By Manisha Samy

先週の火曜日、画期的な出来事がありました。CRISPR TherapeuticsCRISPR遺伝子編集技術に基づく初の人間での臨床試験データを発表したのです。その結果は、疾患に効果があったばかりでなく、希少血液疾患であるベータサラセミアと鎌状赤血球症の患者2名の治療に成功したというものでした。

 

データは患者2名と限定的ではあるものの、これらの臨床試験は、CRISPR技術が一定のヒト疾患の治療において安全かつ有効であるという概念の重要な実証です。

 

1人目の患者はベータサラセミアを患う19歳の女性で、その治療には年に平均17回の輸血が必要でした。CRISPR Therapeuticsの薬CTX001の単独投与を受けた当該患者は、その後9ヵ月間1回も輸血を受けずに済んでおり、ヘモグロビン量の水準が正常値の11.9 g/dLに達しました。2人目の患者は鎌状赤血球症に苦しむ33歳の女性で、1年以内に7回の血管閉塞に見舞われ、入院する結果になりました。CTX001の単独投与を受けた後、ここ4ヵ月は1度も血管閉塞が起きていません。さらに、検査によると、当該患者の血液の46.6%が酸素との結合親和性が強い胎児型ヘモグロビンを発現しており、「機能的治癒」として記録されるのに必要な2530%を大きく上回っています。

 

鎌状赤血球症とベータサラセミアは消耗性の血液疾患で、極度の痛みや臓器不全を伴い、寿命も脅かします。毎年、世界中でこれらの疾患を持って生まれてくる子供は鎌状赤血球症が30万人、ベータサラセミアが6万人に上り、未だ満たされていない治療薬ニーズは非常に大きいと言え、機能的治療の市場規模は200億米ドルを大きく上回る可能性があります。

 

そしておそらくより重要なのは、これらの初期臨床試験結果が、CRISPR技術がかつて治療不能と考えられていた病気に対応し得る可能性を実証していることでしょう。CRISPR Therapeuticsの素晴らしいデータを受けて、CRISPR技術の基礎的特許を有する他の2社、Intellia TherapeuticsEditas Medicineも成功を収める確率が高まっています。

 

本レポートは、2019 年11月25日にARKが公開した、英語による「Innovation Newsletter Issue 199」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

PDFをダウンロードする

Manisha Samy

About the author

Manisha Samy Read more articles by Manisha Samy