料のデータ、ならびにARKのモデルに基づいています。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、または特定の有価証券の売買もしくは保有を推奨するものとみなされるべきではありません。

 

設備の構築が拡大するにつれて、地上のデータセンターの経済性は悪化する可能性が高いとみられます。開発事業者は地域住民の反対に対処しなければならず、指数関数的に増加する電力量も確保しなければならないためです。一方、SpaceXは衛星の製造に関する専門性を次第に高め、1回の打ち上げにより多くの衛星を搭載できるようになるため、その経済性は改善すると考えられます。1,000回目の打ち上げでは、初期費用が地上設備のベンチマークの40%未満にまで低下する可能性があります。SpaceXが同時に掌握するコンピューティング量を踏まえると、同社は性能フロンティアに追いつき、コンステレーションの研究開発目的での利用を縮小するとともに、より収益性の高いAIソフトウェアを最終顧客に提供できるようになると考えられます。1,000回目の打ち上げ時点では、SpaceXAIコンステレーションにStarlinkよりもはるかに多額の資金を投じる一方で、Starmindの予想IRRは、ピーク時のStarlinkIRR2倍に達する可能性があります。

出所: ARK Investment Management LLC2026年。2026831日時点におけるSpaceXの会社提出資料および発表資料のデータ、ならびにARKのモデルに基づいています。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、または特定の有価証券の売買もしくは保有を推奨するものとみなされるべきではありません。

 

この投資はマクロ経済にどのような影響を及ぼすのでしょうか

ルイジアナ州の名目国内総生産(GDP)が約3,440億米ドルであることを踏まえると[3] 1,000億米ドルの資本投資は、どのような段階を経て実施されるにせよ、同州の経済に目に見える影響を及ぼすことになります。特に、この投資が人口6万人未満の郡に影響を与えることを考えれば、なおさらです。同州の1人当たりGDPが約56,000米ドルであるのに対し、このプロジェクトのファクトシートでは、直接的に3,000人分、間接的に約8,100人分の新規雇用が創出され、その平均年収は10年間にわたり92,600米ドルになると予測されています。ランドリー知事は、歴史的な対比を鮮明に示しました。何世代にもわたり、産業界はルイジアナ州から石油、天然ガス、石油化学製品を採取してきましたが、州GDPに占めるこれらの産業の割合は、1999年の約25%から現在では20%未満にまで低下しています[4]SpaceXがルイジアナ州に進出する目的は、資源を採取することではなく、建設することにあります。

マクロ経済予測において恒常的に過小評価されていますが、破壊的イノベーションは既存の資本ストックを置き換えるだけではありません。新規資本に対する期待リターンを、通常であれば建設されない物理的インフラへの投資を促す水準にまで高めます。2015年当時、ロケット打ち上げ事業のために、ピーカン・アイランドの産業複合施設へ1,000億米ドルを投じようと考える企業は存在しなかったでしょう。ロケットの再使用が、このようなプロジェクトに対する期待資本収益率を変化させ、結果として資金を呼び込みました。現在、その資金は、それまで何もなかった郡に推進剤製造施設、発電設備、港湾インフラをもたらそうとしています。

初期投資よりも重要なのが、二次的な影響です。急速なコスト低下曲線上にある技術に対応するために構築されるインフラは、それが置き換える従来の資本ストックよりも高い資本収益率を生み出すと考えられます。その結果、より低コストでの軌道へのアクセス、常時接続、1ワット当たりのコンピューティング・コストの低下といった生産性向上がもたらされ、限界的な労働力、エネルギー、土地が、より生産的な用途へ再配分されます。こうした供給サイドの拡大こそが、破壊的技術に伴う成長がコンセンサス・モデルに織り込まれている水準をはるかに上回る理由です。

 

2. OpenAIJalapeño、カスタムAIシリコンへの移行を加速させる可能性

By Karim Mattar | @mattarARK
Research Associate, AI & Cloud

 

先週、OpenAIBroadcom(ブロードコム)と共同開発した同社初のカスタム推論チップ、Jalapeño(ハラペーニョ)の最初の結果を公表しました。テストされた公開モデルのなかで最大のKimi K2.5と比較して、Jalapeño1ワット当たりのピーク性能は約1.5倍、レイテンシーは3.4分の1であったとOpenAIは報告しています[5]。以下に示す通りです。JalapeñoOpenAIにとって初の試みであったにもかかわらず、Kimi K2.5DeepSeek R1GPT-OSS 120Bのすべてにおいて、性能とレイテンシーのフロンティアを達成しました。

注: 比較対象となるシステムは、モデルによって異なります。GPT-OSS 120BNVIDIA(エヌビディア)のGB200と比較し、DeepSeek R1 670BおよびKimi K2.5 1TNVIDIA GB300と比較しています。指標は、OpenAIが報告した1kW当たりのピーク混合トークン数/秒を示しています。出所: ARK Investment Management LLC2026年。OpenAI2026年)のデータに基づいています[6]。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、または特定の有価証券の売買もしくは保有を推奨するものとみなされるべきではありません。過去の実績は将来の成果を示唆するものではありません。

 

SemiAnalysis(セミアナリシス)はOpenAIのラボでJalapeñoInferenceXの結果を独自に検証し、テストしたほぼすべてのワークロードにおいて、1ワット当たりの性能でBlackwellを上回ったことを確認しました[7]。また、SemiAnalysisのテストでは、1メガワット当たりの出力トークン・スループットも、NVIDIAが公開した最新のRubinの結果を上回りました[8]2つのチップが登場した時期を考慮すれば、Rubinの方がより適切な比較対象です。ただし、これらはまだ初期段階の結果です。Jalapeñoは依然としてエンジニアリング・シリコンの段階にあり、SemiAnalysisは、より長時間にわたる複数ターンのエージェント型ワークロード向けベンチマークであるAgentXでは、まだテストしていません。

ベンチマーク結果以上に興味深いのは、OpenAIがこれを達成した速さでしょう。OpenAIは設計および最適化のプロセスで自社のAIモデルを活用し、Jalapeñoを最初のレジスタ転送レベル(RTL)からテープアウト[9]まで、およそ9ヵ月で進めました[10]SemiAnalysisはまた、OpenAICodexを活用することで、カスタムシリコンに伴う従来の弱点の一つを克服したと指摘しています。すなわち、Jalapeño用のカーネルを開発し、新しいハードウェアを中心に成熟したソフトウェア・スタックを構築するために必要な時間を短縮したのです。電力がAIインフラにとってますます大きな制約となるなか、1メガワット当たりでより多くの推論処理を引き出すことの価値は、今後さらに高まると考えられます。OpenAIBroadcomは、OpenAIが設計したアクセラレーター10ギガワット分を2029年までに導入する計画であり[11]OpenAIは膨大な推論ワークロード全体にチップ開発費用を分散できる規模を手にすることになります。

Jalapeñoの登場は、OpenAIが、特にトレーニング用のNVIDIAGPU(画像処理半導体)の購入を中止することを意味するものではありません。一方、その初期性能は、十分な規模で事業を展開する最先端AI企業であれば、独自の推論用シリコンを設計する費用を正当化できる可能性を示唆しています。AIそのものによってチップ開発の期間が引き続き短縮されるのであれば、なおさらです。

 

3. Figure AI、世界最大かつ最も多様なロボット・データセット「Index」を発表

By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Analyst, Autonomous Technology & Robotics

 

先週、Figure AI(フィギュアAI)は、消費者向けアプリ「Index(インデックス)」をステルスモードから正式に公開しました。このアプリは、日常的な作業をカメラで撮影した利用者に報酬を支払い、ヒューマノイド・ロボットのトレーニングに使用する現実世界の物理データを収集します[12]4ヵ月間のステルス運用期間中に、このアプリは108ヵ国で264,000件を超えるダウンロードを記録しました。利用者は1,600万本を超える動画をアップロードし、1,500万米ドルを獲得しました。Figure AIによると、その結果、世界最大かつ最も多様なロボット・トレーニング用データセットが構築されたということです。同社は今後12ヵ月間に、データとコンピューティングへ10億米ドル以上を投じることを約束しています。注目すべき点として、利用者は作業を外部委託するために「Creators」を予約できます。これは、人の力を活用してRaaSRobots-as-a-Service)へ移行するための入り口となります。

Indexの公開は、多様な現実世界のデータが重要であることを浮き彫りにしています。現時点では、このデータがヒューマノイド・ロボットを大規模に導入するうえでのボトルネックとなっています。ハードウェアは急速に進歩しています。先週、ペキンで開催されたWorld Humanoid Robot Gamesでは、中国のヒューマノイド・ロボットがウサイン・ボルトの100メートル走の世界記録を上回りました[13]。一方、商用導入は依然として極めて限られています。そのため、企業は社内でデータ収集を開始しています。Tesla(テスラ)は直近の決算説明会で自社のデータ収集の取り組みについて言及し[14]Unitree(ユニツリー)のCEOは、同社の新規株式公開(IPO)で調達する資金の大部分をソフトウェア開発に配分する方針を示しています[15]

ARKのリサーチによると、ヒューマノイド・ロボットは自動運転車の約20万倍複雑です。その複雑さによって、約26兆米ドルの獲得可能な最大市場規模(TAM)が創出される可能性があります。この市場は、家庭用と製造用途にほぼ均等に分かれるとみられます。以下に示す通りです。

注: GDP」は国内総生産を意味します。GDP予測はARK Investment Management LLCの分析に基づいています。テイクレートは、取引金額のうち事業者が収益として保持する割合と定義しています。出所: ARK Investment Management LLC2026年。20251218日時点におけるInternational Federation of Robotics2025年)、Knutsen et al.2025年)、および36Kr European Central Station2025年)のデータに基づいています[16]。これらの出所に加え、提示した一部の情報は、さまざまな追加情報源を利用したARKの内部分析の結果である場合があります。本資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、または特定の有価証券の売買もしくは保有を推奨するものとみなされるべきではありません。予測には本質的な限界があり、予測に依拠することはできません。

 

ヒューマノイド・ロボットの開発は、まだ初期段階にあります。今後数年間にわたり、その規模拡大のペースを注視していきたいと思います。

 

 

 

 

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[1] Louisiana Economic Development. 2026. “SpaceX Launches New Era of Commercial Spaceflight with $100 Billion Louisiana Campus.”

[2] 同上。併せて、SpaceX. 2026. “SpaceX Reports Second Quarter 2026 Results.”を参照。

[3] Bureau of Economic Analysis. 2026. “GDP by State.”

[4] Louisiana Economic Development. 2026. “SpaceX Launches New Era of Commercial Spaceflight with $100 Billion Louisiana Campus.”

[5] OpenAI. 2026. “Jalapeño’s first results show industry-leading speed and efficiency in AI inference.”

[6] 同上。

[7] Shan, B. et al. 2026. “OpenAI Jalapeño: Better Than Nvidia Blackwell.” SemiAnalysis.

[8] 同上。

[9] RTLからテープアウトまでのプロセスでは、高水準のレジスタ転送レベル(RTL)によるハードウェア記述を、ファウンドリーに引き渡す最終的な製造可能レイアウト・ファイルへと変換する。 ChipExpert. 2025. “From RTL to Tapeout : A Complete VLSI Flow Explained.”を参照。

[10] OpenAI. 2026. “OpenAI and Broadcom unveil LLM-optimized inference chip.”

[11] Broadcom. 2025. “OpenAI and Broadcom announce strategic collaboration to deploy 10 gigawatts of OpenAI-designed AI accelerators.”

[12] Figure AI. 2026. “Introducing Index: Building The World’s Largest and Most Diverse Physical Dataset.”

[13] Zhuang, Y. “2026. A Chinese Robot Beat Usain Bolt’s 100-Meter Record. Should We Be Impressed?” The New York Times.

[14] Yahoo Finance. 2026. “Tesla, Inc. (TSLA) Q2 FY2026 earnings call transcript.”

[15] Wang, Y. 2026. “Unitree IPO Turns 36-Year-Old Founder Into China’s First Humanoid Robot Billionaire. Forbes.

[16] International Federation of Robotics. 2025. “National Robot Density.” Knutsen, R. et al. 2025. “Quadruped State of The Market - Unitree, Boston Dynamics, ANYbotics, DEEP Robotics, and The Rising Application Ecosystem.” SemiAnalysis. 36Kr European Central Station 2025 2025. “Unitree Launches Listing Guidance: Favored by Capital, but Mass Production Yet to Come.”

 

 

 

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