By Sam Korus

オートメーション(自動化)の影響に関するシリーズの第2弾として、農業革命から学んだ教訓に焦点を当てます。現在進行中の製造業革命の詳細については、本シリーズの第1弾(リンク)「農業のオートメーション化から学べること」をお読みください。

20世紀の間にテクノロジーが農業を一変させ、収益性を大きく高めたことにより、差し迫った製造業革命を垣間見ることができました。具体的には、オートメーションは労働分配率を低下させるかもしれませんが、その一方で営業利益率だけでなく賃金の伸び率も押し上げる傾向があります。

1990年代の初めには、従業員1万人当たりの産業用ロボット台数はわずか20台でしたが、オートメーションは米国の製造業に影響を及ぼし始めました。以降、ロボット密度は10以上に高まっていますが(下図参照)、農業分野でみられてきた影響を踏まえると、製造業のオートメーション化はまだ初期段階にあると示唆されます。

 

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出所: 国際ロボット連盟(IFR)のデータをもとにARK Investment Management LLCが作成

 

製造業のロボット密度は、全産業と比べて6倍高いものの、下図が示す通り、自動車セクターやAmazonと比べれば依然としてはるかに低く、それぞれの6分の1、15分の1にとどまっています。実際、Amazonはロボティクス導入の勢いが未だとどまるところを知りません。

 

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オートメーションの初期段階であっても、ロボット密度と労働分配率の間に相関性があることは明らかです。企業の資本集約度が増すにつれ、売上高に占める人件費の割合は低下しますが(下図参照)、オートメーションは生産性を向上させるため、労働者の所得と企業の利益の両方を増加させる可能性があり、win-winの結果をもたらすと期待されます。

 

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出所:国際ロボット連盟(IFR)、http://www.euklems.net のデータをもとに ARK Investment Management LLCが作成

 

設備投資がオートメーション化を加速するのであれば、事業運営効率に重点を置いている企業は投資収益率(ROI)を高めることができるはずです。実際、1990年から2018年にかけて、S&Pの産業部門での売上高に対する人件費比率の低下は、営業利益率の上昇に寄与してきたと見受けられます(下図参照)。

 

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出所:国際ロボット連盟(IFR)、http://www.euklems.net 、Bloombergのデータをもとに  ARK Investment Management LLCが作成

 

肉体労働を生産から切り離すことは、技術革新の特徴です。仮に馬やトラクターがいなければ、米国人口の大部分が未だに農場で働いてたでしょう。代わりに、農業の歴史は、オートメーションが製造業の売上高における人件費率をかつてないほどの水準まで押し下げる一方、もたらされる生産性の向上により、引き続きその仕事に従事する人々の収入は大きく増加することを示唆しています。

本シリーズの第3弾では、生産性が経済全体に及ぼす影響に注目していきます。ご期待ください。

 

 

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