By Tasha Keeney
ARKでは、一般の業界アナリストはテスラにおける「MaaS」(Mobility-as-a-Service/サービスとしての移動)の価値を見過ごしている可能性があると考えています。先週の決算説明会では、自動運転機能を担当する
「オートパイロット」チームが初めて紹介されました。オートパイロットチームがそこで説明した社内開発チップの性能を聞き、我々はテスラがハード面でも競合他社の一歩先を走っている可能性があると感じました。
我々は、EV(電気自動車)の販売台数は今後5年間で予想を上回り、 2022年には1,700万台に達すると共に、テスラがその最大の供給者になると予想しています。恐らくそれ以上に重要なのが、将来非常に大きな キャッシュフローを生むと考えられるMaaSの市場価値は、まだ現在のバ リュエーションモデルでは現れていない点です。
自動車市場はEVへの移行の中ですさまじい変革の時を迎えています。自動運転プラットフォームの提供者、すなわち自動運転タクシーなどのプラッ トフォーム提供企業の純売上高が、2030年までには2兆米ドルを超え、自動車メーカーの売上高に匹敵するまでに成長すると我々は試算しています。ただし、自動車を製造する企業とは違い、自動運転プラットフォームの提供企業はソフトウェア企業と同様に、大きな設備投資等を必要とせずに高い利益率を上げ、ネットワーク効果を活かして地域での競争優位性を享受できると思われます。
したがって、自動運転プラットフォームの提供企業は、売上高は自動車 メーカーと同等であっても営業利益はメーカーの約6倍にもなると考えており、結果として大幅に企業価値を高めるでしょう。実際我々は、自動運転プ ラットフォーム企業は、4兆ドルある現在の世界のエネルギーセクターを超える企業価値を持つことになると試算しています。テスラの自動運転車開発の進み具合は非公開ですが、同社のデータ蓄積が膨大であるということは、テスラが自動運転で他社に先行している可 能性を示唆しています。グーグル、GMなどの企業は自動運転の試験用の車両を使用していますが、テスラは顧客に販売した車両に組み込んだソフトウェアにより、運転に影響を及ぼさずにバックグラウンドでオートパイロット機能をテストしており、有用なデータを取得することができています。そのためテスラの実験方式は、例えばデータ公表が要求されるカリフォルニア州でグーグルが直面しているような、規制当局への報告義務の対象とはなりません。
つまりテスラは、グーグルの数百台規模のテスト車両よりも充実したテスト体制にあると言えます。これまでにグーグルが蓄積した数百万マイルの走行データに対し、テスラは顧客の車両からその千倍もの走行データを収集していると想定して間違いないでしょう。
テスラは他のどの自動車メーカーと比べても、自動運転用チップの開発に 関して最低でも3年間は先行しています。1 イーロン・マスクCEOは「現在のNVIDIAのハードウェアは1秒間に200フレームを処理できるが、当社のチップは1秒に2,000フレームを処理できる」と説明しました。テスラは現在、 12テラフロップスの処理性能を持つNVIDIA製チップを採用していますが、自社チップ採用による10倍の改善の可能性を示唆したことになります。
完全に自動運転化されたライドシェアリングサービスは、テスラの利益率を 大きく改善させるでしょう。イーロン・マスクCEOは、完全自動運転を可能にするオートパイロットシステムは2019年に発売可能と述べています。ただし、同氏はこれまでたびたびストレッチ目標(達成困難な目標)を公言して きた経緯があり、実際の投入は恐らく2020年または2021年になるとみています。
オートパイロット・パッケージの値段は、車両購入時の場合は5,000ドル、後 付けの場合は6,000ドルです。この機能の販売額のほぼ全額がテスラの利益になると考えられます。2
さらに、テスラが自動運転ライドシェアリング・ネットワークである「テスラネッ トワーク」を一旦立ち上げれば、現在のUberのビジネスモデルと同様に、その利用の度に顧客からプラットフォーム料金を徴収できることになる可能 性があります。最終消費者から徴収する1マイル当たり1ドルを、1台の想定年間走行距離10万マイルで試算すると、テスラは1台当たり年間2万ドルという高収益をこのプラットフォーム事業から得られることになります。 5年という自動車の寿命の間に、1台のModel 3は40,000ドルのキャッシュフローを生み出す可能性があります。テスラの見通しを楽観視している投資家ですら、Model 3から得られるキャッシュフローは販売時の4,000ドルだけと予想しています。実際には、Model 3を1台販売するごとに、投資家が想定しているよりも10倍多いキャッシュフローを創出する可能性があります。
もちろん、テスラが完全自動運転化された車両を開発できない可能性もあ ります。テスラは完全自動運転がLiDAR(レーザー光を使ったセンシング技術)なしに実現可能だと考えていますが、これはまだ実証されていません。3 テスラは競合との競争にも直面しており、完全自動運転車の販売が世界初にはならないとみられます。ウェイモは本年中にフェニックス(米国 アリゾナ州)で商業自動運転サービスを立ち上げる予定です。GM傘下の クルーズオートメーションは、来年にサービス提供開始を計画しており、やはりテスラに先行するとみられます。百度(バイドゥ)の「アポロ計画」は中国政府の指定する国家自動運転プラットフォームに選定されており、中国の自動運転車市場を支配するとみられます。
我々が考えるテスラの優位性は、大量の顧客が保有する車両から得られ るデータ量と、その検証システムにあります。これらは、テスラがLiDARを使わないシステムの実現を可能にするかもしれません。不可能を可能にし てきたイーロン・マスクCEOの実績を踏まえると、同氏がこれを実現しても不思議ではないでしょう。
1. ここで留意すべきは、ウェイモは社内開発チップも使用している点ですが、当社はその性能特性を把握していません。
2. これは全てのテスラ車が第2世代のオートパイロット・ハードウェアを搭載して販売されることを意味します。テスラはこのハードウェアセットが、ソフトウェアのアップデートにより完全自動運転が可能になるとしています。
3. LiDARは車両の周囲のポイントクラウド(点群)、または非常に詳細な3D地図を作製するレーザーシステムです。
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本レポートは、2018 年8月14日にARK社のHPに公開された、英語による「Tesla’s Autonomous Opportunity is Severely Underappreciated」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。