By ARK Invest

本レポートは、2022613ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#320」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. NetflixRokuの買収に乗り出すのか?

先週水曜日、Business Insiderは、Roku社が従業員による自社株取引を「突然」停止したと報じました。同じ内部筋の情報によると、多くの社員がこの停止はNetflix社が同社の買収を検討していることによるものだと推測しているようです。もしこの噂が本当なら、Roku社は買収を受け入れるべきでしょうか?

このような取引では、NetflixRokuよりもはるかに多くの利益を得ることになると私たちは考えます。既出のニュースレターで述べたように、Netflixは第1四半期が期待外れに終わったため、収益とユーザー数の増加を促進するために広告を検討しています。コネクテッドTV(インターネット回線に接続されたテレビ端末)の分野で強固な広告ビジネスを持つRokuは、Netflixの野望を一気に実現させることができるでしょう。さらに、Netflixは、Rokuを理想的な参入先として、テレビ分野での幅広い活躍を視野に入れているのかもしれません。

6,130万人のアクティブアカウントを持つRoku社は、米国、カナダ、メキシコでストリーミングされた時間で測定した場合、ナンバーワンのTVオペレーティングシステムを運営しています。世界中の消費者、コンテンツプロバイダー、広告主をつなぐ仲介者として、同社はテレビのエコシステムをデジタルレールで再構築しているところです。そして、急成長するデジタルエンターテイメント分野で新時代のゲートキーパーとなり、放送局やケーブル会社の必要性に取って代わる存在になりつつあります。

最大手とはいえ、Netflixは、Amazonの「無料」サービスと競合する多くの定額制ビデオ・オン・デマンド・サービスの1つに過ぎません。そのため、Roku社は、Netflix社が同社に提供するよりも、はるかに多くの価値をNetflix社に提供することになります。Roku社はオファーを断り、代わりに別の、おそらくより生産的な方法でNetflix社との広告パートナーシップを結んだ方がよい、というのが当社の見解です。

 

2. 暗号通貨レンディングプラットフォーム「Celsius」がトラブルに見舞われる

ほとんどの金融市場が「リスクオフ」に覆われている中、かつて資産が200億米ドルを超えた最初の集中型暗号通貨レンディングプラットフォームであるCelsius(セルシウス)は、大きな流出圧力の中でプラットフォーム上のすべての引き出しを停止しました。週次のYouTubeライブ配信で最後に報告された、プラットフォーム上の総額は、8月から6月の間に半減して106億米ドルになりました。4月下旬以降、そして5月上旬のTerraの破綻の余波で流出が加速し、Celsiusは今回の措置に踏み切らざるを得なかったとみられます。

この状況を理解するためには、Celsiusが預金者に支払う高い利回りをどのようにして生み出しているのかを理解する必要があります。Celsiusは、機関投資家向け融資、マイニング、ステーキング、および分散型金融(DeFi)での融資を通じて利回りを上げています。特に懸念されるのは、その DeFi展開、具体的にはether(イーサ)であり、そのうちの約41%はLidoのリキッドステーキングイーサリアム(stETH)に、約30%はイーサリアムのプルーフオブステイク(PoS)預金契約に直接預け入れられたものです。つまり顧客の引き出しを満たすための、完全に流動的なイーサが29%しか残りません。PoS預託契約は現時点では流動性がなく、引き出しは2023年初頭まで不可能と予想されています。stETH11で償還されますが、それまでの間は公開市場で交換する必要があり、Celsiusがトークンの引き出し要求を満たすには大きな摩擦が生じます。

ブロックチェーンの透明性により、stETHCelsiusのメインのDeFiウォレットからFTX関連のウォレットに移行している状況が見られます。おそらくCelsiusが顧客からの引き出し需要に対応して資金を提供するためにstETHを売却しているのだと考えられます。Celsiusや暗号通貨ファンドAlamedaのような他の市場参加者も売却をしているため、stETHはこの記事の執筆時点でETHに対して6%ディスカウントされて取引されています。統合(The Merge)後にイーサリアムが引き出し可能になるまでstETHを保有する意思を持つ合理的な長期投資家にとっては、裁定取引の機会が提供されていると考えられます。

問題をさらに深刻にしているのは、CelsiusETHstETH、ラップビットコイン(wBTC)を担保にステーブルコインを借り入れていることです。これらの債務ポジションは、負債残高に対して担保価格が下がりすぎた場合、清算の対象となり、担保を差し押さえられることになります。出金を一時停止することで、Celsiusは大きな損失を出すことなく、未払いの債務を返済し、リスクの高いポジションから離れる時間を稼ぎたいようです。

この措置は、市場のセンチメントに打撃を与え、特にDeFiのポジションが清算された場合、広範な暗号通貨価格をさらに下落させる可能性が高く、最終的にはBlockFiSECとの1億米ドルで和解した後、小売暗号融資領域への規制当局の監視をさらに招くことになると私たちは考えています。  

 

3. 自律型モビリティがあらゆるものの輸送コストを削減する

1934年にT型フォードが最初の組み立てラインから出荷されて以来、インフレ調整後の新車の所有・運転コストは、1マイルあたり0.70米ドルで、まったく変化していません。このコストは、19世紀の交通技術に根ざしたもので、人類は今日でもその技術に依存しています。私たちは、人工知能とバッテリー技術の融合により、人や物の移動を根本から変えるような、飛んだり転がったりする車両など、これまでにない自律型電動輸送機の可能性が生まれたと考えています。

先週Bentonville(ベントンビル:米国アーカンソー州)で開催されたUP Summitで、ARKTasha KeeneySam KorusCathie Woodは、Tashaが新しい白書のために何年もかけて調査してきた自律型モビリティを実現する多くの企業と面会しました。この白書では、大きな変化に直面している人間輸送と貨物輸送を含む自律型モビリティの経済性を検証しています。

 

4. Apple Payは「BNPL」(後払い決済)を商品ではなく、機能として統合

先週、Apple社は新しいOSであるiOS 16発表し、Apple Payで購入した商品の支払いを数週間に分割して支払う機能を提供する「BNPL: buy now pay later」(後払い決済)という機能を搭載しました。昨年も述べたように、BNPLは消費者がApple Payのような確立された決済手段を通じて選択できる機能になり、現在利用できる限定的で独立したBNPL製品の提供の必要性がなくなると考えていますApple社のBNPLは、以下に示すように、サードパーティーのBNPL専門プロバイダーを介さずに、タップするだけで「後払い」を可能にするものです。ShopifyShop Payも、消費者が即時支払いと後払いから選択できるようにしています。Block社は1月にBNPL企業のAfterpayを買収し、その機能をCash Appに統合するだけでなく、様々な規制下での国際展開を加速しています。

消費者がBNPLの決済方法を理解し、利用するようになると、Apple PayShop PayCash Appなどのデジタルウォレットによって、KlarnaAffirmなどの独立したBNPLプロバイダーの価値提案は相対的に限られていることが露呈するでしょう。「ポケットの中の銀行支店」フルサービス版へと進化し、米国のどのマネーセンターバンクよりも大きなユーザーベースを持つ彼らは、BNPLの機能を簡単に統合し、消費者を喜ばせ続けることができるはずだと私たちは確信しています。

 

5. ブロックチェーンベースのゲームに進出するNexon社の本気の計画

今週開催された年次Nexon Developers Conferenceの最初の基調講演で、COOのカン・デヒョン氏は、同社の最も有名なタイトルであり、2009年のピーク時には世界中で9,200万人を超えるユーザーが参加した大規模マルチプレイヤー参加型のオンライン・ロールプレイングゲーム(MMORPG)であるMapleStoryの世界で、ブロックチェーンベースの各種ゲーム開発を計画していると発表しました。

カン氏は、プレイヤーがネイティブトークンを獲得し、複数のオファリング間でNFTを取引できるエコシステム「MapleStory Universe」を最終的にリリースすることを発表しました。

  • ブロックチェーンを活用した初代MapleStoryPC/モバイル両インターフェース版「MapleStory N
  • 開発者がMapleStory Nと互換性のあるゲームを作ることができるようにするサンドボックス(仮想環境)型ゲーム「MOD N
  • MapleStoryトークンおよびNFTと互換性のあるアプリケーションを構築できるようになる「MapleStory N SDK

カン氏の発表は、有名なWeb2.0ゲーム開発者およびパブリッシャーによる、現存する成功した知的財産(IP)でブロックチェーンベースのゲームを立ち上げる最初の具体的な計画であると考えられます。もし成功すれば、Nexon社は他のゲーム開発者たちが彼らに追随するよう促し、より多くのファンベースを持つビデオゲームIPを活性化し、Web3ゲームの普及を加速させることができます。MapleStory NMOD Nの組み合わせは、内製のゲームとサンドボックス環境を組み合わせることでゲーム体験を向上させる可能性があり、MapleStoryをベースとしたユーザー生成コンテンツ(UGC)を持つRobloxのようなプラットフォームへと発展する可能性があるのです。

カン氏は、トークンの販売と拙速な利益を優先した過去のP2EPlay-to-earn)ゲームの反復に警鐘をならし、Nexon社のブロックチェーンベースのゲームに関する研究開発には時間がかかると述べました。現金ベースの市場アプローチを避け、ユーザーがNFTのような資産を所有できるようにし、ゲームプレイや二次取引による売買のための自由市場を確立する必要性があることを強調したのです。カン氏は最後に、Nexon社のゲームを可能な限りパブリックブロックチェーンに統合することを約束し、同社以外の外部のNFTとの将来的な互換性を示唆しました。現在のところ、相互運用の可能性は低いように思えますが、Nexon社のブロックチェーンベースのゲームのパイプラインを待ちつつ、オンチェーン体験に対するカン氏のコミットメントに拍手を送りたいと思います。

 

 

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