By Simon Barnett

英国のCMA(競争・市場庁)は今週、IlluminaによるPacific Biosciencesの買収案は差し止めるべきとの判断を発表し、その理由として、器具の抱き合わせ販売の制限といった行動的問題解消措置や、知的財産権の分割といった構造的問題解消措置がとられていない点を挙げました。第3四半期の決算発表においてIlluminaのフランシス・デソーザCEOは、これらの暫定的な調査結果について触れ、「当社では、この買収は競争を促進するものであり、顧客およびゲノム業界最善の利益に資するものだと考えています。」とコメントしました。当合併の完了期限は2020年3月31日となっています。

CMAが挙げた主な懸念点には、ショートリードとロングリードの解析装置は互いに代替可能であるため、買収によって競争が阻害されると同庁が考えている点があります。さらに、価格面で見ると、Pacific Biosciencesの解析装置「Sequel II」はIlluminaのミッドスループット製品群と競合します。その証拠として、CMAはIlluminaからPacific Biosciencesの製品に「乗り換えた」顧客の例を示しました。 

ARKでは、CMAの調査結果の多くは狭義では正しいものの、より広い意味では誤解を与えるものだったと考えています。ショートリードとロングリードの機器は対象とする市場が異なっているため、互いに代替することはできません。ショートリードの解析装置はより多くのデータを生成して微細な変異をより確実に特定する一方、ロングリードの解析装置はサイズの大きな構造多型をより正確に検出します。Pacific BiosciencesのSequel IIはコスト面で見ればIlluminaのミッドスループットの装置と類似していますが、バリアント(個人間でのゲノム配列の違い)の検出、ベース当たりのコスト、データのスループット(処理能力)といった面では異なります。

 

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